翻訳: Takahiro Shimpo 校正: Akiko Hicks
翻訳: Takahiro Shimpo 校正: Akiko Hicks
教育とは
僕たちはなんで
子供たちに教育するんですかね
例えば こう言い換えることもできます
僕たちはなんのために 教育を受けてきたのか
僕はこう考えてます
教育は
未来を生きる力を養うためにあると
例えば将来どういう風な社会が
おこり得るのか どんな能力が
世の中に出た時に必要になるのか そんなことを考えながら
教育してくのが基本的な考えだと思います
ほんの半世紀ほど前は
子供達が小さいころから 大きくなるまでの間に
世の中が必要とする能力には
そんなに大きな変化はありませんでした
農家の子は農家になったり
商人の子は商人になったり
子供達の目の前にいる 大人たちの暮らしがそのまま
自分たちの将来として 未来に広がっていました
しかし現在
テクノロジーの進化は 目まぐるしいものがあります
一説には
僕らの子供達 2011年に小学校に入学した子供達が
大人になる頃までには
65%以上の仕事が
今はない仕事にとってかわる
という研究発表があるほどです
そんな中で
今 教育のことを考えたときに
50年間
教育の内容ってほとんど変わっていません
なぜなんでしょうか
このままでいいんでしょうか
未来と教育
今日はこの2つのキーワードを使って
これから必要な教育について 皆さんと一緒に考えたいと思います
未来と聞いてみなさんは
どんな世界をイメージされますかね?
僕が真っ先に思い描くのは この人です
シルエットクイズです
てのは冗談で 実は著作権の 関係でシルエットになっちゃった
さあ 誰でしょう?
アルクマくん じゃないですよ
ふなっしーでもないですよ
ドラえもんです
彼が生まれたのは 今からちょうど
100年ぐらい後の 2112年ですね
四次元ポケットから
ひみつ道具を次から次に 出してわくわくした
子供時代というのは僕もあって
皆さんも多分そうだったと思うんですけど
今日はですね 実は
四次元ポケットを持ってきました
(拍手)
ありがとうございます
子供と一緒に作ったんですけど
どんなものが入っているか ちゃんと ひみつ道具も入ってるんですよ
じゃん パパパパッパパーというんですよ
これ 糸なし糸電話っていう ひみつ道具です
なんとですね 糸がないのに 遠く離れてる人と
電話することができるっていう
これ 携帯電話ですよね
こんなのがあったんです ドラえもんの中に
もうひとつ
トレースバッチ
これはですね
体に付けたり物に付けると それが
世界中のどこにいても 専用レーダーで場所がわかるという
優れた秘密道具なんですよ
これGPSですよね
いやでも 今も
こうやって僕らの目の前にですね
当時 夢見ていた ひみつ道具っていうのが
どんどんどんどん
完成し始めてるんですよ
もちろんまだまだ できていない物はたくさんありますけどね
そうやってテクノロジーの 進化が僕らにもたらしてるものは
暮らしの変化だったり
仕事のあり方の変化
というふうなことが起きています
例えば わかりやすい例で言うと
駅の改札口
それから銀行の ATM
僕が小さいころって言えば 駅の改札口にいたおじさんが
パチパチパチパチやってたんですけど
今 よっぽど田舎行かないと 見れないですよね
ATM は僕が銀行口座を 持つようになってからは
だいたい ATM だったんですけど
昔はね お姉さんとかが やっていたと思います
最近研究が続けられている 自動車の自動運転技術
これがもし 完成すれば
たぶんバスや
タクシードライバーの運転というのは
ほとんど 要らなくなるんじゃないか っていう風に言われています
まあこうやって テクノロジーの進化が
新しく仕事を変えていくっていうことは
実は過去にもたくさんあってですね
今からちょうど200年前の 18世紀に起きた産業革命の時代
人々の仕事のあり方というのもというのがね 開発されたんですよ
蒸気機関というのがね 開発されたんですよ
蒸気機関の発達で
人々の仕事のあり方というのが 大きく変わってですね
例えば馬が要らなくなって
重労働も要らなくなって
もっともっと効率的に いろんなことが 開発できる様になってきました
私たちが 今生きている現在は
情報革命の時代といわれてます
情報革命も産業革命と同じで
コンピューターテクノロジーを 使うことを覚えた人達が
今まででは考えられない スピードで世の中を刷新する
サービスを作り続けています
例えば
例えば Google とかね
Facebook それから Twitter YouTube
最近出てきたこういうサービスは
今まで
10年かかってたことを たったの1年でやっちゃうくらいの
インパクトがあって
ものすごいスピードで進化をとげています
多分 ここにいる若い人達や 多くの若い人が
これらのサービスを 1つも使ったことがないという人は
いないんじゃないんでしょうかね
こういうテクノロジーの進化が 仕事を変えていく
ということの分かりやすい例が 1つあるので
皆さんにご紹介したいと思います
これは 新聞の記事を
自動的に作成する 人工知能プログラムです
『ナラティブ・サイエンス』 という名前です
アメリカの大手の経済誌の 『フォーブス』は
もう今から 数年前から この人工知能プログラムを使って
経済ニュースを
自動的にウエブサイトに アップロードするのを始めてます
コンピューターのすごいところは
人間だったら不可能といわれる 膨大なデータを
24時間 365日 常に監視することが得意なんですよね
例えば 株価
株価の情報で言えば 高値更新した
こういったことが起きたときに コンピュータだったら 瞬時にそれを
ニュース記事にして webサイトに アップロードすることができます
面白いのは
このテクノロジーで 一番喜んでいるのは 実は記者なんですよね
何でか?
