“教師きょうしのバトン” 想定そうてい超こえる悲痛ひつうな声こえ

投稿とうこうしやすいよう校長こうちょうなどの許可きょかも必要ひつようないとしましたが、寄よせられた声こえは、長時間ちょうじかん労働ろうどうや部ぶ活動かつどうの負担ふたんを挙あげ「夢ゆめを叶かなえて教員きょういんになったけど10年ねんもたなかった」とか「とてもじゃないが若者わかものにバトンを渡わたせない」などと、当初とうしょの想定そうていを超こえて窮状きゅうじょうを訴うったえる内容ないようが相次あいつぎ、文部もんぶ科学かがく省しょうは8日にちに改あらためてメディア向むけの説明せつめい会かいを開ひらきました。

プロジェクトを統括とうかつする義よし本もと博司ひろし総合そうごう教育きょういく政策せいさく局長きょくちょうは「国くにとしても現場げんばから直接ちょくせつ声ごえを受け止うけとめる初はじめての試こころみで、厳きびしい勤務きんむ実態じったいを訴うったえる投稿とうこうが多おおく寄よせられた。社会しゃかいから注目ちゅうもくを集あつめたことを前向まえむきに捉とらえつつ、教師きょうしの声こえを集積しゅうせきする役割やくわりを果はたしていると思おもうので、この声こえを推進すいしん力りょくに、迅速じんそくに具体ぐたい的てきに勤務きんむ環境かんきょうの改善かいぜんを進すすめたい」と話はなしました。

文部もんぶ科学かがく省しょうは、各地かくちで取り組とりくめる働はたらき方かた改革かいかくの事例じれいの発信はっしんや、教員きょういん不足ふそくの実態じったいを調査ちょうさするなどして、引き続ひきつづき働はたらき方かた改革かいかくを進すすめるとしています。

このうちツイッターには現職げんしょくの教員きょういんとみられる人ひとから、長時間ちょうじかん労働ろうどうや休憩きゅうけいがとれない忙いそがしさ、部ぶ活動かつどうの負担ふたんなど厳きびしい現状げんじょうを伝つたえる声こえが多おおく見みられ「今いまの悲惨ひさんな労働ろうどう環境かんきょうのまま、次つぎの世代せだいにつなげていいと本当ほんとうにお思おもいですか？」とか「とてもじゃないが、若者わかものにバトン渡わたせない」などと、プロジェクトが呼よびかけた発信はっしんとは逆ぎゃくの思おもいを訴うったえる投稿とうこうが多おおく見みられました。

また「これらをしたらバトンが渡わたると思おもいますよ」としたうえで、部ぶ活動かつどうの外部がいぶ委託いたくや、残業ざんぎょう代だいの支払しはらい、教員きょういんの増員ぞういん、エアコンやトイレ掃除そうじを業者ぎょうしゃに委託いたくするなど、それぞれが考かんがえる具体ぐたい的てきな改善かいぜん策さくをあげる書き込かきこみもありました。

一方いっぽう、教員きょういんを退職たいしょくしたという人ひとからは「子こどもの頃ころからの夢ゆめを叶かなえて教員きょういんになったけど、10年ねんもたなかった。だけど辞やめたことを1ミリも後悔こうかいしてない」としたうえで「どうか、現場げんばで頑張がんばり続つづけておられる教員きょういんの方々かたがたを取り巻とりまく状況じょうきょうが改善かいぜんされますように。きちんと休やすめますように。普通ふつうに食事しょくじを摂とれますように。家族かぞくや恋人こいびと、友人ゆうじんと過すごせますように」と願ねがう書き込かきこみもありました。

女性じょせいに取材しゅざいしたところ、大学だいがく卒業そつぎょうと同時どうじに首都しゅと圏けんの中学校ちゅうがっこうの教員きょういんになり、担任たんにんとしてクラスも受け持うけもちましたが、この春はる、退職たいしょくしたということです。

女性じょせいは、文部もんぶ科学かがく省しょうが企画きかくした「＃教師きょうしのバトン」のハッシュタグを目めにして、国くにや世間せけんの人ひとたちに教員きょういんの置おかれた状況じょうきょうを知しってもらいたいと考かんがえたといいます。

