東京 江戸川区の草野とも子さん(69)は、17年前、当時、高校1年生だった長女の恵さん(当時15)をバレーボール部の合宿中に亡くしました。
合宿は新潟県の体育館で行われ、恵さんは2日目にはふらついて倒れたりしましたが、十分に休むこともできず、翌日、再び倒れ、熱中症と急性硬膜下血腫で亡くなりました。
草野さんは「娘は元気に『行って来ます』と言って合宿に向かったのに、次に会った時は病院で、指も動かせずまばたきもできず、旅立ってしまいました」と無念の思いを話しました。
そのうえで「熱中症の症状が出たら動作が鈍くなったり目つきが変わったりして分かるはずなのに気付かれず、バレーの初心者だった恵は十分に休めず練習を続けました。“第2の恵”を見たくないので、生徒一人一人の命をみんなで守っていく形になってほしい」と話しています。
草野さんは当時のことを高校や大学で語り継いでいて、「体調が悪いと感じたりふらふらしたりした時は『休ませて』と言ってほしい。自分から言いにくいなら手を挙げるなど事前に合図を決めておいてまわりが見逃さないで声をかけてほしいと思います。子どもたちが体調不良を訴えられる雰囲気作りを指導者がすれば、命はそんなになくならないと思います」と訴えています。
9月に入って新型コロナウイルスの影響で自粛していた部活動が再開されるところがあるとして、「秋の大会に間に合わせようと無理をして急に運動せず、ことしは『みんな、けがなく終わってよかった』というくらいに考えてほしいです。湿度や気温によっては激しい運動はせず、筋力をつけるだけにするなど、命を守る指導をしてほしい」と話していました。
専門家「暑さ指数活用し細やかな注意を」
熱中症に詳しい早稲田大学人間科学学術院の永島計教授は「大人と違って子どもは発汗による体温調節がうまくできないうえ、子ども自身が熱中症の症状なのか部活がしんどいのか、区別を正しく判断するのは難しい」と指摘しています。
その対応策としては「大人が休憩や水分補給を呼びかけるのは最低ラインで、子どもの状態をよく見て声を聞きながら対応することが必要だ。気温や湿度、それに日射などを数値化した暑さ指数を活用し、運動を行うかや、運動メニューを決める際の参考にしてほしい。ただ、暑さ指数は成人をもとに作られていて、子どもや高齢者にはより細やかな注意が必要だ」としています。
そのうえで「例年であれば9月は体が暑さに慣れている時期だが、新型コロナの影響で運動できずにいた期間が長く続いた。これからの時期に子どもも指導者も張り切って負荷の強い運動をすると、取り返しのつかない熱中症になるリスクがあることを頭に入れ、気をつけてほしい」と話しています。