海上保安本部は、観光船が沈没し、乗客や乗員が船内に取り残された可能性もあるとみて、ソナーによる探索で船体の発見を急ぐとともに、海上での捜索も夜を徹して続けることにしています。
このため海上保安庁は、まだ見つかっていない乗客・乗員が通報のあった知床半島の西側から東側の海域まで流されている可能性もあるとして、捜索の範囲を広げています。
このうち、1人の遺体が25日午後、家族に引き渡されました。 遺体が安置されている斜里町の運動施設には、24日から乗客の家族が訪れて確認を進めています。 斜里町によりますと、死亡した11人のうち、3人の身元が家族によって確認されたということです。 3人は観光船の乗客リストにそれぞれ福島県、千葉県、香川県の住所が記載されていた乗客だということです。 このうち、福島県の住所の1人について、25日午後、家族に引き渡されたということです。 千葉県と香川県の住所の2人については、26日に家族に引き渡されるということです。
警察からの電話について男性は、「ショックでした。実感がなかった」と振り返りました。 その上で、「現地にいる人には、社長から謝罪や説明があったと報道で聞いたが、遠方にいる私のところには全くなく、何も聞いていないのでその辺はしっかり対応してほしい。軽視とはいわないが対応がおろそかになっているように感じる。説明責任を果たしてほしい」と話していました。
さらに2時間近くが経った午後3時ごろ、会社から提出された名簿をもとに、海上保安庁が携帯電話番号が記載されているすべての乗客に電話をかけて連絡を取ろうとしましたが、いずれもつながらなかったことが分かりました。 現場海域には、携帯電話の電波が届きにくいエリアもありますが、観光船の乗客・乗員と連絡が取れない状態が続いたことになり、海上保安庁は船が沈没していた可能性もあるとみて詳しい状況を調べています。
これは、網走海上保安署がNHKの取材に対して明らかにしたもので、安全点検は行楽シーズンを前に海上保安署が働きかけて任意で行ったということです。 今月21日に行われた安全点検には豊田徳幸船長(54)が立ち会い、海上保安官が、船体に損傷がないかや、救命胴衣が適切に備え付けられているかどうかなどを確認し、特に問題はなかったということです。 一方で、位置情報を見ながら航行するための「GPSプロッター」と呼ばれる機器が船内に搭載されていなかったため、豊田船長に尋ねたところ「船から機器を外して整備している」と答えたということです。 「GPSプロッター」を搭載していなくても法令違反にはなりませんが、海上保安署では機器を取り付けてもらったうえで、今月27日に改めて点検を行う予定だったということです。
国土交通省によりますと、この船は去年、2度にわたって事故を起こしていたということです。 1度目は、去年5月、航行中に浮遊物にぶつかって乗客3人がけがをしました。 さらに、去年6月には港を出た直後に浅瀬に乗り上げる座礁事故を起こしていました。 この座礁事故では、20人余りの乗客にけがはありませんでしたが、今回の遭難で行方が分からなくなっている豊田徳幸船長(54)が業務上過失往来危険の疑いで書類送検されました。 こうした事態を重くみた北海道運輸局が、運航会社の「知床遊覧船」に対し文書で指導を行い、会社は国に改善報告書を提出しました。 その後も、豊田船長が「KAZU 1」の操船を担当したということです。 地元の関係者などによりますと、豊田船長は埼玉県の出身で、従業員の大半が辞めたことを受けて、去年から船長を任されていました。 以前は観光用の水陸両用車の運転手などをしていたとみられ、船長として長く経験してきたわけではありませんでした。 地元の漁協の組合長によりますと、事故当日の23日、波が高くなるから出港しないほうがいいと忠告したのに対し「波が高くなったら港に戻るから大丈夫だ」と話し、出港したということです。 今回の遭難事故のあと、国土交通省は運航会社に対する特別監査を行っていて、運航や整備の状況が適切だったかどうか調査を進めています。
これに対し会社側は、安全管理規定の順守などに関する改善報告書を提出していたということです。 北海道運輸局によりますと「KAZU 1」は、去年5月15日に浮遊物に接触して乗客3人が軽傷を負う事故を起こしたほか、その1か月後の去年6月11日にも出港してすぐに浅瀬に乗り上げる事故を起こしました。 これを受けて北海道運輸局は、去年6月24日から25日にかけて運航会社に対し、船員法と海上運送法に基づいた特別監査を行い、事前に提出されていた「安全管理規定」にのっとって運航が行われていたかなどを調べました。 その結果、船の見張りが不十分で、運航に関わる記録簿の不記載があったほか、乗客向けの安全管理に関する情報の掲示などでも不備があるなど、10を超える改善すべき項目があったとして、去年7月20日、運航会社に対し安全最優先の意識の定着をはかるよう文書で行政指導を行ったということです。 これに対して会社側は、去年7月30日、北海道運輸局に対し、安全管理規定の順守などに関する改善報告書を提出していたということです。
