ICPO=
国際刑事警察機構の
総裁を
務めていた
中国の
警察幹部の
行方がわからなくなっていた
問題で、
中国政府は
8日、この
幹部を
汚職などの
疑いで
調査していると
発表したうえで、「
敵対勢力の
転覆活動を
防ぐ」などとして、
政治的な
問題が
背景に
あることもうかがわせています。フランスに
本部が
あるICPOの
孟宏偉総裁は
先月、
中国に
一時帰国してから
行方がわからなくなり、
中国で
汚職などを
取り締まる国家監察委員会は
7日夜、
総裁が
違法行為の
疑いで
調査を
受けていると
明らかにし、ICPOも
総裁が
辞任したと
発表しました。
これに続いて、中国の警察、公安省の共産党委員会は8日未明に緊急会議を開き、午後になって公安省が「孟前総裁は賄賂を受け取っていた」などと発表しました。
会議では孟前総裁への調査について、「反腐敗闘争を徹底して推し進める共産党の固い決意を示したものだ」と一致して支持されたということです。
また、6年前まで中国共産党の最高指導部の1人で、その後、汚職などで摘発された周永康元政治局常務委員に触れ、「周永康の毒の影響を徹底的に取り除く」と強調したうえで、「敵対勢力の妨害、破壊、転覆活動を防ぐ」として、政治的な問題が背景にあることもうかがわせています。
孟前総裁は周永康氏が公安省のトップだった2004年から次官を務め、おととしからは、次官を兼ねたまま中国人として初めて、ICPOの総裁に就任していました。
報道官「反腐敗推進の決意表している」
ICPOの孟宏偉前総裁が汚職などの疑いで調査されていることについて、中国外務省の陸慷報道官は8日の記者会見で、「調査は中国政府が断固として、法による国家統治と反腐敗を推し進めていくという決心を十分に表している」と述べました。
また、中国はICPOの業務を支持してきたとしたうえで、「国連安保理の常任理事国や責任ある大国として、われわれは引き続き国際機関において、しかるべき役割を発揮していく」と強調しました。
一方、汚職などの違法行為に関する詳しい内容については「現在、調査が行われているところで、その進展とともに情報が公開されると信じている」と述べるにとどめました。
海外メディアも報道
先月から行方がわからなくなっていたICPO=国際刑事警察機構の孟宏偉前総裁について、中国政府が違法行為を行った疑いで調査していると発表したことを欧米のメディアはそろって大きく報じ、一部は習近平政権による粛清だという見方も伝えています。
このうち、アメリカのCNNテレビは「ミステリアスな失踪に新たな進展があった」として、フランスの内務省の話として「彼の妻は電話やソーシャルメディアで脅迫を受けている」とも伝えています。
また、イギリスの公共放送BBCは「大きな謎が少しずつ解明されているが、彼が最終的にどうなるのかはまだわからない」と伝え、孟氏が今後、中国当局からどのような扱いを受けるのかは明らかではないとしています。
さらにフランスの有力紙ルモンドは「粛清」という見出しをとり、「孟氏が出世するのを助けた周永康氏は、汚職取締りのキャンペーンの中で逮捕された。孟氏もことし4月に党内の役職を外されていた」として、孟氏が周氏と関係して、汚職の疑いで調査されているという見方を伝えています。
香港メディアは
一部の香港メディアなどは、2014年に汚職などで摘発された周永康元政治局常務委員との関連を指摘しています。
周氏は2002年に中国の警察トップ、公安相に就任し、2007年からは当時9人いた中国共産党の最高指導部である政治局常務委員の1人として、警察から司法全般に及ぶ、強大な権力を握っていました。
しかし、2012年に政治局常務委員を退いたあと、新たに発足した習近平指導部が掲げる汚職取締りのキャンペーンの中で、多くの元部下らとともに摘発され、2015年には巨額の賄賂を受け取ったなどとして、無期懲役の判決を受けました。
孟宏偉氏は周永康氏が2002年に公安省のトップに就任した際、秘書役に登用され、その後、2004年からは14年間にわたって次官を務め、中国人として初めてICPOの総裁に就任したあとも次官を兼務してきました。
このため、香港メディアなどは孟氏も周永康氏に関係して、汚職の疑いで拘束されたとの見方を伝えているほか、中には共産党の安定を損ないかねない、もっと重大な政治的対立にからんでいるといった見方を伝えているところもあるなど、さまざまな臆測を呼んでいます。