ウクライナ軍ぐんのロシア西部せいぶへの越境えっきょう攻撃こうげき 開始かいしから2か月かげつ

ウクライナ軍ぐんは8月つき6日にちにロシア西部せいぶクルスク州しゅうへの攻撃こうげきを始はじめ、8月つき下旬げじゅんの時点じてんで、東京とうきょう23区くの2倍ばいの面積めんせきにあたるおよそ1300平方キロメートルへいほうきろめ-とるの地域ちいきと100の集落しゅうらくを掌握しょうあくしたとしています。

ロシア軍ぐんは撃退げきたいに乗り出のりだしましたが、2か月かげつがたってもウクライナ軍ぐんはクルスク州しゅうの一部いちぶを掌握しょうあくしており、激はげしい戦闘せんとうが続つづいているとみられます。

ウクライナ側がわには越境えっきょう攻撃こうげきによってロシア軍ぐんの部隊ぶたいを分散ぶんさんさせ、ウクライナ東部とうぶでの進軍しんぐんを止とめる狙ねらいもあったとみられますが、東部とうぶドネツク州しゅうではロシア軍ぐんの攻勢こうせいにさらされ、後退こうたいを強しいられています。

今月こんげつ2日にちには激はげしい戦闘せんとうが続つづいていたブフレダルからの撤退てったいを発表はっぴょうしました。

一方いっぽう、ロシア軍ぐんは今後こんご、ドネツク州しゅう全域ぜんいきの掌握しょうあくを目指めざし、要衝ようしょうポクロウシクなどに向むけて攻勢こうせいを強つよめるとみられます。

ウクライナのシンクタンクの代表だいひょうで安全あんぜん保障ほしょうに詳くわしいミハイロ・サムシ氏しはNHKのインタビューに対にたいし、「ロシアにとって重要じゅうようなのは、アメリカの新あたらしい大統領だいとうりょうが就任しゅうにんする前まえの年末ねんまつまでに、東部とうぶドンバス地域ちいきを掌握しょうあくし、政治せいじ的てき成功せいこうを収おさめることだ」と述のべました。

ただ、ウクライナが強固きょうこな防衛ぼうえい線せんを築きずいているのに加くわえロシア側がわも兵力へいりょくや物資ぶっしが十分じゅうぶんではないなどとして、「ロシアがことしじゅうに掌握しょうあくできる可能かのう性せいは低ひくい」との分析ぶんせきを示しめしました。

ロシア ウクライナ東部とうぶでの攻勢こうせい優先ゆうせんか　

ロシアのプーチン政権せいけんはクルスク州しゅうについては国営こくえいメディアなどを駆使くしして国民こくみんの動揺どうようを抑おさえつつ、ウクライナ東部とうぶで戦果せんかを上あげることを優先ゆうせんしているものと見みられます。

東部とうぶドネツク州しゅうでロシア軍ぐんはミサイルや無人むじん機きによる攻撃こうげきを強つよめ、徐々じょじょに掌握しょうあく地域ちいきを広ひろげていて、今月こんげつ3日にちには激はげしい戦闘せんとうが続つづいていたブフレダルを掌握しょうあくしたと発表はっぴょうしました。

今後こんごはドネツク州しゅう全域ぜんいきの掌握しょうあくを目指めざし要衝ようしょうポクロウシクなどに向むけて攻勢こうせいを強つよめる狙ねらいです。

プーチン政権せいけんは、一方いっぽう的てきに併合へいごうを宣言せんげんしたウクライナ東部とうぶのドネツク州しゅうとルハンシク州しゅう、南部なんぶのザポリージャ州しゅうとヘルソン州しゅうからのウクライナ軍ぐんの撤退てったいなどを和平わへい交渉こうしょうを始はじめるための条件じょうけんとしていて、侵攻しんこうを続つづける構かまえを崩くずしていません。

しかし、アメリカのシンクタンク「戦争せんそう研究所けんきゅうじょ」は「ロシア軍ぐんの兵力へいりょくや物資ぶっしは際限さいげんなく攻撃こうげきを続つづけるには十分じゅうぶんではない」と指摘してきしてます。

