石川県輪島市に住む下善裕さん(59)は、西保地区にある集落の1つ、小池町で父親の代から50年以上続く民宿を経営しています。
ことし1月の能登半島地震で被害を受け営業再開に向けて復旧作業などを進めていましたが、9月の豪雨で建物に大量の土砂が流れ込みました。
さらに、周辺の道路や輪島市中心部とつながる県道は通行できない状況が続いているため狭い林道を車で進む必要があり、集落の行き来に時間がかかっています。
本格的な雪のシーズンを迎え、今後、雪が積もるとさらに行き来が難しくなることも予想され、下さんは生活再建の遅れを懸念しています。
下さんは「豪雨災害のあとは民宿の片づけを進めることができていない。雪の時期となりましたが、今後、除雪ができずに積もった雪で建物が壊れたり田畑が荒れたりすることへの不安も感じています」と話していました。
輪島市西保地区には小池町を含む7つの集落があり、石川県は地区につながる県道の復旧作業を進めていて、今月25日から地元の住民や緊急車両に限定して通行を再開するとしています。
これによって県道を使った6つの集落への車の行き来が可能になるということですが、小池町だけは県道が通行できない状態が続くため、石川県は今後も復旧作業を続けることにしています。
生活再建への支援望む声
石川県によりますと、9月の豪雨災害で輪島市で2つの地域の6世帯、珠洲市で4つの地域の19世帯のあわせて6つの地域の25世帯が被災者生活再建支援法に基づき「長期避難世帯」に認定されています。
「長期避難世帯」は、道路の寸断で電気や水道などの復旧が難しかったり土砂災害の対策工事に時間がかかったりするなど、少なくとも2年以上自宅に戻ることが難しく避難を続けなければならない状況だと認定され、生活再建の支援金として最大300万円が支給されます。
元日の能登半島地震でも輪島市や珠洲市、能登町など6つの市と町の19の地域のあわせて206世帯が「長期避難世帯」に認定されています。
一方で現在行き来が難しくなっている輪島市の西保地区では「長期避難世帯」に認定された世帯はなく、生活再建への支援を望む声も出ています。
全国からボランティア 支援続く
石川県輪島市では、社会福祉協議会が窓口となって全国からボランティアを受け入れていて、21日も石川県内だけでなく福井県や兵庫県などからおよそ130人が活動に参加しました。
ボランティアのメンバーははじめに社会福祉協議会の担当者から説明をうけたあと、グループごとにわかれて市内にある浸水した住宅や倉庫など向かいました。
このうち、輪島市小伊勢町にある70代の男性の住宅では、近くを流れる川の氾濫でおよそ1メートル30センチの高さまで水につかりましたが、1人暮らしであるため片づけなどの作業が進んでいませんでした。
21日は6人のボランティアが住宅の床や壁に残った泥をぞうきんなどで拭き取ったり屋根のかわらを運び出したりしました。
ボランティアに参加した金沢市の30代男性は「被災地では復旧や復興が進んでいないと感じます。今後も定期的にボランティアに参加し被災者を支援していきたい」と話していました。
支援を受けた70代の男性は「ボランティアの方が掃除や片づけをしてくれて本当にありがたいです」と話していました。
輪島市の社会福祉協議会では、年内は今月27日までボランティアを受け入れる予定で、引き続き被災者の生活再建に向けた支援を続けたいとしています。