「危険きけん」な住宅じゅうたくに人ひとが…なぜ？独自どくじ調査ちょうさ 石川いしかわ 珠洲すず 地震じしん1か月かげつ

珠洲すず市内しないだけで657棟むねの住宅じゅうたく被害ひがいが確認かくにんされていますが、経済けいざい的てきな事情じじょうや工事こうじ業者ぎょうしゃが依頼いらいに対応たいおうしきれないなどの理由りゆうから、住宅じゅうたくを修繕しゅうぜんできないまま生活せいかつを続つづけている住民じゅうみんが多おおくいます。

市内しないで建物たてもの被害ひがいが特とくに多おおいのは正院しょういん町まち正院しょういんで、地震じしんの後のちに自治体じちたいが行おこなった建物たてものの応急おうきゅう的てきな調査ちょうさ＝「応急おうきゅう危険きけん度ど判定はんてい」では、納屋なやや倉庫そうこを含ふくむおよそ100棟むねが倒壊とうかいや落下らっか物ぶつなどのおそれがある「危険きけん」と判定はんていされています。

このほか、空き家あきやが3割わり以上いじょうの23棟むねで、住民じゅうみんの公営こうえい住宅じゅうたくや親戚しんせきの家いえへの避難ひなん・転居てんきょが確認かくにんされたケースが3棟むねでした。

「めどが立たっている、または修繕しゅうぜんの必要ひつようがないと考かんがえている」と回答かいとうした割合わりあいが11％でした。

珠洲すず市しでは65歳さい以上いじょうの人ひとの割合わりあいが去年きょねん10月つき時点じてんで52.8％にのぼり、今回こんかいの調査ちょうさで被災ひさいした住宅じゅうたくに残のこっていたのも高齢こうれい者しゃが多おおく、住宅じゅうたくの修繕しゅうぜんや転居てんきょに踏み切ふみきれない理由りゆうの1つと考かんがえられます。

石川いしかわ県けんの能登のと地方ちほうではその後そのごも地震じしんが相次あいついでいて、被災ひさいした住宅じゅうたくの修繕しゅうぜんや住民じゅうみんの生活せいかつをどう支ささえるのかが課題かだいになっています。

業者ぎょうしゃに修繕しゅうぜんを頼たのんでいますが、依頼いらいが殺到さっとうしていて当面とうめん、工事こうじはできないと言いわれています。

足あしが不自由ふじゆうなこともあり、自分じぶんをよく知しる人ひとが周まわりにいる地域ちいきを離はなれることには不安ふあんを感かんじるといいます。

奥おくさんは「今いまの家いえでも寝起ねおきはできるし、何なにかあれば、近所きんじょどうし声ごえもかけられます。ほかの場所ばしょに移うつるのは心こころが落ち着おちつかないので嫌いやです」と話はなしていました。

澤田さわださんには、金沢かなざわ市しで暮くらす娘むすめもいますが、自宅じたくを離はなれることは考かんがえていないといい「再ふたたび地震じしんが来くる怖こわさはありますが、ほかの場所ばしょに行いっても家いえのことが心配しんぱいになるので一緒いっしょだと思おもいます。倒壊とうかいまではしないと思おもうし、悩なやんでも仕方しかたがないです」と話はなしていました。

修繕しゅうぜんを依頼いらいした業者ぎょうしゃからは「次つぎに大おおきな地震じしんが来くれば倒壊とうかいするおそれが大おおきい」と言いわれていますが、工事こうじを開始かいしできるめどはまだ立たっていません。

岡村おかむらさんは「仮設かせつ住宅じゅうたくに移うつれるなら移うつりたい気持きもちもありますが、受験じゅけんを控ひかえた高校生こうこうせいの娘むすめの通学つうがくや、自分じぶんたち夫婦ふうふの仕事しごとのことを考かんがえると環境かんきょうを変かえることは難むずかしい」と話はなしています。

家族かぞくはいつ来くるかわからない地震じしんに備そなえ、比較的ひかくてき新あたらしい、増築ぞうちくされたスペースで生活せいかつを送おくっていますが、業者ぎょうしゃから「工事こうじをしても住宅じゅうたくの安全あんぜん性せいは十分じゅうぶんではない」と言いわれているということです。

