経済けいざいが順調じゅんちょうに成長せいちょうした場合ばあいには、およそ30年間ねんかんにわたり給付きゅうふ水準すいじゅんが抑制よくせいされ目減めべりするものの、政府せいふが約束やくそくしている現役げんえき世代せだいの平均へいきん収入しゅうにゅうの50％以上いじょうの給付きゅうふ水準すいじゅんは維持いじできるとしています。

一方いっぽう、経済けいざいがマイナス成長せいちょうの場合ばあいには、2050年代ねんだいに国民こくみん年金ねんきんの積立つみたて金きんが枯渇こかつし、給付きゅうふ水準すいじゅんが、現役げんえき世代せだいの30％台だい半なかばまで落ち込おちこむおそれがあるとしています。公的こうてき年金ねんきんの財政ざいせい状況じょうきょうをチェックし、将来しょうらいの給付きゅうふ水準すいじゅんの見通みとおしを示しめす「財政ざいせい検証けんしょう」は、５ご年ねんに１いち度ど行おこなわれることになっていて、厚生こうせい労働ろうどう省しょうは、きょう開ひらかれた社会しゃかい保障ほしょう審議しんぎ会かいの年金ねんきん部会ぶかいで、検証けんしょう結果けっかを示しめしました。

今いまの公的こうてき年金ねんきん制度せいどは、現役げんえき世代せだいの保険ほけん料りょうなどで高齢こうれい者しゃの年金ねんきん給付きゅうふを賄まかなう仕組しくみで、少子しょうし高齢こうれい化かの進展しんてんで、支ささえ手しゅである現役げんえき世代せだいが減少げんしょうしても、制度せいどが維持いじできるよう、給付きゅうふ水準すいじゅんを自動的じどうてきに抑制よくせいする「マクロ経済けいざいスライド」という措置そちが導入どうにゅうされています。

一方いっぽうで、現役げんえき世代せだいの平均へいきんの手取てどり収入しゅうにゅうに対にたいして、夫婦ふうふ２に人にんのモデル世帯せたいが受け取うけとる年金ねんきん額がくの割合わりあいを示しめす「所得しょとく代替だいたい率りつ」が50％を上回うわまわることを法律ほうりつで約束やくそくしていて、今年度こんねんどは、▽現役げんえき世代せだいの平均へいきん収入しゅうにゅうが35万まん7000円えんなのに対にたいし、▽モデル世帯せたいの年金ねんきん額がくは満額まんがくで22万まん円えんで、「所得しょとく代替だいたい率りつ」は61.7％でした。

今回こんかいの検証けんしょうでは、物価ぶっかや賃金ちんぎんの上昇じょうしょう率りつや就業しゅうぎょう率りつなどに応おうじ、中ちゅう長期ちょうきの実質じっしつ経済けいざい成長せいちょう率りつが、0.9％からマイナス0.5％までの６むっつのケースで試算しさんを行おこないました。

その結果けっか、◇女性じょせいや高齢こうれい者しゃなどの就労しゅうろうや経済けいざい成長せいちょうが順調じゅんちょうに進すすむ３みっつのケースでは、給付きゅうふ水準すいじゅんの抑制よくせいで現在げんざい、61.7％の「所得しょとく代替だいたい率りつ」が、2040年代ねんだい半なかばに51.9％から50.8％に下さがり、実質じっしつ的てきに目減めべりするものの、その後そのごは、抑制よくせい措置そちが終おわり、同おなじ水準すいじゅんを維持いじできるとしています。

一方いっぽう、◇経済けいざい成長せいちょう率りつが0.2％と０ぜろ％の２ふたつのケースでは、2040年代ねんだい前半ぜんはんに、「所得しょとく代替だいたい率りつ」が50％を割り込わりこみ、仮かりに、年金ねんきん財政ざいせいの収支しゅうしのバランスが取とれるまで抑制よくせい措置そちを続つづけた場合ばあいには、2050年代ねんだいに、「所得しょとく代替だいたい率りつ」が45％前後ぜんごになる見通みとおしです。

さらに、◇成長せいちょう率りつがマイナス0.5％のケースでは、2052年度ねんどには、財源ざいげんの一部いちぶである国民こくみん年金ねんきんの積立つみたて金きんが枯渇こかつし、「所得しょとく代替だいたい率りつ」は36％程度ていどまで落ち込おちこむおそれがあるとしています。

また、今後こんごの制度せいど改正かいせいをにらんだ「オプション試算しさん」として、▽厚生こうせい年金ねんきんの適用てきよう範囲はんいをパートなどの短みじか時間じかん労働ろうどう者しゃにも拡大かくだいした場合ばあいや、▽年金ねんきんの受給じゅきゅう開始かいし年齢ねんれいを75歳さいまで選択せんたくできるようにした場合ばあいの検証けんしょうも行おこない、いずれも、「所得しょとく代替だいたい率りつ」が改善かいぜんする結果けっかになりました。政府せいふは、今回こんかいの検証けんしょう結果けっかを踏ふまえて制度せいど改正かいせいの議論ぎろんを本格ほんかく化かさせることにしています。