日本ハムは5日午後、札幌市の球団事務所で行われた大谷投手との契約交渉の中で、初めて大谷投手の大リーグ挑戦について触れ、来シーズンのオフ以降、本人が希望した場合、ポスティングシステムを使った大リーグ挑戦を認めることを伝えたということです。
会見で大谷投手は「大リーグに行きたいと思ったときに自分の意志を尊重し、応援してもらえるのはうれしい」と話しました。
球団代表「行きたい時期に行かせてあげるべき」
日本ハムの島田利正球団代表は、大谷投手の将来の大リーグ挑戦について、「大谷投手のこの4年間の実績や成長のスピードがわれわれの想像以上に早いということからも、将来についてきちんと話し合うべきだと判断した。1球団のエゴではなく、本人、さらには野球界にとってどんな形がいちばんいいか考え、来シーズンのオフ以降の大リーグ挑戦について本人が行きたい時期に行かせてあげるべきだということになった。本人に話したところ納得していた。時期については言及はなかった」と話しています。
来季オフなら異例の早さ
ポスティングシステムで選手が大リーグに移籍する場合、日本の球団には譲渡金が入り、その後の選手補強に加え、新たなファン層の獲得など、球団経営の重要な資金となります。
一方で、海外への移籍が可能となるFA=フリーエージェントを使った移籍では、日本の球団は金銭などの補償を得ることができません。
球団にとって、主力選手は戦力、人気の両面で重要な存在となることから、これまでポスティングシステムを使って大リーグに移籍した選手は、海外FAの権利を得る前のシーズンに日本の球団から移籍を認められるケースが多くなっています。
海外の球団へのFAの権利が認められるには、9シーズンの1軍出場選手登録が必要になります。
このため、仮に来シーズンで5年目となる日本ハムの大谷翔平投手が、来シーズンの終了後にポスティングシステムを使うことになれば、極めて異例の早さとなります。
大リーグも高い関心
大谷投手について、大リーグのほぼすべての球団がその実力を高く評価しており、注目を集めています。
大リーグの各球団は、高校時代から大谷投手の素質に注目し、日本ハム入団後の4年間でその評価をさらに高めています。
大谷投手について、ワールドシリーズで優勝したカブスで野球部門の責任者を務めるエプスタイン氏は、先月、「ピッチングもバッティングも非常にレベルが高い」と評価し、ドジャースのザイディゼネラルマネージャーも「間違いなく獲得選手リストの上位に入っている」と認めています。
さらに、メディアの中には、大谷選手を大リーグで通算714本のホームランを打ちピッチャーとしても通算94勝を挙げ、「野球の神様」と言われたベーブ・ルースに例えるところもあるほどで、早ければ来シーズンのオフにもポスティングにかかることを想定して、獲得資金の捻出のため、大幅な補強を控えている球団があると伝える報道もあります。
大リーグの専門チャンネル「MLBネットワーク」のケン・ローゼンタール記者は「大谷投手を欲しがらない球団はないと思う。来年フリーエージェントになる有力な選手は少ないので、間違いなく移籍市場の中心となり、大谷投手にとっても有利なタイミングだと言える。二刀流で使えるし、ものすごい需要があるだろう」と話しました。
高校生の時から大リーグ挑戦の意向
大谷投手は岩手県の花巻東高校出身のプロ4年目、平成24年のドラフト会議で日本ハムに1位指名を受けました。
高校3年生の大谷投手は、ドラフト会議での指名を前に「厳しい環境の中で自分を磨きたい」と大リーグ挑戦の意向を表明していました。
交渉権を獲得した日本ハムは、入団を強く説得するのではなく、大リーグでプレーするという大谷投手の夢をチームとして後押しするというスタンスで交渉しました。
交渉の中で、ピッチャーとバッターのいわゆる「二刀流」で育成するという異例の提案も行い、大谷投手の心をつかみました。
日本ハムに入団してからの大谷投手は順調に実績を積み、プロ3年目の去年、投手として、最多勝利、最優秀防御率、勝率第1位の3つのタイトルを獲得しました。
プロ4年目の今シーズンは、指名打者を解除して1試合でピッチャーとバッターの両方の役割を果たすなど二刀流での活躍の幅を広げ、チームの10年ぶりの日本一に大きく貢献しました。
そして、投手としては10勝4敗、防御率1.86、プロ野球最速の165キロをマークし、打者として自己最多の22本のホームランを打って、史上初めて投手と指名打者の2つの部門でベストナインに選ばれました。
大谷投手は日本ハムが自身をここまで育ててくれたことに感謝すると同時に、「今でも大リーグの夢は変わっていない」と発言するなど、大リーグ挑戦への意向を示し続けていました。