《参議院本会議で採決》
一般会計の総額がおよそ13兆9000億円となる今年度の補正予算案は17日の参議院予算委員会で締めくくりの質疑に続いて採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決されました。
これを受けて午後、参議院本会議が開かれ、討論で自民党の自見・前万博担当大臣は、賛成の立場から「現在、わが国は長い間続いてきたデフレ経済からの完全脱却を成し遂げることができるかどうかの正念場にある。新年度までのおよそ3か月の国民生活と経済活動を支え、来年4月以降へと、よい流れを作り出すため、補正予算案の成立と迅速な執行は欠かせない」と強調しました。
これに対し立憲民主党の奥村政佳氏は、反対の立場から「衆議院の審議で与党が立憲民主党の修正要求に応じ、新たな歴史の1ページが刻まれたが、補正予算は緊要な経費の支出に限定されるべきだ。今回の巨大な補正予算案には大きな疑問が残り、このままでは無計画な歳出拡大を助長しかねない」と訴えました。
採決が行われた結果、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決され、成立しました。
立憲民主党、共産党、れいわ新選組などは反対しました。
補正予算には電気・ガス料金の補助再開や住民税非課税世帯への給付金など物価高への対応に加え能登半島のインフラ復旧に必要な事業などが盛り込まれています。
衆議院の審議で、今年度当初予算の予備費から1000億円を能登半島の支援に充てる修正が立憲民主党の求めに応じる形で行われました。
衆参両院の事務局によりますと、政府の予算案が国会審議で修正され成立したのは第1次橋本内閣の平成8年度の当初予算以来、28年ぶりで、補正予算では初めてです。
成立した補正予算の内容は
成立した今年度の補正予算は一般会計の総額が13兆9433億円で昨年度の補正予算を上回ります。歳出の中心は経済対策で示した3つの柱です。
▽賃上げ環境の整備などを通じた「日本経済・地方経済の成長」には5兆7505億円を計上しました。
賃上げに向けた中小企業の設備投資やIT導入などの支援に3400億円、AI・半導体産業の強化に1兆3054億円、地方の産業の高付加価値化などにあてる「新しい地方経済・生活環境創生交付金」に1000億円などとなっています。
▽「物価高への対応」には3兆3897億円を盛り込みました。
住民税の非課税世帯を対象とした給付金の支給に4908億円、来年1月から再開する電気・ガス料金への補助に3194億円、ガソリンなどの価格を抑えるための補助事業に1兆324億円、などとなっています。
▽「国民の安心・安全の確保」には4兆7909億円をあてます。
能登地域の被災者の支援なども含めた自然災害からの復旧・復興に6677億円、公立学校の体育館の空調整備などに2076億円となどなっています。
一方、財源には今年度の税収で上振れが見込まれる3兆8270億円のほか、昨年度の剰余金1兆5595億円などを活用しますが、全体の半分近くにあたる6兆6900億円は国債の追加発行で賄うことにしています。
今回の補正予算は国会の審議で総則の修正が行われ、今年度当初予算の予備費から1000億円を能登半島の復旧・復興のために充てるという趣旨の文言が盛り込まれました。
《参議院予算委員会「内外の諸課題」テーマに集中審議》
また参議院予算委員会では、今年度の補正予算案の採決を前に、17日午前、石破総理大臣らが出席して「内外の諸課題」をテーマに集中審議が行われました。
公明 平木氏「石破総理の思い描く『防災立国』姿とは」
公明党の平木大作氏は防災対策について「能登半島地震の発生からまもなく1年がたとうとしている。また、いつ大きな災害が起こるかわからない中、石破総理の思い描く『防災立国』の姿について答弁して欲しい」と求めました。
石破首相「一番つらい思いをした人たちに一番温かい手を」
