総務省によりますと、去年1年間にふるさと納税を利用し、今年度の住民税の控除を受ける人は891万1000人でした。
これまで最も多かったおととしと比べて144万人あまり増え、過去最多を更新しました。
利用者は10年連続で増加しています。
また、ふるさと納税で全国の自治体に寄付された額は昨年度、9654億1000万円と、前の年度を1300億円あまり上回り、3年連続で過去最高を更新しました。
寄付額が最も多かった自治体は宮崎県都城市で195億9300万円、次いで北海道紋別市が194億3300万円、北海道根室市が176億1300万円、北海道白糠町が148億3400万円、大阪府泉佐野市が137億7200万円などとなっています。
上位5つの自治体は前の年度と変わらず、1位の都城市は宮崎牛やブランド豚などの肉や地元の焼酎などの返礼品が、2位の紋別市はホタテなど海産物の返礼品が人気を集めています。
寄付額全国1位 都城市 “一点突破”戦略とは
昨年度のふるさと納税の寄付額が全国1位と、9年連続で1桁台が続く都城市。
背景には、ふるさと納税を使ったブランディング戦略がありました。
それは“お役所的”な考え方を見直した“一点突破”です。
独自色を打ち出そうと、8年前までの1年間だけ返礼品を
▽全国的な品評会で日本一に輝いた宮崎牛と
▽都市部ではプレミア価格で取り引きされていた売り上げ日本一の地元メーカーの芋焼酎
という2つの品に絞ったのです。
行政としては偏った業者選定と取られかねない思い切った決断でしたが、これによって全国での知名度が飛躍的にあがりふるさと納税の寄付額の増加という結果であらわれました。
“宮崎牛と焼酎の街”として認知度が高まったことで、このあとから取り扱いを再開した他の品の申し込みにもつながるという好循環も生まれました。
さらに高い認知度を背景に、6年前からは牛肉と焼酎を地元で味わうことができるツアー「ミートツーリズム」を立ち上げていて、昨年度は過去最多となる3万7800人が市を訪れました。
この成功も背景に、市では今後、地元の観光名所をめぐるツアーなど市を訪れてもらうような「体験型」の返礼品を充実させたいと考えています。
都城市ふるさと産業推進局 野見山修一さん「腹をくくって殻を打ち破ってよかった。寄付が増えるにつれて事業者の市の戦略への理解が広まり、今では官と民が一緒にPRできるようになり感謝している。寄せられた寄付金を最大限に活用して移住や定住の促進、子育て支援の施策に力を入れ、市をもっと発展させていきたい」
全国2位 北海道紋別市「質の高い返礼品を」
北海道紋別市は昨年度のふるさと納税で全国で2番目に多い寄付を集めました。
市内にある魚介類のくん製の専門店ではふるさと納税の返礼品が売り上げの半分以上を占めているということで、店主の男性は「品質を落とさないよう一生懸命やっていく」と話しています。
総務省によりますと、昨年度ふるさと納税で寄付された額は紋別市が194億3300万円と、全国で2番目の額となりました。
市によりますと、特産のホタテやカニなどが返礼品として人気で、寄付を行った人のうち、返礼品として海産物を希望する人はおよそ9割にのぼるということです。
市内でくん製の専門店を営む安倍哲郎さんは、化学調味料を使わない昔ながらの製法にこだわり少人数でくん製を作っていて、サーモンやホタテ、サバなど、地元産の魚介類を中心としたセットが人気を集めているといいます。
ふるさと納税の申し込みが増える年末には、1000件を超える注文が殺到するなど、近年はふるさと納税の返礼品が全体の売り上げの半分以上を占めているということです。
安倍さん「近年はふるさと納税に頼っている状態で、本当に助かっています。皆さんが紋別市を見てくれることは本当にありがたいので、品質を落とさないように一生懸命やっていかなければいけないなと思います」
一方、紋別市ではふるさと納税を活用して、給食費の無償化などの子育て支援や、日本で唯一のアザラシの保護施設の運営費などにあてているということです。
紋別市 ふるさと納税担当 斉藤聖人さん「金額は2位ですが、件数では全国1位で、質の高い返礼品を提供してくれた事業者の方や全国の寄付者の方には感謝しかありません。今後は、物だけではなく紋別市を身近に感じられる体験型の返礼品も用意していきたい」
全国3位 北海道根室市 寄付金で子育て支援を
昨年度、ふるさと納税で全国3位の寄付を集めた北海道根室市では、寄付金を子育て支援に活用しています。
特産のカニやウニなどの返礼品が人気の根室市は、ふるさと納税の寄付額が昨年度は過去最高の176億1300万円に上り、3年続けて全国3位となりました。
人口減少が進む根室市では、寄付金は基金に積み立てていて、今年度の当初予算では、一般会計の総額のおよそ2割にあたる49億円余りを基金から拠出し、子育て支援などにあてています。
このうち子ども向けの屋内遊戯施設「わんぱーく」は、天候にかかわらず子どもたちが目いっぱい遊べるよう、財源の一部に寄付金を活用しておととし12月に整備されました。
施設では今月1日も夏休み中の親子連れの姿が多くみられ、道内最大級のネット遊具などを使って遊んでいました。
4歳と2歳の息子2人と訪れた30代の母親「広くて涼しいので子どもも楽しそうです。ふるさと納税がこうした施設に使われると、子どもたちのためにもなるし親としてもありがたい」
また、根室市では寄付金を使って
▽一昨年度から学校給食が無償化されたほか、
▽今年度からは高校生以下の医療費も無償にするなど、
