ロシアは、旧きゅうソビエト時代じだいからさまざまな病原びょうげん体たいを、兵器へいきとして利用りようするための研究けんきゅうを続つづけてきたとみられています。

ロシアは、中央アジアちゅうおうあじあのカザフスタンに「炭疽たんそ菌きん」の生産せいさん施設しせつを保有ほゆうしていたとみられるほか、ロシア国内こくないでは「天然痘てんねんとうウイルス」の生産せいさん・貯蔵ちょぞうも行おこなっていたと考かんがえられています。

このほか、旧きゅうソビエト時代じだいから、「エボラウイルス」や「ペスト菌きん」などについても、兵器へいきとして利用りようするための研究けんきゅうが行おこなわれていたと考かんがえられています。

ロシアは、旧きゅうソビエト時代じだいから「サリンガス」、「VXガス」、「ノビチョク」と呼よばれる化学かがく兵器へいきを開発かいはつしてきたとされています。

いずれも、神経しんけい伝達でんたつを妨さまたげ、呼吸こきゅう障害しょうがいを引き起ひきおこす猛毒もうどくの「神経しんけい剤ざい」です。

その後そのご、1975年ねん、生物せいぶつ兵器へいきの開発かいはつ、生産せいさん、保有ほゆうなどを禁止きんしする「生物せいぶつ兵器へいき禁止きんし条約じょうやく」、1997年ねんには、同様どうようのことを禁きんじた「化学かがく兵器へいき禁止きんし条約じょうやく」がそれぞれ発効はっこう。

ロシアも、これらの国際こくさい条約じょうやくの締結ていけつ国こくです。

そして、ミルザヤノフ氏しは、次つぎのように続つづけました。

「ロシアが廃棄はいきしたのは、使用しようできなくなった化学かがく兵器へいきで、『ノビチョク』などの『新しん世代せだい』と呼よばれる兵器へいきは保有ほゆうしている。私わたしの試算しさんでは、およそ3000トンが保管ほかんされているとみられ、数すう百ひゃく万まん人にんを殺害さつがいできる量りょうだ」

プーチン大統領だいとうりょうは、3月つき16日にち、次つぎのように述のべています。

「ウクライナの研究所けんきゅうじょでアメリカの支援しえんにより、コロナウイルス、炭疽たんそ菌きん、コレラなどの実験じっけんが行おこなわれている。生物せいぶつ兵器へいきが作つくられたと信しんじる理由りゆうが十分じゅうぶんにある」

また、ロシア軍ぐんの「国家こっか防衛ぼうえい管理かんりセンター」のミジンツェフ・センター長ちょうは、3月つき19日にち、次つぎのように述のべました。

「ウクライナ軍ぐんは南部なんぶのミコライウ州しゅうで有毒ゆうどくな化学かがく物質ぶっしつを使つかった挑発ちょうはつ行為こういを計画けいかくしている」

ウェバー氏しは、アメリカがウクライナに行いった支援しえんについては「公衆こうしゅう衛生えいせいや疾病しっぺい対策たいさくの強化きょうか」だとしたうえで、「生物せいぶつ・化学かがく兵器へいきの使用しように軍事ぐんじ的てきなメリットはない」とも指摘してきしました。

「ロシア軍ぐんが大おおきな犠牲ぎせいを出だす中なか、ウクライナの市民しみんなど『ソフトターゲット』がねらわれるようになっている。人々ひとびとの間まに恐怖きょうふを巻き起まきおこして、士気しきを低下ていかさせ、降伏ごうぶくを強要きょうようする目的もくてきで使つかわれるおそれがある」

前ぜん出しゅつの化学かがく者しゃミルザヤノフ氏しは、化学かがく兵器へいき「ノビチョク」が使用しようされる可能かのう性せいは「十分じゅうぶんにある」と分析ぶんせきしています。

「『ノビチョク』は個人こじんの暗殺あんさつだけでなく、戦場せんじょうで大勢たいせいの人々ひとびとを攻撃こうげきする兵器へいきとして使用しようすることも想定そうていされている」

また、ローラー准じゅん教授きょうじゅは、戦闘せんとう員いんや非ひ戦闘せんとう員いんの被害ひがいはもちろんのこと、ウクライナだけでなく、周辺しゅうへんの国くににも影響えいきょうが及およぶおそれがあることから、診断しんだんキット、解毒げどく剤ざい、抗菌こうきん剤ざい、治療ちりょう薬やくなどの準備じゅんびを整ととのえる必要ひつようがあると訴うったえています。

そのうえで、ロシアが生物せいぶつ兵器へいきを使用しようする場合ばあい、伝染でんせん性せいの高たかい病原びょうげん体たいを使つかえば、国境こっきょうを越こえて自じ国民こくみんに悪わるい影響えいきょうを及およぼす可能かのう性せいがあることを踏ふまえ、「ヒトからヒトに感染かんせんしない炭疽たんそ菌きんを使用しようすることが考かんがえられる」と分析ぶんせきしています。

具体ぐたい的てきには、以下いかの2つの事件じけんです。

▽2018年ねん3月つき イギリスで、ロシアの元もとスパイのスクリパル氏しとその娘むすめがねらわれた暗殺あんさつ未遂みすい事件じけん

▽2020年ねん8月つき ロシアで反はん体制たいせい派はの指導しどう者しゃナワリヌイ氏しが襲おそわれ一時いちじ意識いしき不明ふめいに陥おちいった暗殺あんさつ未遂みすい事件じけん

また、OPCW＝化学かがく兵器へいき禁止きんし機関きかんは、シリア中部ちゅうぶのハマ県けんで2017年ねん3月つき、アサド政権せいけん軍ぐんが反はん政府せいふ勢力せいりょくの支配しはいしていた町まちに対にたいし空爆くうばくを行おこない、サリンガスなどの化学かがく兵器へいきが使つかわれたと結論けつろんづけています。

これについてアメリカ国務省こくむしょうは「アサド政権せいけんに対にたいするロシアの支援しえんが、化学かがく兵器へいきの継続けいぞく的てきな使用しようを可能かのうにした疑うたがいがある」として、ロシアの関与かんよを指摘してきしています。

ただ、軍事ぐんじ的てきな対抗たいこう措置そちにまで踏み切ふみきるかどうかはわかりません。

バイデン大統領だいとうりょうは、3月つき24日にち、化学かがく兵器へいきが使用しようされた場合ばあいについて「相応そうおうの対応たいおうをとる」と述のべる一方いっぽうで、軍事ぐんじ行動こうどうによる対抗たいこう措置そちの可能かのう性せいについては「その時ときに判断はんだんする」と述のべるにとどめています。

軍事ぐんじ行動こうどうについて、バイデン大統領だいとうりょうは、核かくを用もちいた第だい3次じ世界せかい大戦たいせんにつながりかねないとして一貫いっかんして否定ひていしてきましたが、NATOによる軍事ぐんじ行動こうどうも排除はいじょしない姿勢しせいを示しめしたのは、プーチン大統領だいとうりょうに、なんとか生物せいぶつ・化学かがく兵器へいきの使用しようを思おもいとどまらせるねらいがあったとみられています。

しかし、ミルザヤノフ氏しは「ロシアがこうした声こえに耳みみを傾かたむけるとは思おもえない」として悲観ひかん的てきな見方みかたを示しめしています。

アメリカなどNATOは、ロシアとの全面ぜんめん的てきな軍事ぐんじ衝突しょうとつを回避かいひしながら、これ以上いじょうのウクライナの人ひとたちの犠牲ぎせいをいかに食い止くいとめることができるのか、難むずかしい対応たいおうを迫せまられることになります。