一方で、「ロシア軍は現在、合意を破り、製鉄所に大量の空爆を続け、全面攻撃を行っている。市民の救出が成功したことでロシア軍は神経質になっているが、他の人々を救出するチャンスはまだあると信じている」と述べ、市民や兵士の避難を急ぐ考えを重ねて示しました。
このうち、工業都市のアウディーイウカでは、ヨーロッパ最大級の規模とされるコークス工場が攻撃を受け、少なくとも10人が死亡し、15人がけがをしたとしています。
ウクライナ情勢をめぐって日本政府はUNHCR=国連難民高等弁務官事務所の要請を受け、航空自衛隊の輸送機で救援物資を運ぶことを決めていました。政府関係者によりますと、輸送機が運んだ救援物資は空港内の倉庫に保管され、その後、各地へ運ばれるということです。
地域別でみると、 ▼東部のドネツク州とルハンシク州で1663人、 ▼キーウ州や東部のハルキウ州、北部のチェルニヒウ州、南部のヘルソン州などで1530人の死亡が確認されているということです。 また、けがをした市民は3353人にのぼるとしています。 一方、国連人権高等弁務官事務所は、東部のマリウポリなど激しい攻撃を受けている地域での死傷者の数については、集計が遅れていたり、確認がまだ取れていなかったりして、統計には含まれておらず実際の死傷者の数はこれを大きく上回るとの見方を示しています。
主な避難先は、 ▼ポーランドがおよそ307万人、 ▼ルーマニアがおよそ83万人、 ▼ハンガリーがおよそ53万人、 ▼モルドバがおよそ44万人などとなっています。 また、先月30日の時点で、 ▼ロシアに避難した人はおよそ68万人となっています。
製鉄所の中にはおよそ2か月にわたって避難していたために歩くことも難しい高齢者がいたほか、当初想定されていたのとは違うルートでの避難を余儀なくされ、避難は困難を極めたということです。 また、30人ほどが外に出たあとの身の危険を感じ、避難せずに製鉄所の中にとどまることを選んだとしています。 一方で、「製鉄所はとても広く人々は別々の場所にいたため、何人が残されているのかはわからない」としたうえで、今後について「避難を支援する準備はできている。今回の避難をきっかけに、残された人たちの次の避難につなげたい」と述べ、再びマリウポリを訪れ市民の避難に取り組む考えを示しました。
バスから降りる人たちの中には、荷物を抱えた親子連れが多く見られ、安どの表情を浮かべ、笑顔で手をふる人の姿もありました。 女性の1人は「ここまでの道のりはとても困難でした。大きく回り道をして、製鉄所を出発してからおよそ3日かかりました」と話しました。 そのうえで「人生をゼロからスタートすると言う人がいますが、私はそうしたくありません。できるなら以前の状態に戻りたいですが、それが不可能なことはわかっています。家族とともに新しい人生を歩まなければなりません」と述べ、生活が一変することへの憤りをあらわにしていました。 また、別の女性は「毎晩、眠るときに再び目を覚ますことができるのかと考えていました。攻撃で大きく揺れる建物の地下のシェルターにいる恐ろしさはことばでは言い表せません」と、製鉄所の地下での体験を語りました。
フランス大統領府によりますと、会談は2時間余りにわたり、マクロン大統領は、 東部マリウポリなどの状況に懸念を示し、ロシア軍が包囲する製鉄所から引き続き市民が避難できるよう、対応を求めたということです。 そのうえで、軍事侵攻を終わらせ、国連安全保障理事会の常任理事国としての責任を果たすよう、強く訴えたということです。 一方ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領は、ウクライナ東部ではウクライナ側による攻撃で市民が犠牲になっているにもかかわらず、EU=ヨーロッパ連合の各国がこれを無視していると、主張したということです。 そのうえで「西側諸国がウクライナへの武器供与を停止することで、残虐行為を阻止できる」と一方的に主張し、改めて欧米各国がウクライナへの武器の供与を止めるよう求めたとしています。
そして、「製鉄所の中には、まだ数百人の市民が残っている」と述べ、市民の避難を実現するよう、訴えました。
大統領令は、具体的な国名などは明らかにしていませんが、ロシアに対する経済制裁などを打ち出した欧米や日本などを念頭にした措置とみられます。 大統領令は、制裁対象となる企業や個人との新たな契約の締結に加え、これまでの契約義務の履行も禁止するとしていて、ロシア政府が10日以内に制裁対象のリストを作成するとしています。
そして「どれくらいの人が取り残されているのか、詳細はわからない。われわれは製鉄所のすべての建物に入ることができなかったため、推測することもできない」としたうえで「残された人たちを避難させる準備ができていることを、ロシアとウクライナの双方に伝えている」と述べ、引き続き市民の避難を支援する用意があると強調しました。
そして、ロシア軍の攻撃にあらゆる手段で応戦するとする一方、取り残された市民を避難させる行動を直ちにとるべきだと訴えました。
その中でジョンソン首相は、3億ポンド相当、日本円でおよそ490億円相当の追加の軍事支援を表明し、敵の大砲の位置を特定するためのレーダーや、物資を運ぶためのドローンなどが含まれると説明しました。 また、戦闘が続く地域から市民を避難させたり、公共部門の職員などを守ったりするための車両も提供すると明らかにしました。
ドネツク州知事 “ロシア軍の攻撃で市民21人死亡”
自衛隊の輸送機が到着 避難者支援の物資運ぶ
国連 少なくとも市民3193人が死亡
国外避難者は559万人余り(国連まとめ)
マリウポリから101人が避難 30人ほどはとどまる
マリウポリからの避難者「道のり困難だった」
仏ロ首脳が電話会談も平行線
ウクライナ副首相「製鉄所の中にはまだ数百人の市民」
プーチン大統領 「報復措置についての大統領令」に署名
マリウポリ攻撃 “取り残された人の数は不明”
マリウポリ アゾフ大隊 “ロシア軍の攻撃で女性2人が死亡”
英 ウクライナに490億円相当の追加軍事支援を表明
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる5月4日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
ゼレンスキー大統領「救出のチャンスまだある」