尾身おみ会長かいちょうらは、20日にちの有識者ゆうしきしゃ会議かいぎでこの2年ねん半はんの新型しんがたコロナウイルス対策たいさくの課題かだいや今後こんごの方向ほうこう性せいについて文書ぶんしょで示しめして説明せつめいしました。

この中なかでは日本にっぽんでは人口じんこう当あたりの新規しんき感染かんせん者しゃ数すうや亡なくなる人ひとの数かずは諸しょ外国がいこくに比くらべて低ひくく抑おさえられているとした一方いっぽう、さまざまな課題かだいが見みえてきたとしています。

そして、課題かだいの1つとして政府せいふと専門せんもん家かの関係かんけいを挙あげ、▽分科ぶんか会かいなど専門せんもん家かの助言じょげん組織そしきから合あわせて68本ほんの提言ていげんを示しめしたのに対にたいして、政府せいふからは政策せいさくに取り入とりいれるか否いなかや、その理由りゆう、実行じっこう状況じょうきょうの説明せつめいが十分じゅうぶんではなく、対策たいさくが意思いし決定けっていされる過程かていがわかりにくかったほか、▽政府せいふに助言じょげんを行おこなう際さいに必要ひつような調査ちょうさや研究けんきゅうを支援しえんする仕組しくみがぜい弱ぜいじゃくで、専門せんもん家かに過度かどな負担ふたんがかかったなどとしています。

また、2009年ねんに拡大かくだいした当時とうじの新型しんがたインフルエンザの教訓きょうくんを受うけて出だされた検査けんさ体制たいせいの強化きょうかや医療いりょう提供ていきょう体制たいせいの検討けんとうを求もとめる提言ていげんが実行じっこうされず、検査けんさについては▽当初とうしょ、急速きゅうそくに増強ぞうきょうできず、限かぎられた体制たいせいの中なかで効率こうりつ的てきに行おこなう必要ひつようがあったほか▽検査けんさの目的もくてきや活用かつようの方針ほうしんについて議論ぎろんが行おこなわれず、体制たいせいの大おおきな戦略せんりゃくが定さだまらなかったと指摘してきしています。

さらに、医療いりょうについて、

▽世界一せかいいちの超ちょう高齢こうれい社会しゃかいに最適さいてき化かするよう、介護かいごや生活せいかつ支援しえんに力点りきてんを置おいてきたため、パンデミックに対応たいおうする体制たいせいが十分じゅうぶん構築こうちくされてこなかったことや

▽病床びょうしょう当あたりの医師いしや看護かんご師しの数かずが少すくなく短期間たんきかんに急増きゅうぞうする重症じゅうしょう患者かんじゃに対応たいおうしにくいこと、

▽コロナ診療しんりょうに対応たいおうする医療いりょう機関きかんが限かぎられ、一部いちぶの医療いりょう機関きかんに過度かどな負担ふたんが生しょうじていたこと、

▽コロナ以外いがいの救急きゅうきゅうの患者かんじゃの搬送はんそうが困難こんなんになるケースが増加ぞうかしたことなどを課題かだいとしています。

文書ぶんしょでは、今後こんご求もとめられる方向ほうこう性せいも示しめし「パンデミックなどの大型おおがたのリスクに対応たいおうできる科学かがく的てき助言じょげんシステムを構築こうちくすべきだ」としたうえで、▼国くにや自治体じちたいが持もつデータを専門せんもん家かと迅速じんそくに共有きょうゆうできるシステムや▼高度こうどな調査ちょうさ研究けんきゅうの支援しえんができる事務じむ局きょく機能きのうの強化きょうかなどが求もとめられるとしています。

また、検査けんさや医療いりょう体制たいせいについては▼パンデミックに備そなえ、検査けんさの体制たいせいを強化きょうかし維持いじすることや▼感染かんせん拡大かくだいが予想よそうされる時ときに一定いっていの医療いりょう機関きかんが専用せんようの病院びょういんに転換てんかんできるようにすること、それに一般いっぱんの医療いりょう機関きかんが診療しんりょうに加くわわる体制たいせいの強化きょうかなどといった課題かだいの解決かいけつが必要ひつようだとしています。

さらに、緊急きんきゅう時じの市民しみんとのコミュニケーションは政府せいふの役割やくわりだとして、▼専門せんもん家かを活用かつようしたコミュニケーションの体制たいせいを強化きょうかすることや▼対策たいさくの実行じっこう状況じょうきょうをわかりやすくモニターできる仕組しくみが不可欠ふかけつだと指摘してきしました。

尾身おみ会長かいちょう「分科ぶんか会かいメンバーでは人数にんずうや専門せんもん性せい限かぎられてしまう」

会合かいごうのあと取材しゅざいに応おうじた尾身おみ会長かいちょうは「ヒアリングではコロナ対応たいおうの大おおきな方向ほうこう性せいについて、『ゼロコロナ』を目指めざす封じ込ふうじこめではなく、感染かんせんを制御せいぎょしながら重症じゅうしょう者しゃや亡なくなる人ひとの数かずを抑おさえる方針ほうしんをとってきたという振り返ふりかえりを行おこなった。オミクロン株かぶが広ひろがるなかで感染かんせん者しゃの報告ほうこくや調査ちょうさなどのルールを弾力だんりょく的てきに変かえて、感染かんせん制御せいぎょそのものに重点じゅうてんを置おかずに亡なくなる人ひとを減へらしていく『被害ひがい抑制よくせい』という方針ほうしんに徐々じょじょにシフトしつつある。より効率こうりつ的てきな対策たいさくを進すすめ、やらなくてもよい対策たいさくも示しめしていくことが必要ひつようだと考かんがえている」と述のべました。

また、流行りゅうこうの初期しょきから行おこなった感染かんせん者しゃのクラスターを早期そうきに見みつけて感染かんせんの広ひろがりを防ふせぐ「クラスター対策たいさく」について、「感染かんせん者しゃのうち、多おおくの人ひとはほかの人ひとに感染かんせんさせないという知見ちけんを早はやい段階だんかいで得えて、クラスター対策たいさくに結び付むすびつけた。この知見ちけんは最新さいしんの調査ちょうさでも確たしかめられているが、感染かんせん者しゃがかなり多おおくなってしまうとクラスター対策たいさくだけでは感染かんせん拡大かくだいを止とめられず、まん延まんえん防止ぼうし等とう重点じゅうてん措置そちや緊急きんきゅう事態じたい宣言せんげんが必要ひつようになったということだと思おもう」と説明せつめいしました。

さらに次つぎのパンデミックに向むけた専門せんもん家か組織そしきの在り方ありかたについて尾身おみ会長かいちょうは「危機きき対応たいおうでは専門せんもん家かとして科学かがく的てき根拠こんきょが完全かんぜんに明確めいかくではなくても、助言じょげんや提言ていげんをしないといけない場面ばめんがある。分科ぶんか会かいのメンバーでは人数にんずうや専門せんもん性せいがどうしても限かぎられてしまうので、状況じょうきょうに応おうじて学会がっかいなど別べつの専門せんもん家集かしゅう団だんと連携れんけいする仕組しくみが求もとめられるのではないかということもお話おはなしした」と述のべました。