翻訳: Yasushi Aoki 校正: Yuriko Hida
翻訳: Yasushi Aoki 校正: Yuriko Hida
皆さん始めまして 堀江と申します よろしくお願いします
(拍手)
いいなあ このステージいいですね
なんか 今まで体験したことのない いい感じのステージです
あの TEDっていうイベント
僕なんかいない間に 日本でも結構メジャーになって(笑)
こう なんかニュースだけで 聞いてたんですけど
まさか自分がこんなところで話すことになるとは 思わなかったんですけど
実は 北海道にゆかりのある話ってことで ちょっと考えていて
やっぱり まあ北海道と言えば 宇宙だろう、と
いや、たぶん皆さん そう思ってないかもしれないですけど
私にとって北海道はだいたい
ゴルフしに来るか 宇宙か どっちかなんですよ
で あの 僕 ずっとロケット作りたくて
ロケット作りたいというか 宇宙に皆さんが—
ここにちょっと 書いてあるとおり
宇宙は誰にでも当たり前に 行ける場所になるべきである
という風に 私は思ってまして
それをやるために どうしたらいいのかってのを
10年ぐらい前から 結構模索をしていて
きっかけは あれなんです 2000年ぐらいの—
旧ソ連の宇宙ステーション ミールっていうのが
もうメンテナンスの費用が
ソ連崩壊して 出なくなっちゃったんで
もう廃棄するしかない
ちょっと老朽化して廃棄するしかない っていうようなことがあって
買ってくれる人いないかってことで 20億円で売りに出てたんです
「おおっ 20億か!」みたいな
ちょうど私が経営していた会社が 上場するかしないかぐらいの頃で
ちょっと20億は難しくて
さらにメンテナンス費用が 年間20億(笑)
まあ結構キツいなということで ちょっと断念したんですけど
割とこう、宇宙が身近に感じられた 瞬間だったんですよね
それまで宇宙開発というと 国家が主導して
莫大なお金をかけて
本当に国家の年間予算の何割か使って
アポロは例えば月に行ったりとか—
でも あれでしょ
皆さんアポロが月に行ったって 思ってないんですよね?(笑)
なんか最近アンケート取ると
なんか3割とか4割 「行ったことがない」とかっていう風に聞いて
ちょっと僕 愕然としちゃうんですけど
そういう人には 『フロム・ジ・アース・トゥ・ザ・ムーン』ていう
トム・ハンクスさんがアメリカで テレビドラマシリーズを作られているんで
全7巻セットかな DVDセットで今でも売られているんで
ぜひそれを ご覧になってください
アポロは月行ってますから はい (笑)
それをまあ 私はですね
そういう ものすごい予算をかけて やっていた宇宙開発っていうのが
なんか20億って結構 手が届きそうな額だなって
僕ら民間企業でも なんか出来そうじゃないかっていう風に
思えた瞬間だったんです
それから何年間か 会社ちょっと忙しかったんですけど
ある程度余裕ができて
自分も株を売って ある程度の資金ができたんで
ああ これもう やってみようかと
なんで宇宙がこんな 身近じゃないんだってことは何かって
僕はさっき言ったお金の問題だと 思ってるんですよね
宇宙飛行士って今まで500人 あまりしかいないんですよ
で 世界で一番最初に宇宙に— ごめんなさい
日本人で初めて宇宙に行った人 誰かご存知の方いらっしゃいますか?
(観客: 秋山さん) 秋山さん そうですね
そうです なんか僕の講演とか聞いている人は すぐ分かると思うんですけど
だいたい皆さん おっしゃるのがですね
JAXAの方から宇宙に行った— 誰さんでしたっけ?
そう毛利さん ごめんなさい 毛利さんの名前忘れてました
毛利さんじゃなくて TBSの秋山さんって人が
ロシアのソユーズ宇宙船で 初めて宇宙に行ったんです
そん時ね TBSがロシアに払った金が 15億円ぐらいだったそうです
それが今 いくらかというと
ソユーズ宇宙船の1人当たりの打ち上げ費用は 今 $70 mil (約70億円)越えていると
なぜか分かりますか?