今までつまんないと 思っていた仕事 全部
人工知能がやってくれるわけですよ
そのかわり自分たちは より クリエイティブな面白い仕事だけに
没入できるという
これが 1つの例にしか過ぎないですけど 僕は テクノロジーの
理想的なあり方じゃないかな っていうふうに考えてます
さあ 未来はそうやってね
次から次へと テクノロジーが生まれて 変わって
仕事や暮らしのあり方が 変わってきます
なのに教育は変わっていかない
じゃあこれから 未来の教育は どうしたらいいかってことを
皆さんと一緒に考えたいと思います
ところで 僕
ゲームクリエイターなんですけど
ゲームクリエイターが
教育の話をするというのは ちょっとおかしな話ですよね
しかも顔がこんな真っ黒なんで
ゲームクリエーターっぽくない 感じもするんですけど
実はですね 僕は
もうゲーム業界 20年ぐらいいるんですけど
もう ゲーム業界に入った時から 教育にはずっと興味がありました
最初に僕 作ったゲームは 『免許を取ろう』というゲームなんですけど
教習所に通って勉強してるときに
ものすごいつまんなくてですね 眠くなっちゃって
これ なんかもっとゲームっぽく 楽しくできないものかなあ?
って思ったところから作ったのが その『免許をとろう』なんですよ
そのあと楽しくダイエットをするゲームとか
楽しく受験勉強するゲームとか
とにかくゲームってものは すごくたくさんノウハウがあるので
それをなんとか 世の中に役立てないかと
ずっと考えてきました
今から6年前に娘が生まれました
その時に
気付いたんですよね
世の中をゲームで良くするっていうのも もちろん やりたいんですけど
今あるものを良くするだけじゃなくて
これから未来のことを考えたときに 確かなことが1つあるとすれば
子供達がいずれ 大人になるってことなんですよね
であれば 教育がもしかしたら 未来をより良くするためには
一番大切なんじゃないかなって 思ったんですよ
そこで「よし じゃ教育で何かやろう」
というふうに考えたのが それがきっかけですね
もう一回 ちょっと話を戻します
まあここでひとつは
ええとですね
ちょっと面白い例を見せたいと 思うんですけど
今 普通教育で
一般的にはテスト っていうものが導入されてますよね
皆さんも 受験勉強とか された方いると思うんですけど
何でテストするかって言ったら
テストで その人がどれだけの 能力を持っているか測るのが
一番簡単で分かりやすいからですよね
でも考えてください
膨大なデータの中から 正しい答えを導き出すのは
コンピュータが最も得意と するところなんですよ
例えばですね これは
IBM社が開発した
『ワトソン』ていう 人工知能プログラムなんですけど
アメリカの人気クイズ番組の 『ジェバディ!』っていうのがあるんですけど
それで過去最高の連勝記録を持ってる
チャンピオンを負かしちゃったんですよ
例えばこんな問題です
ぱっと見て
すぐに瞬間的に判断するのは 難しいような抽象的な問題が
出るようなクイズ番組なんですよね
それをですね ものすごい 文章解析アルゴリズムを使って
瞬時に
把握するわけですよ
膨大なデータベースの中から 正しい答えを
チャンピオンよりも 次から次へと早く
答えを出して 圧倒的な点数差で 勝っちゃったんですよ
この例からも分かるように コンピュータっていうのは
人間よりも 必ず 学習アルゴリズムが進化すれば
データを覚えて答えを示すというのは
得意なところなんですね
ちなみにこの答えは分かりますかね TEDxです
すごいですね こんだけ いろんなところで行われていて
ちなみにですね
チェスの世界 頭脳戦の世界でも 1997年に
『ディープブルー』っていう 人工知能プログラムが
人間のチャンピオンを 負かしちゃったんですよ
もう チェスの世界では今 チャンピオンは人間じゃないんです
コンピューターです
そして これから多分 テストというものの価値が
どんどん下がっていくと思います
テストでいい点をとるということが 人間の評価でなくなって来ると思います
その例が1つあります
今 Googleでは
学歴 成績問わず
というふうに打ち出しています 採用に関して