現状げんじょうについて「学習がくしゅう指導しどう要領ようりょうの大おおきな改訂かいていなどもあり、上うえから降おりてくる変化へんかもある一方いっぽうで、働はたらき方かた改革かいかくが進すすんでいないと感かんじていました」と話はなしています。

女性じょせいは、月つきの残業ざんぎょう時間じかんが100時間じかんを超こえることが頻繁ひんぱんにあったほか、連続れんぞくして100日間にちかん勤務きんむしたこともあったと話はなし「部ぶ活動かつどうの朝あさ練習れんしゅうで午前ごぜん7時じに出勤しゅっきんし、授業じゅぎょうを終おえたあとも、夕方ゆうがたの部ぶ活動かつどうが終おわる午後ごご6時じまではテストの採点さいてんや保護ほご者しゃ対応たいおう、それに翌日よくじつの授業じゅぎょう準備じゅんびなどができず、どうしても超過ちょうか勤務きんむをせざるをえませんでした。土日どにちも部ぶ活動かつどうや大会たいかいで出勤しゅっきんし、残業ざんぎょうしないと授業じゅぎょうが回まわらない状況じょうきょうでした」と、長時間ちょうじかん勤務きんむの実態じったいを明あかしました。

さらに、この1年ねんは新型しんがたコロナウイルスの対応たいおうに追おわれ、消毒しょうどく作業さぎょうが増ふえたり、子こどもたちの活躍かつやくを動画どうがで残のこすための編集へんしゅう作業さぎょうが必要ひつようになったりしたほか、感染かんせん不安ふあんで自主じしゅ休校きゅうこうした生徒せいとへの個別こべつ対応たいおうも求もとめられ、精神せいしん的てきに追い込おいこまれ、1か月かげつ休職きゅうしょくしたといいます。

そのうえで「子こどもたちは、しっかり向き合むきあえば応こたえてくれ、すごくやりがいと達成たっせい感かんはあったのですが、結局けっきょく一いち人にん一いち人にんが無理むりをして、ギリギリのところで学校がっこうが成り立なりたっているのが現状げんじょうなので、本当ほんとうに改革かいかく、改善かいぜんを進すすめてほしい」と訴うったえていました。

投稿とうこうしたのは、九州きゅうしゅう地方ちほうの公立こうりつ小学校しょうがっこうで働はたらく20代だいの女性じょせい教員きょういんで、激務げきむが続つづいたことから去年きょねん、体調たいちょうを崩くずし休職きゅうしょくしています。

勤務きんむは、朝あさ7時半じはんすぎには学校がっこうに来きて、連絡れんらく帳ちょうや宿題しゅくだいのチェックをすることから始はじまり、子こどもたちが下校げこうする午後ごご4時じまで休憩きゅうけいもできず、その後そのご、職員しょくいん会議かいぎや保護ほご者しゃへの連絡れんらく、掲示けいじ物ぶつの貼はり替がえなどをこなし、午後ごご7時じをすぎないと帰宅きたくできませんでした。

女性じょせいは、大事だいじな授業じゅぎょうの準備じゅんびがいちばん最後さいごになってしまったことがつらかったと話はなし、帰宅きたく後ごの寝ねる前まえや、週末しゅうまつに1週間しゅうかん分ぶんの準備じゅんびをしていましたが「授業じゅぎょうがしたくて教員きょういんになったのに、それが十分じゅうぶんできないことが子こどもたちに申し訳もうしわけない」と話はなしていました。

女性じょせいは、この生活せいかつを4年ねんほど続つづけていましたが、去年きょねん、夜よる眠ねむれず、涙なみだがとまらないという症状しょうじょうのほか、死しにたいと思おもうようになり、診察しんさつを受うけたところ適応てきおう障害しょうがいと診断しんだんされ休職きゅうしょくしています。

女性じょせいは「＃教師きょうしのバトン」について「文部もんぶ科学かがく省しょうに直接ちょくせつ声ごえを届とどけけらられる場ばを提供ていきょうしたもらった」と話はなし、教員きょういんになりたいという教え子おしえごのために「このままの労働ろうどう環境かんきょうを次世代じせだいに受け継うけつぐ方ほうがハイリスクです。おかしい働はたらき方かたを変かえるのが、今いまの若わかい教員きょういんの使命しめいだと考かんがえます。国くににいま伝つたえます」と投稿とうこうし、国くにに改善かいぜんを求もとめています。

