関西電力の八木会長と岩根社長は経営幹部らが原子力発電所がある福井県高浜町の元助役から合わせて3億円を超える金品を受け取っていた問題で、午後3時からおよそ1時間半にわたり、記者会見を開きました。
このなかで八木会長は冒頭、「今回の事態によって広く社会の信頼を失墜させ、多大な迷惑をかけた。経営責任を明確にするため辞任という結論に至った」と述べ、9日付けで辞任することを明らかにしました。
また岩根社長は第三者委員会の調査の結論が出たあと辞任することを明らかにしました。調査の結論が出るまで社長を続ける理由について岩根社長は「会社を代表して社会の批判や叱責を受けつつ、今回の問題を徹底的にあぶりだすため、第三者委員会の調査に真摯(しんし)に対応することが経営トップとして私に課せられた最後の責務と考えた」と説明しました。
あわせて八木会長は関西経済連合会の副会長を、岩根社長は電力会社でつくる電気事業連合会の会長をそれぞれ辞任することも発表しました。
このほか森中郁雄副社長など金品を受け取っていた4人の役員が辞任を申し入れ、いずれも9日付けで役職を外れ、総務室付きとなりました。
またさらなる調査を行うための第三者委員会について、元検事総長の但木敬一弁護士など4人をメンバーにすることも発表されました。第三者委員会は9日付けで発足し、調査結果についてはことし12月下旬に報告を受け、内容については直ちに公表するとしています。
会長「経営責任を明確にするほうがいいと判断」
八木会長はこれまで否定していた辞任を一転して決めた理由について、「先日の会見の際には今回の問題の責任は経営トップにあり、原因を究明する前に職を投げ出すのは事態を投げ出すものと考えていた。しかし根本原因を徹底的にあぶり出して信頼を回復するためにも社会の声を真摯に受け止め、経営責任を明確にするほうがいいと判断した。また第三者委員会の道筋がある程度たったため、会見をすることにした」と述べました。
そして今回の問題の背景について、「対応する者は金品をもらってはいけないとよくわかっていたうえで、原子力事業に大きな影響があるので受け取らざるをえないという思いでやってきた。個人の判断にゆだねてしまって、会社としてきぜんとして対応するという判断ができなかったことが、大きな問題だったと思っている。そうした判断について第三者委員会でしっかりと検証していただきたいと思う」と述べました。
また八木会長は関西経済連合会の副会長を辞任する理由について、「今回の事態でお客様や社会の皆様に対して会社の信頼を失墜させ多大なご迷惑をおかけしたことと、関西電力として関西財界での活動は逆に迷惑をかけると判断して辞任の申し出をした」と述べました。
社長「会長は退職金全額辞退」
岩根社長は記者会見で八木会長の退職金について「残りの在籍期間に応じて支払う規定があるが、今回、八木会長は全額辞退している」と述べて、退職金を受け取らないことを明らかにしました。
一方、自身の退職金については「私が役員になった時にはすでに退職金の規定が終了していて私の退職金の額は算定されない」と述べました。
また電気事業連合会の会長を辞任する理由について、「関西電力のみならず電気事業全体の信頼を失墜させ、他の電力事業者の原子力事業への不信感も出ている。他電力には申し訳ない」と述べました。
そして岩根社長は国会で参考人招致を求められた場合の対応を問われ、「国会の要請に応じて真摯に対応したい」と述べました。
さらに福井県に使用済み核燃料の「中間貯蔵施設」の候補地を2020年を念頭にできるだけ早く示すとしていることについて経営トップらの辞任も含め今回の問題が影響するか質問されたのに対し、「福井県との約束はいまも生きていると思っている。どのくらい影響が出るかは申し上げられないが、会社を挙げて全力で約束を守るべくがんばっていく」と述べました。
岩根茂樹社長の経歴
関西電力の岩根茂樹社長は66歳。1976年に入社し、総務室や購買室など主に管理系のポストを歴任します。
その後、原発の安全対策を担当する室長や核燃料サイクルの担当役員として原子力事業に携わった経験があります。
2016年6月からは社長を務めています。関西電力では、福島の原発事故のあと原発の稼働が停止し、最終赤字が続いていました。岩根社長は就任からおよそ1年後の2017年に高浜原発3号機と4号機を再稼働させ、業績の改善につなげました。
ことし6月からは、全国の電力会社10社が加盟する電気事業連合会の会長を務めています。
関西電力が去年行った社内調査では、金貨を150万円分受け取ったことが判明しています。
第三者委のメンバーは
関西電力は、第三者委員会のメンバーについて委員長に元検事総長の但木敬一弁護士、2人の委員に元第一東京弁護士会会長の奈良道博弁護士と、元東京地方裁判所の所長、貝阿彌誠弁護士、それに特別顧問に元日本弁護士連合会の会長、久保井一匡弁護士を選んだことを明らかにしました。
第三者委員会は9日付けで発足し、調査結果についてはことし12月下旬に報告を受け、内容については直ちに公表するとしています。
関西電力の岩根社長は第三者委員会の人選について、「中立性、独立性を確保するため、法曹界の著名人の方を選ばせていただいた。今回の問題については、検事出身の方がよいと思い、実績や経歴から但木弁護士が委員長として、最もふさわしいと考えた。そのほかの委員は但木弁護士の選定で、元裁判官、弁護士が就任することになった。関西電力との利害関係がなく、独立した立場の社外の弁護士で、豊富な実務経験に基づき、客観的な調査、検証を徹底して実施していただけると考えている」と述べました。
そして第三者委員会が調査する対象の期間について「前回の調査報告でも事案が歴史的に古くから起こっていて前例踏襲主義ということが原因であるということだったので、歴史をさかのぼってこの根本原因を第三者委員会にしっかりと調査、原因究明していただきたいと考えている」と述べたうえで、「八木と私が辞めることで企業風土が変わるのであれば辞めればいいが、もう少し底深いもの、歴史的なものがあると思っているので、その全貌を徹底的に暴き出すことを行わないと、関西電力が信頼してもらえるように生まれ変われない。過去のしがらみや、うみ、関西電力の組織風土なりを全部出すことしか信頼してもらえる道はなく、これをやることが私の最後の責務だ」と述べました。
さらに森山元助役が顧問を務めていた吉田開発への発注が適切だったとする認識に変わりがないか問われたのに対し、「社内調査の報告書では吉田開発への発注プロセスや発注価格は適正なものと評価されているが、もう一度、第三者委員会で評価されると思っている」と述べました。
4人の役員 役職外れる
関西電力は一連の問題を受けて森中郁雄副社長など金品を受け取っていた4人の役員が辞任を申し入れ、いずれも9日付けで役職を外れ総務室付きとなりました。
このうち4000万円を超える金品を受け取っていた森中郁雄副社長は取締役と副社長の役職から外れました。
このほか690万円相当を受け取っていた右城望常務、1億円を超える金品を受け取っていた鈴木聡常務、720万円相当を受け取っていた大塚茂樹常務もそれぞれ役職から外れました。
全原協会長「憤りを感じる」
関西電力の経営幹部らによる金品受領問題の責任を取って八木会長や岩根社長が辞任する事態になったことについて、全原協=全国原子力発電所所在市町村協議会の会長を務める福井県敦賀市の渕上隆信市長は9日開いた定例の記者会見で「原子力事業に対して国民に不安を抱かせるもので憤りを感じている」と話しました。
そのうえで、「立地地域の信頼を損なう問題で関西電力には今回の問題の責任を痛感してもらい、しっかりと調査を行ってもらいたい」と話しました。