そして人事採用者も
学校の成績 テストの点数は その人の潜在能力を測るうえで
何の参考にもならない
という風に言っています
これが今の
実際の
社会が求めているスキルなんです
じゃあ これからどうしたらいいのか
僕たちはどういうふうに 子供達を教育していけばいいのか
それは人間にしかできないことを 伸ばせばいいんです
得意を活かす
例えば 芸術的なセンスや
人を感動させるような力に代表される 想像力ですよね
想像するという力は人間だけに与えられた 特別な力です
コンピュータはこれはできません
今の段階ではね
想像するっていうのは
テスト勉強をやるように どんどん積み重ねるものじゃないんですよ
感覚や五感 そういったものを使いながら
どんどんどんどん 想像力っていうのは
ある環境の中でしか 養えないものなんです
たとえば今 インターネットで たくさんの情報があります
本屋に行っても たくさんのハウツー本 マニュアル本がありますよね
子供の病気ひとつとっても
目の前に子供が病気でいるのに
その顔色とか息づかいとか匂いとかを まったく無視して
インターネットの情報で なんとか病気に対応しようとする
大人が増えてるんですよ
これだと感覚は
どんどんどんどん 鈍ってきますよね
僕は長野に来てから
よく山に行ったり キャンプに行ったり
自然体験を すごくするようになってきたんですけど
まあそれで 顔が こんなに黒くなっちゃったんですけど
キャンプに行くとですね 最近多くの人が
火を起こせないし かまどでご飯が炊けないんですよね
まぁ別に それは初めてだから いいんですよ
でもそうやって 初めてのことを 頭で考えても分かるわけないんですよ
だから僕は 触ったり 音を聞いたり 匂いを嗅いだりすれば
中が想像できるから そうすればいいのに
感覚を使って 五感をフルに使ってよ と思うんですよ
でも 若い人はどうするか
スマートフォンで調べるんですよ
「かまどでのごはんの炊き方」
いや別に 情報集めるのはいいんですよ
情報集めるのはいいんですけど
それやってたら 感覚が どんどん鈍ってくるし
最終的には
「わたしの夢は」って Googleに聞くようになったり
Amazonからリコメンドで 「あなたにふさわしい奥さんです」
なんて言われるように なっちゃうわけですよ
それじゃあ 主従逆転してるんで
あくまでも主は人間で 想像力を使って
コンピュータテクノロジーを 使ってかなきゃ だめなんですよ
というふうに 常々考えてます
ちょっと紹介したいのが あるんですけど これが
あの 私の娘が
手前味噌なんですけど 通っている幼稚園です
長野にあります
僕 長野に東京から 移住してきたんですけど
この幼稚園に通わせたいってのも 半分ぐらいの理由としてありました
ここでは3歳から6歳までの 子供達が
1つの家族のように
野山を駆け巡って 日々暮らしてます
薪を割ったり 薪運んだり
かまどで火を起こしたり
木に登ったり 五感をフルに使って
毎日そういう風な 暮らしをしています
例えば
子供達って テレビとかゲームとか
キャラクターみたいなもんですね
そういうのに ものすごく反応するんですよ
でもそういうものを与えすぎちゃうと
子供の想像力っていうのも
どんどん鈍らせちゃうんじゃないかな って思ってます
うちは 数年前から テレビは見ないようにしてるんですけど
子供達って
退屈な時間があると どうなるかっていうと
自分の世界を 想像し出すんですよね
退屈は想像の入り口という 言葉があるんですけど
やっぱり子供っていうのは
あまりにも情報を与えすぎると 想像力が思考停止しちゃうんですよ
こういう自然の中で
本当に自由にさせると
次から次へと 内面の世界を自分で発掘して
想像力というのは たくましくなっていくものじゃないかな
って思ってます
そして 想像っていうのをやって
その後ですね
自分自身が想像っていうのを 十分に味わって
ファンタジーの世界を 味わった後
これ だいたい 10歳ぐらいだと思うんですよ
多くの教育学者が 10歳までで 内面のファンタジーの世界は
終わるっていうふうに 言ってるんですけど
この10歳までは
