先月下旬以降、首都圏を中心に徐々に患者が増えていて、全国の医療機関から今月19日までに報告されたことしの全国の患者数は184人と、前の週よりさらに43人増え、去年やおととしの1年間の患者数をすでに上回っています。
都道府県別では、千葉県で62人、東京で47人、埼玉県で11人、神奈川県と福岡県で9人などとなっていて、首都圏の患者が全体のおよそ7割を占めています。
国立感染症研究所は、妊娠している人はワクチンを接種することができないため、今後、妊娠の可能性がある女性や妊婦の家族など周りにいる人で、風疹に感染した経験がなくワクチンを2回接種した記録もない人は、ワクチンの接種を検討してほしいとしています。
患者 男性が女性の3倍以上 30代~50代多く
国立感染症研究所によりますと、風疹のワクチンの定期接種の制度は年代によって変わってきました。
平成2年4月2日以降に生まれた人は、男女ともに2回のワクチン接種が行われています。
それ以前は制度が異なり、女性では昭和37年4月2日以降に生まれた人は1回のワクチン接種が行われました。それよりも上の世代の女性はワクチンの定期接種はありませんでした。
一方の男性は、昭和54年4月2日から平成2年4月1日までに生まれた人は1回のワクチンの接種が行われました。しかし、昭和54年4月1日以前に生まれた男性は1回も接種が行われていません。
このため、男性の39歳の一部と40歳以上で相対的に免疫が十分でない人が多く、感染しやすい世代とみられています。
ただ、風疹の感染が広く起きていた比較的、高齢の人たちでは自然の感染で免疫がある人も少なくないとみられています。
一方、ワクチンの定期接種が行われている年代でも、なんらかの事情で接種できなかった人が一定数いるとみられています。
今月19日までに風疹の感染が報告された全国の184人の患者の内訳をみると、性別や年齢別で大きな差がみられます。
性別で見ると、男性が143人なのに対して女性が41人と、男性の患者が女性の3倍以上に上っています。
さらに男性を年齢別にみると、30代から50代が全体の79%を占めています。
その一方で、若い女性でも件数は少ないものの感染が確認されていて、ことしはこれまでに20代の女性の感染事例がすでに19例あるということです。
平成25年の流行では赤ちゃんに障害45例
風疹の全国の患者数を集計する取り組みが始まったのは平成20年からで、当初は300人程度から80人程度まで増減しながら推移していましたが、平成24年に2300人余りと大きく増加しました。
そして、そのよくとしの平成25年は年間の患者数が1万4000人余りとなる大きな流行になりました。
この時の流行では妊婦が風疹に感染することで赤ちゃんに障害が起きた事例は45例あったことがわかっています。
そのうち、1歳3か月までに11人が死亡しています。
45例について出産した母親のワクチンの履歴を調べたところ、「接種していなかった」が15例、「1回接種した」が11例、「接種歴が不明」が19例でしたが、「2回接種した」女性はいませんでした。
クリニック「ひと事と考えずワクチン接種を」
東京・立川市にあるクリニックでは、今後、妊娠を希望する若い女性や30代後半から50代の男性が来た時には、風疹について説明し、ワクチンの接種を呼びかけています。
妻の妊娠をきっかけにワクチンの接種を受けに来た35歳の男性は、「妻が妊娠するまで風疹の怖さを知らなかった。通勤などの人混みの中で、知らぬ間に風疹にかかって、妻だけではなく誰かにうつしてしまうおそれがあると思うので、ワクチンを接種できてよかった」と話していました。
ナビタスクリニック立川の久住英二医師は、「夏休みで、国内だけでなく海外に行き来している人が多い時期なので、これからさらに風疹が流行すると考えられる。風疹の感染をひと事と考えず、ワクチンを接種してほしい」と話しています。
ワクチン接種 費用を補助する企業も
風疹の患者が増える中、静岡県掛川市の企業は、社員の風疹への感染を防ごうとワクチン接種の費用を一部負担し、接種する取り組みを行っています。
取り組みを行っているのは、静岡県掛川市にある社員およそ1000人の自動車部品の関連企業「キャタラー」です。
年間延べ500人の社員が海外に出張するこの企業では、今から3年前に5人の社員が立て続けに風疹に感染しました。
この感染をきっかけに、会社では社員を風疹の感染から防ごうと、1回当たりワクチン接種にかかるおよそ1万円の費用の7割を負担する取り組みを始めました。
これまでに、希望する社員には社内で一斉に接種できるようにしたり、バスでクリニックに送迎をしたりするなどの取り組みを行ってきました。
現在は、まだ接種していない社員に対し風疹の講習などを実施して接種の呼びかけをしていて、これまでに530人が接種したということです。
これからワクチンを接種する予定の34歳の男性社員は「会社が補助してくれるので、ありがたい。ワクチンを接種したら安心して働ける」と話していました。
河合裕直取締役は「社員の間で風疹が広がると業務に支障が出る。風疹から社員を守るためにもワクチンの接種が重要だと考えた。費用はかかるが、
それ以上にメリットはある」と話しています。