こうした中、ジェネリックメーカーでつくる「日本ジェネリック製薬協会」が会員企業37社の供給状況をまとめたところ、5月10日の時点で合わせて2516品目の出荷が滞っていて、これはジェネリック医薬品全体のおよそ4分の1にあたるということです。
また、この影響で不足した薬の代わりに需要が高まった先発医薬品でも出荷の制限が続いていて、全国の医療機関や薬局では一部の薬が手に入りづらい状況が依然として続いています。
こうした状況を受けて厚生労働省はメーカー各社に増産を要請していて、これまでにジェネリック大手の「沢井製薬」と「東和薬品」の2社が生産体制を大規模に増強する計画を発表していますが、工場の増設や国の承認を得る手続きなどで2年ほどかかる見込みだということで、現在の医薬品の供給不足が解消する当面の見通しは立っていません。
有効性や安全性を確かめる研究開発のコストが抑えられるため、新たに販売されるジェネリック医薬品の価格は、一律に先発医薬品の5割と定められています。 このうち内服薬については10品目を超えてジェネリック医薬品が製造販売される場合、さらに4割にまで引き下げられます。 国は医療費抑制のためにジェネリック医薬品を使うことを診療報酬や調剤報酬の加算の条件とするなど普及を推進していて、ジェネリックの使用割合は去年9月の調査で、79%に上っています。
クリニックでは、服用していたジェネリックの薬が不足して渡せなくなった患者にはやむをえず同じ効能の薬を処方しています。 しかし、薬が変わった患者の中には、新しい薬が体質的に合わず、薬の効果が十分感じられないと訴える人もいます。 また、価格の安いジェネリックから先発薬に変更すると、患者にとっては費用の負担も増えてしまいます。 この日「新しい薬が合わず効果が感じられない」と相談した70代の患者の女性は「同じ効能と言うけど私にとっては全然違う。薬が変わると不安になります」と話していました。 北原医院の井上美佐医師は「患者さんから効きが悪いと言われると、謝りながらお薬を処方しないといけない。患者さんに迷惑をかけているのが心苦しいです」と話しています。
一方、製造現場で働く従業員に取材すると、増産は工場の稼働時間を延ばして対応せざるを得ず、労働環境の悪化による影響を懸念する声もあがっています。 関東のジェネリック医薬品メーカーの工場で働く男性は、「日医工の供給不安が出てきた頃から、月の残業が40時間を超えたり休日出勤が増えたりする状況が続いています。こうした中で、中堅社員の退職も相次いでいて、これまでなかったような作業ミスが増えています。ミスしてもきちんと報告をすればいいんですが、生産の遅れを気にして、ミスを隠すようにならないか不安です」と話しています。
ジェネリック医薬品とは?
いつもの薬が急に変更 患者への影響は
増産対応で製造現場の負担増
坂巻教授「供給状況データベース整備の検討を」
【詳しく】製薬会社の行政処分相次ぐ メーカーに何が?(更新)