日本にっぽんやヨーロッパなどの科学かがく者しゃが参加さんかする国際こくさいプロジェクトで建設けんせつする計画けいかくで、東北とうほく地方ちほうの北上ほくじょう山地さんちが候補こうほ地ちになっています。

しかし、測定そくてい器きを含ふくめた建設けんせつ費ひだけで7000億おく円えんを超こえる費用ひようが必要ひつようで、誘致ゆうちした国くにの負担ふたんの割合わりあいが多おおくなる見通みとおしになることから、文部もんぶ科学かがく省しょうが科学かがく者しゃを代表だいひょうする日本にっぽん学術がくじゅつ会議かいぎに見解けんかいを求もとめていました。

これについて、学術がくじゅつ会議かいぎの委員いいん会かいは、科学かがく的てきな成果せいかが巨額きょがくの経費けいひ負担ふたんに見合みあうとは認識にんしきできないうえ、国際こくさい的てきな経費けいひ分担ぶんたんの見通みとおしも明あきらかでないことなども懸念けねん材料ざいりょうだとして「誘致ゆうちを支持しじするには至いたらない」と結論けつろんづけ、政府せいふが誘致ゆうちについて意思いし表明ひょうめいする際さいには、慎重しんちょうに判断はんだんすべきだとする見解けんかい案あんをまとめました。

また、実験じっけん施設しせつの巨大きょだい化かを前提ぜんていとする研究けんきゅうスタイルは、いずれ限界げんかいに達たっするとして、巨額きょがくの費用ひようを必要ひつようとする「ビッグサイエンス」の在り方ありかたについて、学術がくじゅつ界かい全体ぜんたいで考かんがえなければならない課題かだいだとしました。

この見解けんかい案あんは、19日にちにも学術がくじゅつ会議かいぎで審議しんぎされたあと、文部もんぶ科学かがく省しょうに伝つたえられる見通みとおしです。最終さいしゅう的てきには政府せいふが誘致ゆうちの是非ぜひを判断はんだんしますが、学術がくじゅつ会議かいぎの見解けんかいは、今後こんごの議論ぎろんに影響えいきょうを与あたえることになります。

国際こくさいリニアコライダーとは

「国際こくさいリニアコライダー」（通称つうしょうＩＬＣ）は、光ひかりに近ちかい速はやさに加速かそくした電子でんしと陽電子ようでんしを衝突しょうとつさせて宇宙うちゅうの誕生たんじょう直後ちょくごの状態じょうたいを再現さいげんし、素粒子そりゅうしの１ひとつヒッグス粒子りゅうしなどを発生はっせいさせることができる巨大きょだいな実験じっけん施設しせつです。

各国かっこくの科学かがく者しゃなどが参加さんかした国際こくさい将来しょうらい加速かそく器き委員いいん会かい「ＩＣＦＡ」が国際こくさいプロジェクトとして提案ていあん、その後そのご、候補こうほ地ちが東北とうほく地方ちほうの北上ほくじょう山地さんちに決きまりました。

同様どうようの国際こくさいプロジェクトは、ヒッグス粒子りゅうしを世界せかいで初はじめて発見はっけんし、ノーベル賞しょう受賞じゅしょうにつなげたスイスの「ＣＥＲＮ（セルン）」という研究けんきゅう機関きかんの実験じっけん施設しせつがありますが、この施設しせつは粒子りゅうしを加速かそくさせる本体ほんたい部分ぶぶんが１いち周しゅう27キロの円形えんけいをしているのに対にたいし、ＩＬＣは長ながさ20キロメートル余あまりの直線ちょくせんの形かたちをしています。

直線ちょくせんにすることで、粒子りゅうしをより速はやく加速かそくさせることが可能かのうになり、大量たいりょうのヒッグス粒子りゅうしを発生はっせいさせることができるといいます。

これにより、宇宙うちゅうのすべての物質ぶっしつに「質量しつりょう」、つまり「重おもさ」を与あたえたと考かんがえられているヒッグス粒子りゅうしをより詳くわしく調しらべることが可能かのうになり、宇宙うちゅうの成り立なりたちの解明かいめいにつながることが期待きたいされています。

しかし、ＩＬＣをめぐっては、測定そくてい器きを含ふくめた建設けんせつ費ひが約やく7300億おく円えんから8000億おく円えんと試算しさんされ、日本にっぽんが誘致ゆうちをした場合ばあい、参加さんか国こくの中なかで負担ふたん割合わりあいが最もっとも大おおきくなる見通みとおしです。

このため、ほかの分野ぶんやの研究けんきゅう費ひなどが抑おさえられるのではないかといった影響えいきょうを懸念けねんする意見いけんが、一部いちぶの研究けんきゅう者しゃから出だされています。

一方いっぽう、推進すいしんする科学かがく者しゃグループや候補こうほ地ちの地元じもと自治体じちたいや経済けいざい団体だんたいなどは日本にっぽんの基礎きそ研究けんきゅうの底上そこあげのほか技術ぎじゅつ革新かくしんや新しん産業さんぎょう創出そうしゅつにもつながるなどと主張しゅちょうしていて、誘致ゆうちについては意見いけんが分わかれています。