アメリカの複数のメディアは前大統領が無罪を主張し、全面的に争う姿勢を示したと伝えています。
トランプ前大統領はおととし連邦議会に支持者らが乱入した事件をめぐり、その前の年に行われた大統領選挙の結果を覆そうと、結果を確定する手続きを故意に妨げたとして国家を欺こうとした罪など4つの罪で起訴されています。
前大統領は現地時間の3日、日本時間の午前4時すぎに首都ワシントンの連邦地方裁判所に入り、罪状認否に臨みました。
アメリカの複数のメディアはトランプ氏が起訴された内容すべてで無罪を主張し、全面的に争う姿勢を示したと伝えました。
起訴状ではトランプ氏について事実でないと知りながら「選挙に不正があった」と主張したと指摘しています。
これに対して来年の大統領選挙に立候補を表明しているトランプ氏は、起訴は選挙妨害を目的としたバイデン政権による司法権の乱用だとしていて、罪状認否のあと記者団に対し「アメリカにとってとても悲しい日だ。政敵に対する迫害だ」と述べ、反発しています。
トランプ氏はこれまで機密文書の取り扱いをめぐる事件や、不倫の口止め料をめぐる事件でも起訴されていますが、今回は選挙という民主主義の根幹を揺るがした責任を問われているとされるだけに裁判の行方が選挙戦にどのような影響を与えるのかいっそう注目されています。
裁判所周辺には支持者と反対派が詰めかける
アメリカの首都ワシントンにある連邦地方裁判所の周辺には、国内外の報道陣が大勢集まっています。
またトランプ前大統領を支持する人たちと支持しない人たち双方が詰めかけ、口論になる場面もみられました。
トランプ氏を支持するという男性は「2020年の大統領選挙でトランプ氏が勝利したことは間違いない。彼はアメリカにとってのヒーローだ。ほかの共和党の候補者とは違って本当に信頼できる人物だ」と話していました。
また別の男性は「トランプ氏はすばらしい大統領だった。世論調査でバイデン大統領と並んだと思ったら起訴された。なんという偶然だろうか」と述べて、起訴は政治的なものだという考えをにじませました。
一方、トランプ氏を支持しないという女性は「きょうはどんな人であっても法律を超えてはならないということを示す日だと思う。彼は偽物だ。きょうから民主主義を取り戻していかなければならない」と話していました。
専門家「無党派層はトランプ・バイデン両方に否定的」
トランプ前大統領の起訴が来年の大統領選挙に与える影響についてアメリカン・エンタープライズ研究所のカーリン・ボウマン上級研究員は「トランプ氏には共和党内にきわめて強固な支持層があり、逆境の中でも彼を変わらず支え続けてきた。トランプ氏をめぐる混乱に嫌気がさし、『トランプ疲れ』が起きる可能性もあるが、こうした強固な層は支持し続ける可能性が高い」と述べてトランプ氏が共和党のほかの候補者を支持率でリードする状況は大きくは変わらないという見方を示しています。
ボウマン上級研究員はこうしたトランプ氏の強固な支持層について、これまでに行われた複数の世論調査から共和党の支持者の中で38%程度いると分析しています。
一方で、来年11月の本選挙への影響についてはバイデン大統領とトランプ氏の争いになった場合を念頭に「今回の起訴はとりわけ無党派層に大きな影響を与えるとみられるが無党派層には現時点でトランプ氏とバイデン大統領の両方に否定的な見方をしている人が多い。こうした人たちは有権者のおよそ20%と大きな割合を占めていて今後注視していく必要がある」と述べてバイデン大統領とトランプ氏の両方に否定的な有権者が裁判の行方をどのように受けとめるかがカギだと指摘しています。