岡村おかむらさんは「経済けいざい的てきに家いえを建て直たてなおすことは難むずかしいし、どこまでお金おかねをかけて修繕しゅうぜんすればよいか頭あたまを悩なやませています」と話はなしていました。

珠洲すず市しによりますと、空き家あきやの中なかには、老朽ろうきゅう化かが進すすみ倒壊とうかいの危険きけんなどがあるにもかかわらず、所有しょゆう者しゃと連絡れんらくがついていないものもあるということです。

珠洲すず市しは1950年代ねんだいに3万まん8000人にんを超こえていた人口じんこうが、ことし5月つき時点じてんで1万まん2000人にん台だいにまで落ち込おちこむなど人口じんこう減少げんしょうが続つづき、空き家あきやが急増きゅうぞうしています。

「危険きけん」と判定はんていされた空き家あきやの近ちかくに住すむ男性だんせいは「20年ねん以上いじょう放置ほうちされていた空き家あきやが傾かたむいていて、次つぎに大おおきな地震じしんが来くれば倒壊とうかいしてしまうのではないかと心配しんぱいしています。空き家あきやの前まえを散歩さんぽしているお年寄としよりを見みていても危険きけん性せいを感かんじるので、解体かいたいなどの対応たいおうを早はやくしてほしい」と不安ふあんを語かたっていました。

また、被災ひさいした住宅じゅうたくの解体かいたい・修繕しゅうぜんを行おこなう人ひとの費用ひよう負担ふたんを軽減けいげんする市し独自どくじの支援しえんを検討けんとうしていること、自宅じたくでの生活せいかつが困難こんなんな人ひとたちの長期ちょうき的てきな住すまいを確保かくほするため、国くにと連携れんけいし災害さいがい公営こうえい住宅じゅうたくを整備せいびすることも検討けんとうしていく方針ほうしんを示しめしました。

地域ちいき防災ぼうさいに詳くわしく、7年ねん前まえの熊本くまもと地震じしんで被災ひさい者しゃの生活せいかつ状況じょうきょうなどを調査ちょうさした熊本くまもと県立けんりつ大学だいがくの澤田さわだ道夫みちお教授きょうじゅは、珠洲すず市しの現状げんじょうについて「危険きけん性せいがある住宅じゅうたくで住民じゅうみんが生活せいかつを続つづける状況じょうきょうは熊本くまもと地震じしんの際さいにもあった。地震じしんが継続けいぞくする中なか、被害ひがいを受うけるリスクが高たかいうえ仮設かせつ住宅じゅうたくなどに入居にゅうきょした場合ばあいと比くらべて行政ぎょうせいからの情報じょうほうが届とどきにくく、必要ひつような支援しえんを受うけられない懸念けねんもある」と指摘してきしています。

高齢こうれい者しゃが多おおいことについて澤田さわだ教授きょうじゅは「特とくに高齢こうれい者しゃの場合ばあい、被災ひさいした住宅じゅうたくを再建さいけんしても資金しきん返済へんさいのあてがないとして最初さいしょから諦あきらめてしまうケースがあり、支援しえんの存在そんざいを知しらないままの人ひともいる」としています。

その上うえで「行政ぎょうせいにはわかりやすいことばで支援しえん制度せいどを説明せつめいすることが求もとめられる。例たとえば被災ひさい者しゃが住み慣すみなれた地域ちいきに災害さいがい公営こうえい住宅じゅうたくを整備せいびするなど、個々ここの状況じょうきょうやニーズを踏ふまえた支援しえんを行おこなう必要ひつようがある」としています。

一方いっぽうで、規模きぼの大おおきい災害さいがいで被災ひさい者しゃのニーズに幅広はばひろく対応たいおうするためには、珠洲すず市しの財政ざいせい規模きぼでは難むずかしいことが想定そうていされ、国くにや県けんがより踏み込ふみこんだ形かたちでサポートしていくことが必要ひつようだと話はなしています。