内モンゴル自治うちもんごるじち区く 中国ちゅうごく語ご教育きょういく強化きょうかに抗議こうぎの保護ほご者しゃら 当局とうきょくに拘束こうそく

これに対にたいしてモンゴル族ぞくの人ひとたちの間までは、自分じぶんたちの言語げんごが失うしなわれかねないという危機きき感かんが高たかまり、各地かくちで抗議こうぎ活動かつどうが行おこなわれ、現地げんちの複数ふくすうの住民じゅうみんによりますと、デモの参加さんか者しゃや授業じゅぎょうをボイコットした生徒せいとの保護ほご者しゃらが相次あいついで逮捕たいほされているということです。

このうち元もと教師きょうしの女性じょせいはNHKの電話でんわ取材しゅざいに対にたいし、「多おおくの人ひとが違法いほうな抗議こうぎ活動かつどうを行おこなったとして逮捕たいほされ、政治せいじ犯はんのような扱あつかいを受うけている。新あたらしい方針ほうしんに反対はんたいした教師きょうしも免職めんしょくや減給げんきゅう処分しょぶんにすると脅おどされている」と話はなしていました。

アメリカに拠点きょてんを置おく人権じんけん団体だんたい「南みなみモンゴル人権じんけん情報じょうほうセンター」は、現地げんちからの情報じょうほうとして、先月せんげつ下旬げじゅん以降いこう、4000人にん以上いじょうのモンゴル族ぞくが当局とうきょくに拘束こうそくされたと伝つたえています。

中国ちゅうごく外務省がいむしょうの報道ほうどう官かんは今月こんげつ3日にちの記者きしゃ会見かいけんで「国くにの公用こうよう語ごは国家こっか主権しゅけんの象徴しょうちょうであり、これを学まなび、使つかうことは、人々ひとびとの権利けんりであり義務ぎむだ」としたうえで、「中国ちゅうごく語ごとモンゴル語ごの2つの言語げんごでの教育きょういく体系たいけいは変かわらない」と強調きょうちょうし、批判ひはんの高たかまりをかわしたいねらいがあるものとみられます。

現地げんちの様子ようすは

内モンゴル自治うちもんごるじち区くで何なにが起おきているのか。NHKは今月こんげつ、抗議こうぎ活動かつどうがあった中心ちゅうしん都市としフフホトを取材しゅざいしました。

市内しないには、民族みんぞくの団結だんけつなどを訴うったえる中国ちゅうごく共産きょうさん党とうのスローガンを、漢字かんじとモンゴル文字もじで併記へいきした看板かんばんやポスターがあちこちに掲かかげられていました。

モンゴル族ぞくの子こどもたちが通かよう民族みんぞく学校がっこうの周辺しゅうへんでは、警察けいさつによる検問けんもんが行おこなわれ、通行つうこうする車くるまを止とめて身分みぶん証しょうを確認かくにんする様子ようすが見みられました。

中国ちゅうごく語ごによる教育きょういくの強化きょうかや抗議こうぎ活動かつどうについて、街まちなかで話はなしを聞きくと、みな一いち様さまに口くちを閉とざし、逃にげるように立ち去たちさる人ひともいました。

抗議こうぎ活動かつどうが起おきた別べつの地区ちくでは、地元じもとの警察けいさつが騒さわぎを起おこしたとする100人にん以上いじょうの顔かお写真しゃしんをインターネット上じょうに公開こうかいし、懸賞けんしょう金きんをかけて情報じょうほう提供ていきょうを呼よびかけています。

こうした中なか、複数ふくすうのモンゴル族ぞくの住民じゅうみんが、匿名とくめいを条件じょうけんに日本にっぽんからの電話でんわインタビューに応おうじました。

このうち元もと教師きょうしの女性じょせいは、抗議こうぎデモに参加さんかした人ひとや授業じゅぎょうをボイコットした生徒せいとの保護ほご者しゃらが次々つぎつぎと逮捕たいほされているとしたうえで、中国ちゅうごく語ごによる教育きょういく強化きょうかについて「政府せいふは私わたしたちの合法ごうほう的てきな要求ようきゅうに耳みみを傾かたむけず、強硬きょうこうに実施じっししようとしている。母語ぼごであるモンゴル語ごで教育きょういくを受うける権利けんりを奪うばうもので、誰だれもが怒おこっている」と話はなしていました。

また、ある村むらの幹部かんぶは「電話でんわを盗聴とうちょうされたり、監視かんしされたり、場合ばあいによっては逮捕たいほされてしまうので、抵抗ていこうしようにもできない」としたうえで、「今回こんかいの政策せいさくは民族みんぞくの言語げんごや文化ぶんかを守まもることを定さだめた憲法けんぽうや法律ほうりつに明あきらかに違反いはんしていて、抑圧よくあつ以外いがいの何なに物ぶつでもない。漢かん族ぞくを中心ちゅうしんとする考え方かんがえかたを押おしつけるもので、私わたしたちにモンゴル語ごを忘わすれさせ、内うちモンゴルを自分じぶんたちの意いのままにしようとしている」と話はなしていました。

「団結だんけつ」の一環いっかんとして 少数しょうすう民族みんぞくへの中国ちゅうごく語ご教育きょういくに力ちから入いれる

2012年ねんに発足ほっそくした習近平ちから指導しどう部ぶは「中華ちゅうか民族みんぞくの偉大いだいな復興ふっこう」というスローガンを繰り返くりかえし唱となえ、すべての国民こくみんに共産きょうさん党とうのもとで中華ちゅうか民族みんぞくとして団結だんけつするよう呼よびかけてきました。