プーチン大統領だいとうりょうは先月せんげつ、ロシア軍ぐんの定員ていいんを18万まん人にん増ふやして150万まん人にんとすることを決きめましたが、国民こくみんからの強つよい反発はんぱつが予想よそうされる動員どういんによる兵力へいりょくの確保かくほは避さけたいものとみられます。

契約けいやく軍人ぐんじん、いわゆる志願しがん兵へいを集あつめるために高額こうがくの報酬ほうしゅうをさらに引き上ひきあげたほか、今月こんげつには刑事けいじ事件じけんで罪つみに問とわれている被告ひこくが軍ぐんに入隊にゅうたいすれば刑事けいじ責任せきにんを免除めんじょする法律ほうりつが成立せいりつしましたが、プーチン大統領だいとうりょうの思惑おもわく通どおり必要ひつような兵力へいりょくを確保かくほできるかは不透明ふとうめいです。

ロシアの人々ひとびとの間までは徐々じょじょに懸念けねんが薄うすれる

ロシアは、クルスク州しゅうで越境えっきょう攻撃こうげきを続つづけるウクライナ軍ぐんを2か月かげつがたっても、撃退げきたいできていませんが、ロシアの人々ひとびとの間までは徐々じょじょに懸念けねんが薄うすれています。

ロシアの「世論せろん調査ちょうさ財団ざいだん」が「メディアで伝つたえられたニュースのうち最もっとも関心かんしんがあった出来事できごとは何なにか」をたずねた調査ちょうさで「クルスク州しゅうでの軍事ぐんじ作戦さくせん」と答こたえた人ひとの割合わりあいは、越境えっきょう攻撃こうげきが始はじまった8月つき上旬じょうじゅんは39％でした。

しかし、先月せんげつ下旬げじゅんの調査ちょうさでは6％で、33ポイント低下ていかしました。

首都しゅとモスクワでクルスク州しゅうの状況じょうきょうについて尋たずねたところ、女性じょせいの1人にんは「ウクライナにわれわれの領土りょうどを侵略しんりゃくする権利けんりはない。この侵略しんりゃくはアメリカが支援しえんしている」と話はなしていました。

また若わかい男性だんせいは「2か月かげつ続つづいているといってパニックになるということはない。ほとんどの人ひとはモスクワにウクライナ軍ぐんが来くるまでは気きにしない」と話はなしていました。

ウクライナ 越境えっきょう攻撃こうげきを市民しみんに広ひろくPRする動うごきも

ウクライナではロシア西部せいぶのクルスク州しゅうでの越境えっきょう攻撃こうげきを市民しみんに広ひろくPRする動うごきも出でています。

首都しゅとキーウにある歴史れきし博物館はくぶつかんでは、先月せんげつから越境えっきょう攻撃こうげきについての特別とくべつ展てんが開ひらかれています。

展示てんじされているのは、クルスク州しゅうが歴史れきし的てきにウクライナとつながりがあることを示しめす地図ちずや歴史れきし資料しりょうのほか、越境えっきょう攻撃こうげきでウクライナ軍ぐんが掌握しょうあくした拠点きょてん、スジャで8月つき中旬ちゅうじゅんに撮影さつえいされた写真しゃしんなどです。

現地げんちから持ち帰もちかえったという道路どうろ標識ひょうしきには、無数むすうの銃弾じゅうだんの痕あととともにウクライナとロシアに分岐ぶんきする道みちが示しめされ、ロシアからの決別けつべつを象徴しょうちょうしているとしています。

また、地下ちかの避難ひなん所しょを撮影さつえいした写真しゃしんからは、ロシア人じん住民じゅうみんの不安ふあんそうな表情ひょうじょうがうかがえます。

避難ひなん所しょの入り口いりくち近ちかくに掲かかげられていた看板かんばんも展示てんじされていて「ここには民間みんかん人じんしかいない」などと書かかれています。

この日ひは、市内しないの生徒せいと10人にんあまりが訪おとずれ、ガイドを務つとめたスタッフは、避難ひなん所しょの写真しゃしんについて「ロシア人じんたちは決けっして見みたくなかった形かたちで戦争せんそうを目の当まのあたりにしている」と説明せつめいしていました。

