男は銃撃のあと、「預言者ムハンマドに聖戦を誓う。アレッポを忘れるな。シリアを忘れるな。この弾圧に加担している者は誰もがツケを払わなければならない」と叫んでいました。
トルコ政府によりますと、男は、トルコ警察の機動隊に所属するメウリュト・アルトゥンタシュ容疑者(22)で、地元メディアによりますと、捜査当局は、男の家族などを拘束し、事情を聞いているということです。
トルコの隣国シリアでは、ロシア軍が支援するアサド政権が、北部の都市アレッポに総攻撃をかけてほぼ全域を制圧したばかりで、男が、大勢の市民が犠牲になったことへの報復としてロシアの大使を襲ったとの見方が出ています。
一方、アンカラの市長はツイッターで、男がことし7月にクーデター未遂を企てたとトルコ政府が主張するイスラム組織「ギュレン教団」とつながりがあるとの見方を示しています。
事件の起きたアンカラには、日本時間午後5時ごろ、ロシア政府の捜査チームのメンバーおよそ20人が到着し、両政府は、事件の背後関係など全容の解明に向けて共同で捜査を始めました。
警察のID見せて侵入か
トルコ政府によりますと、ロシアの大使を殺害したメウリュト・アルトゥンタシュ容疑者(22)は、トルコ西部の都市アイドゥン出身で、2014年に西部イズミールにある警察学校を卒業したあと、この2年半は首都アンカラで警察の機動隊に所属していました。
地元のメディアによりますと、アルトゥンタシュ容疑者は、事件が起きた19日は非番だったということですが、黒いスーツにネクタイをした要人の護衛官のような服装で、会場の入り口で警察の職員証を見せて入ったということです。そして、事件が起きたとき、スピーチをしている大使の背後に1人で立ち、大使の後ろから銃を発砲したということです。
事件への組織的な関与については明らかになっていませんが、一部のメディアはアルトゥンタシュ容疑者がことし7月に起きたクーデター未遂を計画したとトルコ政府が主張するギュレン教団とつながりがあったと伝えています。ただ、これについて、ギュレン教団はロイター通信に対して、今回の事件への関与を否定しています。
ロシアとトルコの外相 急きょ会談
ロシアでは20日、シリア情勢をめぐって、ロシアとトルコ、それにイランの3か国の外相会議が開かれる予定でしたが、ロシアの大使が殺害されたことを受けて、急きょ、会議に先立ち、ロシアのラブロフ外相とトルコのチャウシュオール外相の外相会談が行われました。
会談の冒頭、ラブロフ外相は「できるだけ早く、このテロ行為がどのように行われ、組織されたのかを明らかにしなければならない」と述べ、トルコ側とともに事件の解明を急ぐ考えを示しました。
これに対し、チャウシュオール外相は「攻撃の標的はロシアとトルコの2国間関係だ」と述べ、事件の背景にはシリア情勢をめぐるロシアとトルコの協力を妨げる狙いがあるという認識を示しました。