これに対し、石破総理大臣は「私も正月にできれば、また能登に行きたい。あたり前の話で一番つらい思いをした人たちに、一番温かい手を差し伸べなくて何が国家だと思っている。災害を防ぐことはできないが『災害が起こったあとに起こることは全て人災だ』ということばを胸に刻んで、最大限努力したい」と述べました。
維新 柳ヶ瀬氏「企業・団体献金の禁止について総理の決意を」
日本維新の会の柳ヶ瀬裕文氏は企業・団体献金について「政治献金と政策は関係ないと言い続けてきたが、温存されているということは何らかの関係があると疑われるのは当然だ。しっかりときれいにしていかなければならない。企業・団体献金の禁止について、総理の決意を聞きたい」と迫りました。
石破首相「私たちは禁止よりも公開だと思っている」
これに対し石破総理大臣は「3月末までに与党と野党で真摯な話し合いが行われるが、私たちは禁止よりも公開だと思っている。禁止と言う人たちと、本当に何が民主主義のためなのかという議論を期待するし、参画していく」と述べました。
国民 伊藤氏「『内密出産』の立法化について所見を」
国民民主党の伊藤孝恵氏は妊婦が医療機関以外に身元を明かさずに出産する「内密出産」について「2022年にガイドラインは発出されたが、運用では解決できず、法律でしか乗り越えられないことが明らかになっている。政治の不作為を放置しないでほしい。『内密出産』の立法化について所見を聞きたい」とただしました。
石破首相「赤ちゃんの権利を重んずる法体系 政府部内で検討」
これに対し石破総理大臣は「この世に生を受けてくる赤ちゃんの保護を誰がどう行うかという視点で物事は考えなければならない。よく研究して、赤ちゃんの権利や人権を最大限に重んずるような法体系ができないか政府部内で検討させたい」と述べました。
共産 倉林氏「病院経営が悪化 病床廃止を条件とせず直接支援を」
共産党の倉林明子氏は地域医療をめぐり「全国の病院では経営が急速に悪化し、必要な医療提供体制が確保できない事態になりかねない。今回の補正予算案では病床を減らせば支援金を出すとしているが、もってのほかだ。病床の廃止を条件とせずに直接支援を行うべきだ」と求めました。
石破首相「医療の地域公共財の役割も認識し 考えていく」
これに対し石破総理大臣は「地域で病院が非常に厳しい状況にあるのは承知している。厳しい財政下で、病床数をある程度減らしていかないと医療費はもたないが、医療の地域公共財としての役割も認識しながら、今後もきちんと行き渡るよう考えていく」と述べました。
れいわ 天畠氏「郵便投票の大幅な対象拡大に取り組むべきでは」
れいわ新選組の天畠大輔氏は「選挙で投票所に行けず、郵便投票もできずに参政権を奪われている障害者の存在を知っているか。極めて重要な分野での社会的障壁をなくすため、政府も国会も郵便投票の大幅な対象拡大に取り組むべきではないか」とただしました。
石破首相「投票方法をどうするか 各党・各会派で議論を」
これに対し石破総理大臣は「選挙権は憲法に基づく国民の重要な権利であり、誰でも的確に行使できる環境を整えていかなければならない。公正性を確保する観点も踏まえ、投票方法をどうするか、各党・各会派で議論いただきたい。議員立法で対象者が拡大された場合には環境整備に努めていきたい」と述べました。
石破首相 そのほかの主な答弁
一方、石破総理大臣は、自民党東京都連が政治資金パーティー券収入の一部を収支報告書に記載していなかったことについて、都議会自民党でも実態調査を進めていると説明し、必要に応じ、厳正な対応がなされるという認識を示しました。
立民 野田代表「28年ぶり予算案修正 野党連携の力を証明」
立憲民主党の野田代表は党の会合で「28年ぶりに予算案を修正できたのは、野党が固まると力を発揮することを証明した。『一強多弱』のイメージがまだ残っていて、自民党とどう協議するかばかりを考えていたが、『多弱』が固まっていけば必ず結果を出せる。通常国会に向けていい手がかりをつかむことができた」と述べました。