アメリカの
製薬会社、ノババックスが
開発した
新型コロナウイルスワクチンは、「
組み換えたんぱくワクチン」という
種類です。
遺伝子組み換え技術を使って、ウイルスの表面にある突起で、抗体が攻撃する際の目印となる「スパイクたんぱく質」を人工的に作り出して接種します。
これまで日本国内で使われているファイザーやモデルナの「mRNAワクチン」とアストラゼネカの「ウイルスベクターワクチン」では、遺伝情報を伝達する物質や遺伝子を投与して体内で新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質ができるようにして抗体を作るようにしていましたが、ノババックスのワクチンは、人工的に作ったスパイクたんぱく質そのものを投与することで、免疫の反応を引き起こします。
この技術を使ったワクチンは、すでに「帯状ほう疹」や「B型肝炎」などのワクチンで実用化されていて、広く接種が行われています。
2021年12月15日にノババックスやアメリカの大学などのグループが医学雑誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表したデータによりますと、アメリカとメキシコで2020年12月から2021年2月までに18歳以上のおよそ3万人を対象に行われた臨床試験で、3週間あけて2回接種を受けたあとでは、発症を予防する効果が90.4%、中等症や重症を防ぐ効果は100%だったということです。
当時は、変異ウイルスのアルファ株やベータ株などが多くみられましたが、こうした変異ウイルスに対する発症予防効果は92.6%だったとしています。
副反応について、痛みなど接種した部位になんらかの症状が出た人は、1回目の接種後に58.0%、2回目の接種後には78.9%、接種した部位以外に何らかの症状が出た人は1回目の接種後に47.7%、2回目の接種後に69.5%となっていて、けん怠感が1回目の接種後に25.6%、2回目の接種後に49.5%、頭痛が1回目の接種後に24.9%、2回目の接種後に44.5%、筋肉痛が1回目の接種後に22.7%、2回目の接種後に48.1%、発熱が1回目の接種後に0.4%、2回目の接種後に5.7%、などとなっています。
いずれも1日から2日程度でおさまることが多く、ほかの新型コロナのワクチンで報告される副反応よりも頻度は低く、心筋炎や血栓症の増加は確認されなかったとしています。
また、イギリスで18歳以上のおよそ1万5000人を対象に2020年秋に行われた臨床試験では、発症を防ぐ効果は89.7%で、ノババックスは接種から6か月たった時点でも、全体的な有効性は82.7%だったとしています。
ノババックスによりますと、このワクチンは、欧州委員会やイギリスの規制当局などから条件付きの販売承認を得ているというとです。
一方、アメリカでは、2022年1月31日にFDA=アメリカ食品医薬品局に緊急使用の許可を申請したと発表しましたが、これまでに許可は出されていません。
日本で承認された場合、国内では武田薬品工業が山口県の工場で製造し、流通を担うことになっています。
接種の間隔は 保管の方法は
ノババックスが
開発したワクチンは、
去年12
月、2
回の
接種の
ほか、3
回目の
追加接種で
使うことも
合わせて
申請されました。
当時、ノババックスのワクチンの3回目接種については海外での承認事例がなかったことなどから、厚生労働省は審査の手続きを大幅に簡略化する「特例承認」ではなく、通常の手続きで審査を行いました。
専門家部会では、1回目から3週間空けて2回目を接種し、さらに6か月以上たてば3回目の接種を可能とすることが了承されました。
南アフリカで行われた治験では、感染を防ぐ中和抗体の値を2回目接種の180日後と3回目の35日後で比べたところ53倍に上昇したとしています。
ノババックスのワクチンは「組み換えたんぱくワクチン」と呼ばれ、ファイザーやモデルナとは異なる仕組みです。
厚生労働省は、これまでのワクチンの成分にアレルギー反応が出た人などが接種することを想定していて、希望する人が接種できるよう都道府県に対して接種会場を少なくとも1か所は設置するよう求めることにしています。
保管や輸送を行う際の温度は2度から8度で有効期間は9か月間です。
通常の冷蔵庫で対応できるため、医療機関や自治体の接種会場での保管がしやすいとしています。
専門家「選択肢が増えるのは意義があること」
ノババックスが
開発したワクチンは『
組み換えたんぱくワクチン』という
新型コロナウイルスの
たんぱく質を
人工的に
作り出して
接種する
タイプのワクチンです。
このタイプのワクチンについて北里大学の中山哲夫特任教授は「新型コロナウイルスの流行前から使われていたワクチンと同じ方法で作られているので、安心感があると思う。このタイプのワクチンは、免疫反応を強めるため『アジュバント』という物質を加えているが、ノババックスのワクチンで使われている『アジュバント』は、帯状ほう疹のワクチンで使われているものと近く、どのような副反応が出るのかある程度、予測がつく。発熱など全身の副反応はmRNAワクチンよりは若干軽いと思ってよいのではないか」と話していました。
そして、中山特任教授はノババックスのワクチンが承認された場合について「多くの人が接種しないと実際の効果や副反応は分からず、接種後の副反応の調査は慎重に行うべきだ」と指摘したうえで「mRNAワクチン以外にも選択肢が増えるのは意義があることだ。mRNAワクチンは発熱などの副反応の問題もあり接種をためらう人がいて、3回目の追加接種が進まない原因にもなっている。このワクチンはそれよりも少し副反応の程度が少ないと思われるので、3回目の接種が早く進む効果もあるのではないか」と話していました。
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