宮内庁によりますと、上皇后さまはその後、手術の方法などを検討するための検査を受けた結果、今月7日に東京 文京区の東京大学附属病院に入院し、翌8日にがんを摘出する手術を受けられることになりました。
上皇后さまのがんの進行度合いを示すステージは1で、明らかな転移はないと判断されているということで、県立静岡がんセンターと東大病院の専門の医師が協力して手術にあたるということです。
医師団は全身麻酔のうえ、がんとその周辺だけを摘出する乳房温存手術を行う方針で、麻酔なども含め全体で4時間ほどで終わる見通しだということです。
上皇后さまは順調にいけば手術後数日ほどで退院される見通しだということです。
84歳の上皇后さまは代替わりに伴う多忙な日々を送る中、ストレスなどによって体重が急激に減少し、先月下旬には上皇さまと軽井沢と草津で静養し、体力の回復を図られていました。
高齢者の乳がん手術の現状は
乳がんの治療は進行度に応じて、手術や放射線、そして抗がん剤やホルモン剤といった薬物を使った治療が行われています。
転移の程度が少なく、がんを取り除くことができる場合は手術が選択されます。
かつては高齢の場合には、全身麻酔をしたうえで行う手術は体への負担が大きいとして控える人が多いとされてきましたが、近年では医療技術の進歩で負担を軽減することが可能になってきていて、早期のがんだとほとんどの人が手術を選択しています。
手術の術式には乳房をすべて切除する方法と、がんがある部分とそのまわりを取り除いて乳房を残す「部分切除」という方法があります。
乳房をすべて切除する方法は、がんが乳房の広い範囲に広がっている場合やしこりが複数ある場合に行われます。
一方、患者の乳房の形の変化が少なくてすむため、近年では部分切除を選択するケースが増えています。
乳房が残せた場合、再発のリスクを下げるため、手術の後には原則として放射線治療が行われますが、患者が高齢の場合は放射線の影響で肺炎などを起こすリスクがあるため、がんの悪性度が低い場合には行わない場合もあります。
がんの転移は手術してみないと分からないことも多く、いずれの術式をとる場合でも、手術中にわきの下のリンパ節にがん細胞が転移しているかどうか調べる検査が行われることが多くなっています。
乳がんの治療に詳しい昭和大学の中村清吾教授によりますと、早期の乳がんの場合、手術はおおむね2時間以内で翌日には食事をとれるケースがほとんどで、90%以上は治癒するということです。
また、3日から1週間ほどで退院できるということで、高齢であっても手術のリスクは高くないとしています。