歴史れきし博物館はくぶつかんによりますと、特別とくべつ展てんにはこれまでに1万まん人にん以上いじょうが訪おとずれたということです。

サブチュク館長かんちょうは「作戦さくせんを行おこなったウクライナ軍ぐんの勇気ゆうきは称賛しょうさんに値あたいする。この展示てんじは国民こくみんの士気しきを高たかめるためにも非常ひじょうに重要じゅうようだ」と話はなしていました。

男子だんし生徒せいとの1人にんは「ウクライナがクルスク州しゅうを制圧せいあつできれば、ロシアが支配しはいするウクライナの領土りょうどと交換こうかんできるという点てんで重要じゅうようだ」と話はなしていました。

また、女子じょし生徒せいとの1人にんは「ロシア人じんも私わたしたちと同様どうように戦争せんそうで苦くるしんでいることがわかったのは、よかったとさえ思おもう。しかし、彼かれらはただの民間みんかん人じんで、同情どうじょうの気持きもちもある」と複雑ふくざつな心境しんきょうを話はなしていました。

ウクライナのシンクタンク代表だいひょう 双方そうほうが課題かだいを抱かかえていると分析ぶんせき

ウクライナのシンクタンクの代表だいひょうで安全あんぜん保障ほしょうに詳くわしいミハイロ・サムシ氏しは、NHKのインタビューに対にたいし、ウクライナ軍ぐんの越境えっきょう攻撃こうげきについて「緩衝かんしょう地帯ちたいを設置せっちするためでロシア領内りょうないの奥深おくふかくまで侵入しんにゅうするためではない。ウクライナの国境こっきょうからロシア軍ぐんを追い出おいだし、ウクライナの都市としに対にたいして砲撃ほうげきできないようにするためだ」と指摘してきしました。

そして、ウクライナ軍ぐんがクルスク州しゅうに隣接りんせつし同おなじくウクライナの国境こっきょうと接せっするロシア西部せいぶのベルゴロド州しゅうなどにも攻撃こうげきを仕掛しかける可能かのう性せいがあるという見方みかたを示しめしました。

ただ、「問題もんだいは誘導ゆうどう爆弾ばくだんで、ウクライナはこれを止とめることができない。防空ぼうくうシステムが役に立やくにたたないからだ」と述のべ、欧米おうべいから供与きょうよされた射程しゃていの長ながい兵器へいきの使用しよう制限せいげんが撤廃てっぱいされ、ロシア領内りょうないの奥深おくふかくを攻撃こうげきできるようにならない限かぎりは市民しみんに被害ひがいをもたらす誘導ゆうどう爆弾ばくだんなどの攻撃こうげきを防ふせぐのは難むずかしいと指摘してきしました。

一方いっぽう、ロシア軍ぐんについては「ロシアにとって重要じゅうようなのは、アメリカの新あたらしい大統領だいとうりょうが就任しゅうにんする前まえの年末ねんまつまでに、東部とうぶドンバス地域ちいきを掌握しょうあくし、政治せいじ的てき成功せいこうを収おさめることだ。だから、クルスク州しゅうは無視むししている」と述のべ、ロシア軍ぐんは今後こんごもウクライナ東部とうぶでの攻勢こうせいを優先ゆうせんするという見方みかたを示しめしました。

ただ、「ロシアがことし中ちゅうにドンバス全域ぜんいきを掌握しょうあくする可能かのう性せいは低ひくい。ウクライナの防衛ぼうえい線せんを突破とっぱし、ドンバスの境界きょうかい線せんまで到達とうたつするには十分じゅうぶんではない」と指摘してきし、ウクライナとロシアの双方そうほうが課題かだいを抱かかえていると分析ぶんせきしました。