ただトラブルの原因は依然、特定できないままで、再発防止に向けた態勢整備が大きな課題になっています。東証のすべての取り引きが終日停止された1日のシステムトラブルは、1999年5月に取り引きが全面的にシステム化されて以降初めての事態でした。
2日の売買は午後3時の取り引き終了まで通常どおり行われ、東証は「システムは正常に稼働し、問題はなかった」としています。
トラブルが起きたシステムの「アローヘッド」について、東証と開発元の富士通は世界トップレベルのシステムだとしていますが、今後の焦点はトラブルの原因究明と再発防止策になります。
東証によりますと「アローヘッド」は売買の注文を処理する「注文売買系ネットワーク」と、システムの基幹となる「運用系ネットワーク」に分かれています。
今回は「運用系ネットワーク」で売買の基本的な情報を保存している「共有ディスク装置」に不具合が発生しました。
不具合が起きた場合、本来はバックアップ用の2台目の「共有ディスク装置」が稼働するはずでしたが、今回はその切り替えがうまくいきませんでした。
その結果、不具合の影響が「注文売買系ネットワーク」にも及び株価などの情報が投資家に配信できなくなりました。
バックアップが正常に稼働さえすればトラブルは防げました。
しかし切り替えができなかった原因は依然、特定できず、東証ではそれを究明することが再発防止のカギになると見ています。
2010年に導入されたアローヘッドは去年11月に刷新されましたが、この際のテストではバックアップは正常に機能していたということです。
東証は富士通に故障した機器を持ち込み連携して原因の究明にあたることにしていますが、どれくらいの時間がかかるかは現時点で分からないということです。
専門家「きちんとした説明と切り替えの訓練強化を」
株式市場に詳しいニッセイ基礎研究所の井出真吾 上席研究員は「証券取引所は今や装置産業と言ってもいいくらいで、世界中の取引所と1秒間にどれだけの注文を処理できるかというスピード競争になっている。東京証券取引所は世界的に高いレベルにあり、システムがしっかりしているとの評価で、外国人の投資家も日本の株式市場に積極的に参加しているので、みずからそこに傷を付けてしまうトラブルで非常に残念だ」と指摘しました。
そのうえで、井出氏は「海外の投資家からみれば是が非でも日本株を買わなければならない理由はなく、これからも日本株を選んでもらうためにも原因を英語で発信するなどきちんとした説明が必要だ。また、バックアップにきちんと切り替わるよう訓練も強化してもらいたい」と話しています。
システムは競争力の要
証券取引所にとって取り引きのシステムは競争力の要にもなっています。
最近では投資家の間で大量の注文を瞬時に出す「高速取引」が増加。
こうした動きに対応して多くの投資家を市場に呼び込もうと世界の証券取引所が競うようにシステムを更新し、高速化を目指してきました。
東京証券取引所も去年11月、売買の基幹システム「アローヘッド」をおよそ4年ぶりに更新。
売買注文を処理スピードを1000分の1秒のレベルで高めようと多額の投資を行ってきました。
しかし今回は、こうしたシステムが不具合を起こした時でも取り引きを継続させるのに欠かせない「バックアップ」の機能が働かず、売買を全面的に停止する事態となりました。