長嶋さんは「突然の訃報にことばを失った。ショックが大き過ぎる。元気の塊のようだった人にもこういう結末があったのか」とと驚きを隠せませんでした。
そのうえで「混乱する頭の中で、真っ先に浮かんできたのはデビュー戦の4打席4三振のことだった。私はこの時、『プロで戦い抜いてやるぞ』と強く思った」とプロ野球史に残る金田さんとの対戦を振り返りました。
そして「金田さんのような投手はこれから出てくるだろうか。400勝投手は永遠ではないかと思っている。心からご冥福をお祈りします」と金田さんの輝かしい記録に敬意を表しました。
長嶋さんから4打席連続三振
前人未到の通算400勝など数々の記録を打ち立てた金田正一さん。
20年間のプロ野球人生で記憶に残る勝負の1つにあげたのがゴールデンルーキー、長嶋さんとの対戦でした。
高校を中退しプロ入りした金田さん。2年目から20勝以上の勝ち星を毎年あげ、迎えた9年目、昭和33年のシーズン。開幕戦の相手はリーグ3連覇中の巨人。先発メンバーには長嶋茂雄さんの名前がありました。
長嶋さんは東京六大学野球の立教大学で当時の新記録となる通算ホームラン8本をマークし、鳴り物入りで巨人に入団。オープン戦でも19試合で7本のホームランを打ち、開幕前から長嶋さんの人気はどんどん膨らんでいました。
長嶋さんと開幕戦で対戦したことについて、金田さんは現役引退後、「自分はそれまでに連続で20勝していてプロ野球では大投手。父親からも『学生さんには負けるな』と言われていた」とルーキーとの対戦に強いプライドを持って臨んでいました。
その言葉通り、金田さんは持ち味の速球と大きく縦に割れるカーブで4打席連続で三振を奪い、プロの先輩として意地を見せたのです。
金田さんは「この日は調子がよく、歌を歌いながらマウンドに上がった。スイングに怖さを感じたが、何としても負けることはできなった」と最初の対戦を振り返りました。