僕は十分な 自然体験をやって欲しいと思います
10歳から後ですね
これ コンピュータの生みの親である アラン・ケイっていう方なんですけど
この方も 10歳は とても大事な年齢だと言っています
10歳に体験したことが
10年後大人になって 開花するとも言っています
僕が 初めてコンピューターに出会って ゲームを作り始めたのが
実は小学校4年生の ちょうど10歳の時でした
ここの目の前にあるこのパソコンは
その当時 僕が使っていたパソコンです
そうやって
自分たちの 10歳
今までの 自然体験や 想像力を使って
その後 なんですよね 何を学んでいくのか
私が是非 子供達に 勧めたいなと思っているのは
最新の未来に備えた テクノロジー教育です
例えばゲーム開発だったり 電子工作
これはあの
私たちが 僕たちが取り組んでいる
未来工作ゼミっていう
ゲーム開発 電子工作をする ワークショップです
先日
小布施の浄光寺で 開催させてもらいました
このときは
マサチューセッツ工科大学が作った
Scratch(スクラッチ)っていう
ゲーム開発ツールがあるんですけど
それを使って
子供達に ゲーム開発を体験してもらいました
プログラミングというと すごく難しいものと
大人は考えるんですけど
ものすごい
シンプルなブロックを ただ組み合わせるだけなんですよね
プログラムのロジックというのは そんなに難しいものではなくて
ちょっとやれば 30分ぐらいあれば
子供達はすぐに反応して
自分のアイデアを どんどんカタチにしてきました
僕らが一番やりたいのは
ゲームプログラムを 作りたいわけじゃないんですよ
プログラミングを 勉強して欲しいわけでも
まあ プログラミングは やって欲しいんですけど
プログラマーになって欲しい わけでもないんですよ
こういったことを 取り組むことによって
自分のアイデアを 形にする力っていうのを
養って欲しいんですよ
今インターネットがある おかげで
自分のアイデアを 世界に発表するのは
簡単になってきてますよね
こういうコンピューター プログラムを学べば
自分のアイデアを形にして
より具体的に 世の中に 提案できるようになります
そういった力を子供達には
ぜひ身につけて欲しいなって いうふうに考えています
でも ここで気をつけなきゃ いけないのが
さっきも申し上げたように
テクノロジーっていうのを 先に持ってきてはダメなんですよね
いま早期教育で次から次へと
できるだけ早いうちに
子供達に教えようっていう 流れがあると思うんですけど
あるいは逆にそういった流れに ちょっと疑問を感じている人も
最近は出てきていると 思うんですけど
テクノロジーは 僕は
ある程度 自分の内面性が確立した人に
与えるべきだと思います
それができてない人に与えると
さっきも言ったように 感覚を無視して
知識に頼るような 人間になってしまうんですよ
このバランスが重要です
感覚と想像力を養うための 自然体験
そして 未来に備えた
テクノロジーの 最新的な 最新のテクノロジーの教育
この2つのバランスを
理想的な形で提供していくのが 僕は
これから未来に あるべき教育の形だと思っています
そして 長野
自然が豊ですよね これだけ自然が豊かな長野で
しかも もともと教育県
今もポテンシャル 相当高いと思います
だから 長野だからこそ こういう未来の
教育のチャレンジというのは 僕は
適しているんじゃないかなって 考えています
最後になりますが
20年後の未来について もう一度 最後に考えたいと思います
僕の教育学はあくまでも僕の 考えなんで これが
本当に正しいかどうかっていうのは
未来を見てみないと 分かんないです
でも 確実に確かなことが言えるとすれば 僕らの子供達は
僕らの想像できない未来に
これから生きていくことになります
だから僕ら大人が
子供達のために もし できることがあるんだとすれば
未来に本当に必要な教育を
考え続ける
ということなんじゃないでしょうか
今日は ありがとうございました
(拍手)
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