スペースシャトルが 終わったからです
スペースシャトルが終わって
アメリカが宇宙に 人間を送る手段を失ってしまったので
どんどん値段が 高騰しちゃって
ソユーズの有人版って たぶん 年にね
2、3機しか打ち上げられないと 思うんですよね
今Googleの創業者のセルゲイ・プリンが 個人的に資金を供給して
有人宇宙船の生産ライン 増やそうとしています
市場原理って 面白いもんで
ロシアしか今 作れないわけです
まあもちろん中国も 最近作り出しましたけど
有人宇宙船を商業打ち上げ できるほどの信頼度をもって
できている国って ロシアしかなくて
その単一企業が やっているから
生産ラインを 増やさなければ
ニーズがどんどん多くなればなるほど 値段ってのも当然高騰していくわけです
だから高いままなんです
競争がないから コストが下がらない
もちろん特殊な技術を いっぱい使っているっていうのもあります
ロシアの場合は ソユーズ宇宙船設計したのは 1960年代
もうすごい古い
アポロがアメリカの 月に行く計画だとしたら
ソユーズっていうのは ソ連が計画した
月に行くための宇宙船っていう ものだったんです
なので ちょっと古い技術が 使われている
古い特殊な技術が使われていることも コストダウン 競争を疎外している
なので僕らはコストダウンを しなきゃいけない
僕らのテーマって何かっていうと 世界一 ローテクなロケットを製造しようと
宇宙に行きさえすればいいと
宇宙に行きさえすればいい
どっか目的地に行きたいと思ったら
その目的地に行くための手段で 一番ローコストの手段があればいい
だから特殊な部品は 一切使わない
汎用品 もう出来ればほんとに ホームセンターに売ってるような部品で作りたい
そして これ大事なとこなんだけども 加工が容易であると
すごい特殊な職人さんが こんなもう なんかすごい職人技で
できなきゃ いけないような仕事っていうのは もう一切使わない
だいたいね「もの作り日本」 みたいな話になると
職人さんの技が 必要だとかですね
それを磨くとかって 話になるんですけど
基本的には そういうのは もう一切使わない、と
ちょうど来月の 8月10日に 高度 5 kmぐらい
実はこれ たぶん見られた方 いらっしゃると思うんですけど
僕 あの出所してですね
ちょっと別の場所に居てですね 出所して 2日目ぐらいに
北海道の大樹町っていう所で 打ち上げ実験やってるんですけど
まあ ものの見事に 爆発してしまいましてですね
その映像が たぶん全国ネットで—
もうなんかね テレビ局の人が 喜んでる顔が もう目に浮かんだ
(笑)
チキショーッて思ってました 僕 ほんと
まあ それのリベンジ打ち上げをですね
8月の10日に北海道の 大樹町で行います
今 現状 姿勢制御—
姿勢制御って何かっていうと ロケットって空気がないところで飛びます
例えば空を飛ぶ乗り物で言えば 飛行機があります
飛行機って姿勢制御 例えば方向舵
まあエレベーターとか 方向舵とか エルロンとか
そういうので3軸の 制御をやるんですけれども
そういったものは そういう方向舵みたいな
翼とかエルロンみたいな 空力の制御っていうのは出来ないんで
どうやってやるかっていうと
エンジンの推進の方向を変えたり
こういうのジンバル制御って 言うんですけど
であったりとか パルスジェットみたいなものを 吹き出してロール制御をしたりとか
そういったことを やるんです
空気がないところで どこをロケットが向いているのかっていうのを
リアルタイムに解析しながら 姿勢制御をする
これ結構難しい技術なんです
こういうのに 例えばGPSであったり 加速度センサであったり
そういったものを使います
ただし これも我々ローコストな ロケットを考えてますんで
民生品で安い物を 使わなければいけない
汎用品を使わなければいけない ということで結構苦労しています
なぜかっていうと 例えばGPSだと
加速度のキャップみたいなものが 決められていて
何のためにそんなものが入っているかっていうと 軍事転用を防ぐためですね
例えば 日本で結構高性能な GPSの受信機っていうのが
ほんとスマートフォン向けであったりとか 車載向けであったりとか
いろんなところで 使われているんですけど
これが例えば その辺で買えますよね
それを万景峰号で 北朝鮮持ってったら
そのままロケットの 姿勢制御に使えちゃいますんで
そういったものには 使わせられないということで
ソフトウェアのプロテクトみたいなのが 入ってたりとかするんですね
そういうのを外してもらったりとか いろんなことをしなければいけない
加速度センサとかも同様
