7日から静岡県熱海市で行われた第5局で、白番の芝野さんは8日午後7時すぎに張さんを投了に追い込んで勝ちを収めて4勝1敗となり、19歳11か月で自身初となる「名人」のタイトルを獲得しました。
10代のうちに七大タイトルを1つでも獲得したのは芝野さんが初めてで、現在四冠の井山裕太さんが平成21年に達成した20歳4か月の最年少記録を更新しました。
また、芝野さんは平成26年9月のプロ入りから5年1か月での七大タイトル獲得となり、許家元八段の5年4か月の記録を更新して史上最短となりました。
対局後、記者から最年少記録達成の心境を問われた芝野さんは静かに考え込みしばらく間を空けたあと、「よく分かりません」とだけ語りました。
敗れた張さんは「苦しいと思う局面は多かった。レベルの高い碁だったと思うし、明らかに僕のほうがミスが多かった。完敗でした」と対局を振り返っていました。
芝野八段「井山先生みたいにタイトルを」
19歳で名人になった囲碁の芝野虎丸八段は、対局のあと記者会見に臨み、「これからもタイトルを取っていければと思います」などと意気込みを語りました。
この中で芝野さんは、史上初めて10代で名人となった心境を聞かれると、「今でも自分なんかが名人でいいのかなという気持ちはあります。10代のうちは厳しいかなと思っていましたが、勝ててよかったです。家族と、一緒に勉強してきた仲間に、まずは感謝を伝えたいです」と思いを語りました。
また、強さの秘けつについて聞かれると、「勉強を頑張ってきたということはありますが、最近は囲碁を打つことがすごく楽しいので、囲碁自体を楽しんでいることがいい結果につながっているのではないかと思います」と分析していました。
来月で二十歳を迎えることから、新名人となった祝杯をあげる予定があるか聞かれると、「仲のいい人とできればいいなと思いますが、予定はないです」と笑って答えていました。
今後の抱負については「七大タイトル獲得は今回が初めてで、棋士として大きな分岐点だと思いますが、これに満足せずに頑張りたいと思います。できれば井山先生みたいにこれからもタイトルを取っていければと思います」と語り、その井山裕太四冠に挑戦する七大タイトルの1つ、王座戦の対局に向けては、「今回名人を取ることができて自信になったと思うので、いい状態で臨めると思います」と意気込みを語っていました。
井山四冠「若くて勢い」
芝野虎丸八段は神奈川県出身で、平成26年9月に14歳でプロ入りしたあとすぐに頭角を現し、翌27年には年間成績を39勝9敗として、全棋士の中で最も高い8割を超える勝率を挙げました。
おととし「竜星戦」に優勝して初のタイトル獲得を果たし、これによって、プロ入りから2年11か月で史上最年少での七段昇段を決めました。
去年には、強豪・中国のトップ棋士を相手にした早碁の国際棋戦で優勝を果たすなど、現在の若手棋士の中で最も注目を集める棋士の1人となっています。
現役トップ棋士の井山裕太四冠は、おととし2度目の七冠独占を達成した時の記者会見の中で「若くて勢いのある棋士」として芝野さんの名前をあげ、「碁への姿勢を含めて感心することが多い」と評していました。
芝野さんはことし、その井山四冠がタイトルを保持している七大タイトルの1つの「王座戦」でもトーナメントを勝ち抜いて挑戦権を獲得し、今月25日から始まる五番勝負を制すれば、早くも「二冠」となります。