遭難した観光船が出港した斜里町ウトロと知床半島の反対側に位置する羅臼町では、根室海峡でホエールウォッチングなどを楽しむ観光船が運航されています。 町内の観光船の事業者6社でつくる「知床羅臼観光船協議会」は事故を受けて、25日、緊急の会議を開きました。 この中では夏のシーズンの運航を予定どおり今月29日から行うことを確認したうえで、船の安全確保のための設備を改めて点検することや、不測の事態に備えて船の衛星電話の連絡先を各社で共有することなどを確認しました。 また、悪天候の時には情報を共有し、一斉に運航を中止することや、出港したあとに天候が悪化した場合には早めに帰港することを申し合わせました。 会議に出席した「観光船アルラン3世」の高橋幸雄船長は「事故はひと事ではなく、われわれも同じ事態に陥る可能性があると肝に銘じて運航しなければならない。安全対策を再確認するとともに、これまで以上にほかの船と連携をとっていきたい」と話していました。
知床岬から東の海域に範囲広げ捜索
遺体が家族に引き渡される
家族が乗船とみられる人「対応がおろそか」
通報から2時間後 乗客の携帯すべて不通 沈没の可能性も
事故の2日前に網走海上保安署が点検実施
「KAZU 1」 去年2度の事故
去年の事故による行政指導 10超える改善すべき項目
羅臼町の観光船事業者 連携を確認
事故から3日目の25日は、新たに救助された人はなく、海上保安本部は、観光船が沈没して船内に乗客が取り残された可能性もあるとみて、ソナーによる探索で発見を急ぐことにしています。
また、今回の事故で、最初の通報からおよそ2時間後に船の運航会社から提出された名簿をもとに海上保安庁が乗客1人1人の携帯電話に連絡したものの、いずれもつながらなかったことが分かりました。海上保安庁は、船が沈没していた可能性もあるとみて詳しく調べています。
23日に乗客・乗員26人を乗せ斜里町ウトロを出港した観光船「KAZU 1」(19トン)が、知床半島の沖合を航行中に遭難した事故は、24日夜までに現場海域の周辺で、子ども1人を含む男女11人が救助されましたが、全員の死亡が確認されました。
斜里町によりますと、このうち3人は観光船の乗客で、家族によって身元が確認されたということです。
第1管区海上保安本部は、ほかの8人も乗客か乗員とみて、確認を進めています。
事故から3日目となり、現場海域の周辺では知床半島の東側まで範囲を広げて捜索が続けられていますが、海上保安本部によりますと、25日は夕方までに、新たな救助の情報は入っていないということです。
海上保安庁によりますと、24日の夜に救助され、死亡が確認された子どもは、知床岬の先端からおよそ15キロ東の海域で見つかり、観光船から通報があった北海道斜里町の「カシュニの滝」と呼ばれる場所からは北東に27キロ余り離れているということです。
現場海域の周辺で救助され死亡が確認された11人について、斜里町はこれまでに3人は観光船の乗客で、家族によって身元が確認されたと明らかにしました。
家族が乗船していたとみられ、今も連絡が取れていないという近畿地方に住む男性は、24日未明、北海道警から電話があり、乗客リストに家族が載っていると告げられたということです。
海上保安庁のこれまでの調べでは、最初の通報は午後1時過ぎで、船の運航会社はその1時間後に観光船とやり取りしたのを最後に連絡が途絶えたと説明していることが分かっています。
網走海上保安署は、遭難事故が起きる2日前の今月21日「KAZU 1」の安全点検を行い、船体や設備に問題がないと確認していたことを明らかにしました。
「KAZU 1」は全長およそ12メートル、19トンの小型観光船で、斜里町ウトロの港を拠点に観光クルーズ船として運航してきました。
観光船「KAZU 1」は去年も事故を2度起こしていて、運航会社に特別監査を行った北海道運輸局は、船の見張りが不十分で、運航に関わる記録簿にも不備があるなど、10を超える改善すべき項目があったとして、去年7月、文書で行政指導していました。
事故を受けて半島の反対側に位置する羅臼町の観光船の事業者は緊急の会議を開き、今月29日の運航開始を前に改めて安全点検を行うほか、悪天候の時は一斉に運航を中止することなどを確認しました。
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