文部もんぶ科学かがく省しょうが2016年ねんに行いった、教員きょういんの働はたらき方かたに関にかんする調査ちょうさでは、1週間しゅうかんの時間じかん外がい労働ろうどうが20時間じかんを超こえた教員きょういんは、

▽小学校しょうがっこうでは3割わり余あまり、

▽中学校ちゅうがっこうでは6割わりに上のぼったほか、

▽小中こなか学校がっこうともに管理かんり職しょくの副ふく校長こうちょうや教頭きょうとうも6割わりほどとなりました。

このまま1か月かげつ働はたらき続つづけると、ひと月ひとつきの時間じかん外がい労働ろうどう時間じかんが「過労かろう死しライン」とされる80時間じかんを超こえるおそれがあると試算しさんされています。

一方いっぽうで、新あらたな業務ぎょうむは増加ぞうかしていて、小学校しょうがっこうで英語えいごが教科きょうかとなりプログラミングも必修ひっしゅう化かされたほか、小中こなか学校がっこうに1人にん1台だいの端末たんまつが配備はいびされ、その活用かつようも求もとめられています。

新型しんがたコロナウイルスへの対応たいおうも負担ふたんとなっていて、文部もんぶ科学かがく省しょうが全国ぜんこくの教育きょういく委員いいん会かいなどに行いった調査ちょうさでは、小中こなか学校がっこうでは、

▽「教員きょういんによる清掃せいそうや消毒しょうどく作業さぎょうを行おこなった」

▽「長期ちょうき休暇きゅうかを短縮たんしゅくした」という回答かいとうが、

いずれも9割わりに上のぼったということで、勤務きんむ時間じかんの増加ぞうかにつながった可能かのう性せいがあるということです。

一方いっぽう、長時間ちょうじかん労働ろうどうと併あわせて精神せいしん的てきな負担ふたんも指摘してきされていて、2019年度ねんどにうつ病うつびょうなどの精神せいしん的てきな病気びょうきで休職きゅうしょくしたり、有給ゆうきゅうなどを使つかって1か月かげつ以上いじょう休やすんだりした教員きょういんは、公立こうりつの小中しょうちゅう学校がっこうや高校こうこう、それに特別とくべつ支援しえん学校がっこうで合あわせて9642人にんに上のぼり、増加ぞうか傾向けいこうにあります。

文部もんぶ科学かがく省しょうでは、

▽教員きょういんの残業ざんぎょう時間じかんの上限じょうげんを月つき45時間じかんとすることを教育きょういく委員いいん会かいなどに向むけた「指針ししん」の中なかで定さだめたほか、

▽休日きゅうじつの部ぶ活動かつどうを地域ちいきの活動かつどうとすることで、教員きょういんが携たずさわらなくてもよくなる仕組しくみの整備せいびを進すすめるなど、教員きょういんの負担ふたん軽減けいげんに取り組とりくんでいますが、厳きびしい状況じょうきょうが続つづいています。

そのうえで「文部もんぶ科学かがく省しょうがどこまで意図いとしていたかはわからないが、結果けっか的てきに、このハッシュタグを通をつうじて教員きょういんの本当ほんとうに悲痛ひつうな思おもいがあふれてきました。これは非常ひじょうに大事だいじなことで、現場げんばの状況じょうきょうが把握はあくできなくては改善かいぜんもできないが、今回こんかい、教員きょういんたちは多おおくの問題もんだい点てんを提示ていじしてくれている。そもそも仕事しごと量りょうが多おおすぎるとかパワハラやマタハラが現場げんばにあること、あるいは保護ほご者しゃからのプレッシャーも結構けっこうあると、次々つぎつぎと挙あげています。当初とうしょの想定そうていとは違ちがうかもしれないが、文部もんぶ科学かがく省しょうは見みえてきた具体ぐたい例れいに基もとづき、教員きょういんの長時間ちょうじかん労働ろうどうをどう解消かいしょうしていくか建設けんせつ的てきに考かんがえていくタイミングだと思おもいます」と指摘してきし、可視かし化かされた悲痛ひつうな声こえを働はたらき方かたの改善かいぜんに生いかすべきだとしています。