あとは大事なジャイロっていうのが あるんですけど
ジャイロってのも 政府がやってるような
JAXAがやってるようなロケットに入っている ジャイロっていうのは
レーザージャイロって言って
レーザーで自分がどこを向いてんのか
どこに向かってんのか 検出するセンサなんですけど
これも高くて 1セット百万ぐらいするんですね
ロケットって 冗長化って言って
1個壊れても 大丈夫なように
3つ積んでたりとか 5個積んでたりとかするんですけど
レーザーのジャイロ 5個積むだけで5百万円
まあ JAXAのロケットとかからすれば 大したことないんでしょうけど
まあそういったものも 必要である、と
ただ僕らは レーザージャイロ使えないんで
MEMSって言って 半導体のジャイロを 使ったりとかするんですけど
これがまたドリフトって言って
誤差があって どんどん どんどん ズレていっちゃう
よく昔のカーナビなんかで
走ってたら なんか海の上いつの間にか走ってたー
みたいな話ありましたけど あれですよね
ああいうようなことってのが 起ってくると
ドリフトしないように いろいろソフトウェアの方で 何かやらなきゃいけないとか
そういったことやってる
もうひとつ「再生冷却」って ちょっと よく分かんないかも知れないんですけど
ロケットエンジンって燃焼室が 何千度
4千度とかっていう
だいたいの金属 ほとんどの金属
金属全部溶けちゃいますね 4千度とかになると
なので冷やさなきゃ いけないんです
冷やすためには 水であったりとか 空冷であったり
まあでも 空気ないんで 空冷はできません
だから液冷ってことに なるんですけど
それもですね ロケットって 結構重さってのが すごくシビアに出てきますんで
自分たちの推進剤 燃料を使って 冷却をする「再生冷却」
「リジェネレーティブ・クーリング」 っていうのが普通なんです
これがまた難しいんです
簡単に言うと 車のラジエーター分かりますよね
車のラジエーターをエンジンの燃焼室の周りに 巻いてるみたいな状況で
例えば ラジエーターって すごい細かい管が グニュグニュ グニュグニュってなってんですけど
あれ職人技で蝋付けしたりとかして 大変なんです
だから すごい高いんですけど
これ今 3Dプリンタで 作ろうとしている
あの話題の3Dプリンタです
3Dプリンタで 鋳物の型を作って
そこに金属流し込んで 大量生産できるようにするような技術
こういうのが出てきたことって 我々にとってはすごく—
前向きというか 追い風なんですね
これ例えば どういった所に 今使われている技術かっていうと
ハイブリッドエンジンの車なんか モーター積んでますよね
モーターも熱くなるんで モーターケースっていうのは
この3Dプリンタを使った鋳物の技術で 作られていたりとかします
中の複雑な 冷却のための 管の形状なんかを
鋳物で作って 大量生産をしている、と
その技術はそのまま ロケットエンジンに使えるだろうなとか
そういった新しい技術も 我々取り込んでやっています
次 行きますね
っていうことで ちょっと話 飛ぶんですけど
我々あの 2013年秋、冬 そして 2014年 また打ち上げ実験をして
2014年中には 高度 100 kmを越えると
高度 100 kmっていうのは 何かっていうと
100 km以上行くと 一応世界的・国際的にも 宇宙であるという風に認識されています
で これだけじゃ 駄目なんですよね
皆さんご存知の あの国際宇宙ステーションとか そういった通信衛星とか
そういうのが飛んでいる高度っていうのは 高度 300 kmか 400 kmぐらいのところで
しかも地球に落ちないでグルグル グルグル回らなきゃいけない
そのためには「第一宇宙速度」って ものすごい速度を出さなきゃいけないんですけど
それには まだまだハードルが高いんですけども 我々はそれを目指していると
で 1回の打ち上げを まあ十万ドル台にしたい
これって たぶんロケット関係者聞いたら 「嘘やろ?」みたいな話なんですけど
それを本気で実現すると
ロケットといえども 工業製品であることは間違いないんで
大量生産して 市場原理が働ければ—
絶対にコストってのは下がるはずである という風に我々は信じてやってる
この信じてやるっていうのは すごく大事なことで
日本の例えば 車のメーカー
ホンダなんかが 日本で車を作り始めた頃って
たぶん そういうことを 考えていたわけです
海外の車のメーカーって ものすごく高い金額で車を出していた
だから車は普及しなかった
なんで車が普及したのかって言うと 安くなったから普及したんです
誰でも買えるようになったから 普及したんです
これはロケットも 同じだと思います
次行きます