子育て支援に活用しています。
寄付集めた上位20自治体は
ふるさと納税で、令和4年度に寄付を集めた上位20の自治体は以下のとおりです。
▽1位は宮崎県都城市で195億9300万円
▽2位は北海道紋別市で194億3300万円
▽3位は北海道根室市で176億1300万円
▽4位は北海道白糠町で148億3400万円
▽5位は大阪・泉佐野市で137億7200万円
▽6位は佐賀県上峰町で108億7400万円
▽7位は京都市で95億800万円
▽8位は福岡県飯塚市で90億8600万円
▽9位は山梨県富士吉田市で88億600万円
▽10位は福井県敦賀市で87億4900万円
▽11位は静岡県焼津市で75億7400万円
▽12位は北海道別海町で69億4300万円
▽13位は兵庫県加西市で63億6100万円
▽14位は名古屋市で63億2300万円
▽15位は鹿児島県志布志市で62億2000万円
▽16位は茨城県境町で59億5300万円
▽17位は宮崎市で56億5300万円
▽18位は茨城県守谷市で55億7400万円
▽19位は千葉県勝浦市で55億3400万円
▽20位は新潟県燕市で54億9500万円となっています。
税収減る見通しの自治体は
一方、ふるさと納税を利用して住民がほかの自治体に寄付を行った影響で、今年度の住民税の税収が減る見通しとなっているのは、金額が多い順に、横浜市が272億4200万円、名古屋市が159億2600万円、大阪市が148億5300万円などとなっています。
上位の6自治体は、昨年度と順番も同じです。
いずれも減収額は拡大していて、ふるさと納税によって、都市部から地方への税の流出が進む傾向が続いています。
今年度の住民税の税収が減る見通しの自治体を、減収額が多い順にまとめました。
▽1位は横浜市で272億4200万円
▽2位は名古屋市で159億2600万円
▽3位は大阪市で148億5300万円
▽4位は川崎市で121億1500万円
▽5位は東京・世田谷区で98億2300万円
▽6位はさいたま市で89億6900万円
▽7位は福岡市で85億400万円
▽8位は神戸市で84億5700万円
▽9位は札幌市で79億5100万円
▽10位は京都市で73億8700万円
▽11位は東京・港区で67億6100万円
▽12位は千葉市で55億4100万円
▽13位は広島市で51億4100万円
▽14位は東京・大田区で49億5100万円
▽15位は東京・杉並区で47億8600万円
▽16位は東京・江東区で47億7500万円
▽17位は仙台市で45億8100万円
▽18位は東京・渋谷区で45億5700万円
▽19位は東京・品川区で45億4400万円
▽20位は東京・練馬区で43億5800万円となっています。
東京・23区の8つの自治体が入っていて、それ以外はいずれも政令指定都市です。
上位20位までの自治体の顔ぶれは、順位の変動はあるものの、前の年度と変わらず、人口が多い都市部から地方への税の流出が進む傾向が続いています。
税収減る札幌市 魅力的な返礼品増やしたい
札幌市は、ふるさと納税でほかの自治体に寄付を行った住民が多く、今年度の住民税の税収が79億円あまり減る見通しで、今後は、魅力的な返礼品を増やして寄付の獲得につなげたいとしています。
札幌市はふるさと納税で、ほかの自治体に寄付を行った住民が多いため、今年度の住民税の税収が79億5100万円減る見通しで、減収額が全国で9番目に多い自治体となっています。
人口が多い都市部から地方への税の流出が進む傾向が続くなか、札幌市は、地元企業と連携をして魅力的な返礼品を増やし、寄付の獲得につなげたいとしています。
その札幌市が返礼品としてPRに力を入れているのが、札幌への旅行で使えるクーポン券やホテルの宿泊券などです。
新型コロナウイルスの感染法上の位置付けが5類へと移行したことから、旅行のニーズが高まっているとみていて、クーポン券などの返礼品で寄付額を増やすだけでなく、多くの観光客が訪れることによる経済効果にも期待しているということです。
また、ふるさと納税について、ことし10月から自治体の必要経費を寄付額の5割以下とする基準が厳格化されますが、旅行クーポン券などは必要経費を抑えられるという利点もあるとしています。
札幌市秘書課(ふるさと納税担当)伊西昌宏課長「ふるさと納税をきっかけに、札幌市のファンを作ることで何度も訪れてもらい、経済効果などのよい循環につなげていきたい」
総務省 自治体の必要経費の基準厳格化へ
ふるさと納税について、総務省は自治体の必要経費を寄付額の5割以下とする基準をことし10月から厳格化します。
ふるさと納税の過度な返礼品競争を防ぐため、総務省は4年前、返礼品の調達費用や送料など、自治体が寄付を募る経費の総額を寄付額の5割以下とする基準を設けましたが、その後も、5割を超える自治体が相次いで確認されました。
このため総務省は、ことし10月から基準を厳格化することを決め、自治体に通知しました。
具体的には
▽寄付を受領したことを示す書類の発送費用や
▽仲介サイトへの手数料も経費に含まれることを明確にして、こうした費用も含んだ上で、5割以下にするよう求めています。
さらに「熟成肉」などを返礼品としていながら、原料を別の都道府県から仕入れ、その自治体で「熟成」させたケースなどがあったとして、「熟成肉」と「精米」の原材料については、自治体と同じ都道府県内で生産されたものに限るとしています。
ふるさと納税過去最高も 明暗くっきり「悪夢」のなぜ?
ふるさと納税の記事はこちらにも↑