FRBによる利上げ 低金利住宅ローンなど多額の含み損
金融緩和を背景に大量の住宅ローンを固定の低金利で顧客に提供して業績を伸ばしてきました。
しかし、去年からのFRB=連邦準備制度理事会による急速な利上げの影響で銀行が資金を調達する際の金利は上昇、低金利で提供した住宅ローンなどが多額の含み損を抱える形になりました。
アメリカの預金保護の仕組みは銀行が破綻したときには1口座あたり25万ドル、日本円でおよそ3400万円までが預金保険によって保護されます。 しかし「ファースト・リパブリック・バンク」は去年末時点の預金残高のうち、保護の対象ではない預金の割合が推定でおよそ67%と高かったことなどから顧客の間で預金を引き出す動きが広がりました。 預金流出が止まらなかったことをうけて11の大手金融機関から異例の支援策として預金を受け取っていわば穴を塞ぐ措置がとられていました。
25日には株価が急落し、28日時点ではわずか1か月足らずの間に日本円でさらに1兆5000億円以上の預金が流出しました。 ブルームバークなどによりますと銀行は株式に転換できる特殊な債券を付けることで価値が目減りした住宅ローン債権などを売って財務状況を強化する計画をたてたということですが、値の下がった住宅ローン債権などを引き受ける銀行は現れず、株価は一段と急落して経営破綻に至りました。
アメリカではデジタル時代の預金の取り付けという意味で「デジタル・バンク・ラン」とも呼ばれています。 このうち、最初に経営破綻したシリコンバレーバンクの場合、3月8日に経営への懸念が高まるきっかけとなった債券の売却による損失が発表されると翌日の9日だけで420億ドル、5兆円余りの預金が流出し、10日には1000億ドルの預金が流出する見込みとなり、損失が明らかになってからわずか2日、3月10日に経営破綻しました。 預金の流出が加速した要因となったのがSNS上でシリコンバレーバンクの経営への懸念に関する書き込みが拡散したことでした。 中には「金を引き出して。質問はあとで」と預金の引き出しを促す書き込みも見られました。 預金の流出の速度が速かったことでほかの銀行の経営にも懸念が広がりました。
投資した企業を資金面でバックアップしながら成長を促し株式を上場することで利益を得てきましたが、投資先のうち30社がシリコンバレーバンクに預金していて予期せぬ経営破綻で口座が凍結されたのです。 当時、投資先の資金繰りに追われたアクティハノルーさんはSNSを通じて情報が拡散して預金が流出する速さに驚き、デジタル時代の金融不安の怖さを感じています。 アクティハノルーさんは「つながっているということには副作用があり、人が何かを言うとみんながそれに追随して、雪だるま式に広がっていきます。フェイスブックやツイッターのようなあらゆるSNSで、実際にアイデアを植え付けることができそれがあっという間に広がっていきます。ネットワークを通じて情報が急速に伝わることは、ある面ではポジティブだと思うと同時に、この状況ではよくないことです。みんなが一緒になってパニックになるのです」と話しています。
保護対象ではない預金割合高く 預金引き出す動き
預金残高10兆円近く減 株価急落でさらに預金流出
「デジタル・バンク・ラン」 デジタルで預金の流出加速
ベンチャーキャピタル経営者「つながっていることに副作用」