その一環いっかんとして、少数しょうすう民族みんぞくへの中国ちゅうごく語ご教育きょういくに力ちからを入いれ、今回こんかいの内モンゴル自治うちもんごるじち区くと同様どうようの措置そちは、民族みんぞく政策せいさくへの不満ふまんが根強ねづよくある新疆ウイグルしんきょうういぐる自治じち区くとチベット自治じち区くで2017年ねん以降いこう、相次あいついで導入どうにゅうされています。

中国ちゅうごく語ごによる授業じゅぎょうは「国語こくご」のほか、「道徳どうとく」と「歴史れきし」の合あわせて3教科きょうかで行おこなわれ、少数しょうすう民族みんぞくの小しょう中学生ちゅうがくせいに「中華ちゅうか民族みんぞく」という意識いしきを持もたせ、共産きょうさん党とうの価値かち観かんや歴史れきし観かんを浸透しんとうさせるのが目的もくてきとみられます。

習近平ちから国家こっか主席しゅせきは、26日にちまで開ひらかれた新疆ウイグルしんきょうういぐる自治じち区くの統治とうち政策せいさくに関にかんする重要じゅうよう会議かいぎでも、教育きょういくを通をつうじて「中華ちゅうか民族みんぞくの共同きょうどう体たい意識いしきを心こころに深ふかく植え付うえつける」と述のべています。

習近平ちから指導しどう部ぶは共産党きょうさんとうによる一いち党とう支配しはいを維持いじするために、国内こくないの安定あんていを最さい優先ゆうせんの課題かだいとしていて、民族みんぞく政策せいさくが抑圧よくあつ的てきだとする少数しょうすう民族みんぞくの不満ふまんを抑え込おさえこもうと、教育きょういく現場げんばでの統制とうせいを今後こんごも強つよめていくものとみられます。

漢かん族ぞくへの不満ふまんくすぶる

内モンゴル自治うちもんごるじち区くは、モンゴルと国境こっきょうを接せっし、面積めんせきは日本にっぽんのおよそ3倍ばい、人口じんこうは2010年ねんの調査ちょうさでおよそ2400万まん人にんです。

このうち、モンゴル語ごを母語ぼごとするモンゴル族ぞくは全体ぜんたいの17％に当にあたるおよそ420万まん人にんです。

中国ちゅうごくの憲法けんぽうでは、それぞれの民族みんぞくが独自どくじの言語げんごを使つかう自由じゆうを認みとめていて、内モンゴル自治うちもんごるじち区くでも、長年ながねん、民族みんぞく学校がっこうでモンゴル語ごを主体しゅたいとした授業じゅぎょうが行おこなわれてきました。

一方いっぽうで、中国ちゅうごくの経済けいざい発展はってんに伴ともない、近年きんねんは進学しんがくや就職しゅうしょくに有利ゆうりな中国ちゅうごく語ごを日常にちじょう的てきに使つかう機会きかいが増ふえ、モンゴル族ぞくの間までは、民族みんぞくの文化ぶんかが失うしなわれてしまうとして危機きき感かんが強つよまっていました。

また、自治じち区くでは、このところ、石炭せきたんやレアアースなどの大だい規模きぼな資源しげん開発かいはつが進すすんでいて経済けいざい発展はってんが期待きたいされていますが、モンゴル族ぞくには恩恵おんけいが少すくないうえ、環境かんきょう破壊はかいも進すすんでいるとして、政治せいじや経済けいざいの実権じっけんを握にぎる漢かん族ぞくへの不満ふまんがくすぶっています。

専門せんもん家か「寝ねた子こを起おこす形かたちに」

内モンゴル自治うちもんごるじち区くの事情じじょうに詳くわしい日本にっぽんモンゴル協会きょうかいの窪田くぼた新一しんいち理事りじ長ちょうは、中国ちゅうごく語ごによる教育きょういくの強化きょうかについて、中国ちゅうごく政府せいふによる少数しょうすう民族みんぞくに対にたいする同化どうか政策せいさくの一環いっかんだと指摘してきしたうえで、「反はん政府せいふ活動かつどうを抑え込おさえこむために、新疆ウイグルしんきょうういぐる自治じち区くやチベット自治じち区くで先行せんこうして導入どうにゅうしていた中国ちゅうごく語ご教育きょういくの強化きょうかを正当せいとう化かする必要ひつようがあったのではないか。このまま内モンゴル自治うちもんごるじち区くだけ民族みんぞくの言語げんごを守まもっていては、ほかの地域ちいきの民族みんぞく政策せいさくに悪あく影響えいきょうを及およぼす可能かのう性せいがあり、ウイグルやチベットと横並よこならびで強化きょうかすべきと判断はんだんしたのだと思おもう」と分析ぶんせきしています。

そのうえで、中国ちゅうごくが新型しんがたコロナウイルスへの対応たいおうや香港ほんこん情勢じょうせいなどをめぐってアメリカなどとの対立たいりつを深ふかめていることを挙あげ、「国際こくさい世論せろんの圧力あつりょくが強つよまり、孤立こりつせざるをえない対外たいがい的てきな状況じょうきょうの中なかで、国内こくないの安定あんていを図はかるうえで重要じゅうような民族みんぞく問題もんだいで、1つの原則げんそくに統一とういつして対処たいしょしようとしたとも考かんがえられる。一方いっぽうで、今回こんかいの措置そちは、反はん政府せいふ的てきな考かんがえや民族みんぞく感情かんじょうを強つよく持もっていなかった人ひとたちにまで、モンゴル民族みんぞくだという自覚じかくを強つよく持もたなければならないと再さい認識にんしきさせる結果けっかとなり、中国ちゅうごく共産党きょうさんとうからすれば、必要ひつようのないことをして寝ねた子こを起おこす形かたちになったのではないか」と話はなしています。