そう思っている人、年齢性別問わず多いのではないでしょうか?
私もその1人でした。
でも、その入り方、危険だったんです。
どうして危険なのか、何に気をつければいいのか、専門家に詳しく聞きました。
後段にはすぐにできる、入浴で気をつけてほしいことをまとめています。
年末年始の帰省の際、ぜひ高齢の家族に伝えてください。
(映像センター 小野木翔太)
「年間2万人以上が入浴中に亡くなったと推測される」

「年間少なくとも2万人は亡くなっているとみて問題無いです。交通事故の死亡者は年間3000人を下回っているので、入浴中の死亡は、重大な社会問題であるにもかかわらず、あまり認知されていません」
早坂教授が2万人以上と推測する根拠は大きく2つ。
厚生労働省が入浴中の急死を調べた2014年の研究と、毎年出される人口動態調査です。
2014年当時、入浴中に亡くなった人は1万9000人と推定されていて、去年、湯船で溺死した人の90%以上が65歳以上の高齢者であったことから、2014年より高齢化が進んだ現在は2万人を優に超えていて、今後さらに増えていく可能性があるというのです。
冬×高齢が特に危険

さらに12月から2月までの3か月間で全体の半数が集中します。
寒い脱衣所や洗い場以外にも危険が
私が取材中に浮かんだのが、あの冬の風呂場の寒さです。
実家の脱衣所や洗い場は暖房がなく、湯船に入るまでいつも凍えていました。
当時は気にしませんでしたが、今思うと心臓に負荷がかかっていそうだなと。
しかし、この推測は半分しか合っていませんでした。
早坂教授
「心筋梗塞や脳卒中など入浴中の急死につながる大きな病気を引き起こす原因の1つが血圧の急激な変化で、脱衣所や洗い場が寒いのは確かによくないのですが、加えて危険なのは、寒いところから急に湯船につかって温まろうとする事なんです」
寒い冬こそ湯船に入って温まりたいのに、それが危険?
体の芯から温まると昔からよく言われているのに…。

血圧は、暖かい部屋から冷たい脱衣所に入った瞬間に急上昇し、風呂場に入るまで上がり続け、湯船に入った瞬間、ピークを迎えます。
その後は体が温まることで血管が広がり、血圧が急激に下がっていきます。
つまり、血圧の急激な変化は脱衣所と湯船の中の2か所で起こっているのです。
ヒートショックの恐怖

入浴中の急死は「溺死」「心疾患」「脳血管障害」によるものがほとんどです。
早坂教授は、「ヒートショック」がきっかけとなり、心疾患や脳血管障害が起きたり、血圧の大きな変動で意識を失って溺れたりして、亡くなっていると見ています。
早坂教授
「お風呂に入って、意識が遠のくような感じがするとか、眠くなってきてぼーっとするなどは、脳に十分に血液が回っていないサインで、危険な兆候です。家族がいる場合はすぐ助けを呼んでください」
※ヒートショックは正式な医学用語ではありませんが、温度変化による血圧の上昇と低下による健康被害として、一般的に認知が広がっていることばです。
入浴中の急死を防ぐために

1,十分な水分補給をする
一回の入浴で失われる水分は800mlという研究があり、体内から多くの水分が奪われると、血液の流れが悪くなり血管の事故が起きやすくなります。それを防ぐために入浴前とできれば入浴後の水分補給が勧められています。
2,同居者がいれば一声かける
異変があったときにすぐに気付いてもらえれば、溺れていたとしても早期発見につながります。同居者は10分に一回は声かけを。
3,飲酒時は入浴を控える
飲酒をすると血管が広がり、血圧が下がります。その状態で入浴すると、さらに血管が広がります。その結果、血圧が下がりすぎてしまうため、脳に十分な血液を送ることができなくなり、意識を失う可能性が高まります。
4,脱衣所を暖める
5,入浴前に湯船のふたを開けたり、シャワーで浴室を暖めたりする
ヒートショックを防ぐには、場所による温度差を小さくすることが最も大切です。そのため、暖房を使って脱衣所を暖めておくことや、湯船のふたを開けたりシャワーで浴室を暖めたりすることはとても効果があります。

6,湯船に入る前にかけ湯やシャワーを浴びる
かけ湯やシャワーを浴びることで、体を先端から少しずつ温めることができ、血圧の急上昇を抑えることができます。
7,お湯の温度は41℃以下にして10分以内に出る
お湯の温度が42℃以上になると交感神経が刺激され、血管が収縮して血圧が上昇します。また、42℃で10分入浴すると、体温が38℃近くになり、意識障害を引き起こす可能性が高くなるため、血圧上昇を防ぐためにも温度は41℃以下に設定し、10分以内に出ることが勧められています。
8,湯船はゆっくり立ち上がる
湯船に入っているときは頭を除く全身に水圧がかかっているため、急に湯船を出るとその水圧がなくなり、圧迫されていた血管が一気に拡張します。脳に行く血液が減ると脳が貧血状態になって、一過性の意識障害を起こすことがあるため、湯船を出る際はゆっくり立ち上がり、手すりなどをつかむことがよいとされています。
同居されている人は、入浴中、定期的に声かけをしてあげてください。
万が一、意識がない家族を見つけたら湯船から引き上げる、難しければ湯船のふたか縁に腕を乗せて沈まないようにして119番通報してください。
早坂教授
「年間2万人以上亡くなっていると見られるので、『私は大丈夫』と言わず、脱衣所や浴室は暖房などを使って、温度差をなくしてほしい。そうした安全対策を取りながら正しい入浴をしていただき、健康作りに役立ててほしいと思います」