昔、ある所に、働き者のお爺さんと強欲で怠け者のお婆さんが住んでいました。
ある日、いつものようにお爺さんが山で柴を刈っていると、ほら穴から「柴よこせー、柴よこせー」と声が聞こえてきました。お爺さんが穴に近づくと、持っていた柴がスッと吸い込まれていきました。穴から「もっとよこせ」と声が聞こえるので、人の良いお爺さんは言われるがまま沢山の柴を運びました。そのうち、お爺さんまで穴に吸い込まれました。
穴の中の世界は真っ赤な火の世界で、火の神様から「柴のお礼に」と宝物の入った包みをくれました。家に帰って包みを開けてみると、おかしな顔をした変な男の子が入っていました。お婆さんはプンプン怒りましたが、お爺さんは「火男」と名付けて大切に育てました。
この男の子は、口も聞かずヘソばっかりイジっていたので、とうとうヘソが腫れ上がってしまいました。可哀そうにと思ったお爺さんがキセルでポンと叩いてみると、なんとヘソから一枚の小判がでてきました。小判が出るたびに少しだけヘソは小さくなるので、お爺さんは毎日3回だけヘソを叩きました。
欲張りのお婆さんはお爺さんが不在な時を見計らい、ヘソから千両箱が出そうと巨大キセルで火男を追いかけまわしました。かまどに追い詰められた火男は、火になって火の神様のところへ帰っていきました。それを知って悲しんだお爺さんは、火男のお面を彫ってかまど近くの柱にかけました。
今も、かまどの近くに火男のお面をかけるしきたりはこの地方に残っています。やがては「ひょっとこ」と言い変わって、お祭りなどでも使われるひょっとこの面になったそうです。