中なかでも多おおかったのが建材けんざいとして使つかわれたケースで、1950年代ねんだいから使用しようが広ひろがり、高度こうど経済けいざい成長せいちょう期きのビルの高層こうそう化かや鉄骨てっこつ化かに伴ともなって、多おおく使つかわれるようになりました。

独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん「環境かんきょう再生さいせい保全ほぜん機構きこう」によりますと、1970年代ねんだいから90年代ねんだいにかけては、年間ねんかんおよそ30万まんトンという大量たいりょうのアスベストが輸入ゆにゅうされ、使用しようのピークを迎むかえていました。

一方いっぽう、アスベストは非常ひじょうに細ほそい繊維せんいからなっているため、それを吸い込すいこんでしまうと肺はいの細胞さいぼうに沈着ちんちゃくしやすく、変化へんかしにくい特性とくせいゆえに細胞さいぼうの中なかに長ながくとどまることになり、肺はいがんや中ちゅう皮かわ腫しゅなどの病気びょうきを引き起ひきおこすことがあります。

アスベストを吸い込すいこんでから発症はっしょうするまでの潜伏せんぷく期間きかんは10年ねん以上いじょうで、長ながい場合ばあいは50年ねんというケースもあることから、アスベストの健康けんこう被害ひがいは「静しずかな時限じげん爆弾ばくだん」と呼よばれるようになりました。

アスベストをめぐっては、1975年ねんに吹ふきつけ作業さぎょうの原則げんそく禁止きんしやメーカーや事業じぎょう者しゃにアスベスト建材けんざいへの警告けいこく表示ひょうじの義務ぎむづけ、1995年ねんに事業じぎょう者しゃに防ぼうじんマスクの着用ちゃくようを義務ぎむづけるなど、徐々じょじょに規制きせいが強化きょうかされ、2006年ねんにアスベストの製造せいぞうや使用しようなどが全面ぜんめん的てきに禁止きんしされました。

ただ、アスベストが大量たいりょうに使用しようされていた時代じだいに建設けんせつ現場げんばで働はたらいていた人ひとたちの中なかで病気びょうきを発症はっしょうする人ひとが増ふえていて、今いまでも毎年まいとし、500人にんから600人にんが新あらたに労災ろうさいと認みとめられています。

さらに、当時とうじ建設けんせつされた建物たてものの老朽ろうきゅう化かが進すすんでいることから、これからアスベストが使つかわれた建物たてものの解体かいたいが増ふえて、被害ひがい者しゃはさらに増加ぞうかするとみられています。

一方いっぽう、アスベストを扱あつかう工場こうじょうにおける、いわゆる「工場こうじょうアスベスト」の被害ひがいをめぐっては、2005年ねんに兵庫ひょうご県けんの大手おおて機械きかいメーカー「クボタ」の工場こうじょう周辺しゅうへんの住民じゅうみんなどのアスベストによる深刻しんこくな健康けんこう被害ひがいが相次あいついでいることが明あきらかになりました。

これを踏ふまえて、2006年ねん、被害ひがいを救済きゅうさいするための法律ほうりつ「アスベスト健康けんこう被害ひがい救済きゅうさい法ほう」が施行しこうされました。

また、アスベストを扱あつかう工場こうじょうで働はたらき、健康けんこう被害ひがいを受うけた人ひとたちが、国くにを訴うったえた裁判さいばんでは、最高さいこう裁判所さいばんしょが2014年ねんに排気はいき装置そうちの設置せっちを義務ぎむづける国くにの規制きせいが遅おそかったと判断はんだんして賠償ばいしょうを命めいじる判決はんけつを言い渡いいわたし、この判断はんだんに基もとづいて、現在げんざいは和解わかい手続てつづきが進すすめられています。

相談そうだんを寄よせた人ひとの年齢ねんれいは、詳細しょうさいを聞き取ききとることのできた123人にんのうち116人にん率りつにして94％が60歳さい以上いじょうでした。

また、労働ろうどう者しゃとして働はたらいていて、アスベストの健康けんこう被害ひがいを受うけ、医療いりょう費ひや療養りょうよう費ひの補償ほしょうが受うけられる、労災ろうさいの認定にんていを受うけた人ひとは12人にん、工場こうじょう周辺しゅうへんの住民じゅうみんや一いち人にん親方おやかたなど、被害ひがい者しゃが労働ろうどう者しゃ以外いがいの場合ばあいに補償ほしょうが受うけられる、アスベスト健康けんこう被害ひがい救済きゅうさい法ほうの認定にんていを受うけた人ひとは1人にんでした。

弁護べんご団だんは相談そうだん内容ないようを把握はあくできた136人にんのうち、123人にん、率りつにしておよそ90％は労災ろうさいの申請しんせいなどをしていない新あらたな被害ひがい者しゃの可能かのう性せいがあるとしています。

相談そうだんを寄よせた80歳さいの男性だんせいは、一いち人にん親方おやかたとして建設けんせつ現場げんばで長年ながねん働はたらいてきて、10年ねんほど前まえから肺はいの病気びょうきを患わずらっていたものの、これまでは病気びょうきがアスベストによるものだという自覚じかくがなく、電話でんわ相談そうだんをきっかけに、救済きゅうさい法ほうの申請しんせいをすることを検討けんとうしています。

申請しんせいのサポートをしている労働ろうどう組合くみあいの「東京とうきょう土建どけん江戸えど川がわ支部しぶ」の藤井ふじい文理ぶんりさんは「発症はっしょうまでが20年ねんから30年ねんと長ながいので、病気びょうきを発症はっしょうしたとしても、それがアスベストによるものなのかどうか分わからないという方ほうが多おおくいると考かんがえています」と話はなしていました。

電話でんわ相談そうだんを実施じっしした、弁護べんご団だんの佃つくだ俊彦としひこ弁護士べんごしは「潜在せんざい的てきなアスベストの被害ひがい者しゃは、非常ひじょうに多おおくいるのではないかと懸念けねんしています。国くにや建材けんざいメーカーが、建設けんせつアスベストの被害ひがいにどのように向き合むきあって、どのような解決かいけつの方向ほうこうを打ち出うちだしていくのか、早はやく明確めいかくにするべきだ」と話はなしていました。

そのうえで「このほかの係争けいそう中ちゅうの原告げんこくとの早期そうき和解わかいや、未み提訴ていその被害ひがい者しゃなどに対にたいする補償ほしょうについて、与党よとうでも検討けんとういただいており、厚生こうせい労働ろうどう省しょうとしても、できるかぎり早期そうきの解決かいけつに向むけてしっかり対応たいおうしたい」としています。