まあ ということで 次の夢っていうことになっているんですけど
有人宇宙飛行っていうのを
$1 mil (約1億円)以下で実現したいと
今 $70 mil (約70億円)かかっています
だから2桁下げたい
これぐらいになると 割とたくさんの人たちが
たぶん 今の5百人とかじゃなくて 桁がたぶん2つぐらい上がって
5万人 10万人が 宇宙に行けるようになる
そうすると もっと安く作るための技術ってのが 出てくるかもしれません
僕ね 一番大事なこと何かって 安くしてみんなが使うようになって
そこで面白いもんが出てくると 思っているんです 宇宙も
というは私 今まで ITの仕事してたんです
今 皆さんスマートフォン 使われてますよね
スマートフォンで 今皆さんが使っている スピードっていうのは
通信速度って言うのは 僕が初めてインターネット使ったときの何百万倍
何千万倍かもしれないですね
という速度で使えるようになって それも常時接続で使えるようになって
もう「常時接続」なんて言葉 皆さん全然意識しないかもしれないですけど
たった十年くらい前までは 皆さんあれですよ
ダイアルアップで ピーガラガラガラッてやって 使ってたんですよ (笑)
だけどそうならなくなったからこそ 皆さんが使うようになって
いろんなインターネット上の面白いサービス アプリケーションが出てきて
インターネットが社会のインフラに なったわけですけど
これたぶん 宇宙でも同じことが起こると 私は信じてます
私はとりあえず 僕が今思いつきで 思いついたアイデアなんですけども
小惑星でウランを採掘して 原子力ロケットエンジンを使って
例えば太陽系の 外に行って
映画のアバターに出てきたような星を 探索してみたりとか
そういったことを 考えています
ということで 僕の話は ここまでで終わりなんですけれども
何が大事かって さっきの浅田さんも おっしゃってた通り
失敗を恐れず とりあえず思いついて やりたいことをやる
これが僕 すごい大事なことだと 思います
我々も実は 僕ね2006年から ロケットエンジン作り始めてるんですけど
もう7年ぐらい経ってます
まだ高度5キロ 10キロぐらいしか 行けてないんだけれども
これ絶対僕は 100キロ行って 軌道飛行して 小惑星行って ウラン採掘して
他の恒星系に行けるという風に もう完全に信じちゃってるんですね
それが大事なことかなと 思います
最後に 皆さんに ちょっと時間オーバーしますけど 次のページお願いします
僕らが いかにこれまで失敗してきたかっていうのを 簡単に— (笑)
映像にまとめておりますんで
ご覧になってください(笑)
ちょっと切ない 映像なんですけどね
これはもう4年ぐらい前ですかね
ここの辺までは いいんですけどね
この後ちょっと 悲劇が起こるんですけど
これカシオのEX-F1っていう ハイスピード・・・ (笑)
(笑)
カシオのEX-F1っていう ハイスピードカメラで
今 生産中止になっちゃったんですけど 残念ながら
これがですね 秒間 1,200コマだったけな
っていうハイスピード撮影をやれるカメラが なんと10万円以下で買えるという
ちょうど僕らがロケットエンジンの開発を 始めた頃に発売されて
2006年かな 発売されて
もう生産中止に なっちゃってるんで
僕ら あれですよ ヤフオクとかに出たら即買いです (笑)
これほんと昔は 何百万円もしたんですよ
こうやって どういう風に 燃焼しているのかっていうのを解析しないと
これもちょっと「脈動」って言って あんまりいい状態じゃないんですけど
ああダメですね 飛んでっちゃいましたね これね
まあこうやって どういう風に失敗してるのかってのも 全部記録に取ってですね
これまたねぇ あーあ (笑)
この頃ですね
この先が畑になってて
壊れた部品探し回って 3時間みたいな (笑)
草ぼうぼうで なっかなか見つかんないんですけど
500メートル先とかに 落ちてるんですよね
ああ もう大火事ですね これね かわいそうに (笑)
これ1回飛ぶと 100万円ぐらいなくなるんですよ
ただ まあこうやって 失敗続きですけど
必ず失敗の後には 成功がくるっていうことで
毎回毎回僕らこれで 打ちひしがれるんですけど
打ちひしがれることなく頑張って
ネバー・ギブアップの精神でやるってことが 大事だっていうことです
そのために最後 爆発の動画を見せたんですけど
皆さんも失敗を恐れず 失敗したって作り直せばいいんで
何かにチャレンジなさってください
今日はありがとうございました
(拍手)
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