これを受けて、消費者委員会のワーキンググループは、新たな被害の防止や救済策について検討を進め、20日、報告書の素案を示しました。
それによりますと、今後の重要な取り組みとして、18歳から22歳位の若者を配慮が必要な「若年成人」と捉え、被害の防止や救済のための法整備を進めることを挙げています。
また、消費者問題に関する知識や経験の乏しさからトラブルに巻き込まれる可能性があるとして、特に中学校に入った段階から消費者教育に体系的に取り組むべきだと指摘しています。
さらに、消費者被害を防止するための対策を進めるには十分な準備が必要で、少なくとも5年は周知期間を設けるべきだという意見が多いとしています。
ワーキンググループは来週、報告書を取りまとめたうえで、年明けに消費者委員会に提出することにしています。
成人になった若者にリスク高まる
契約を1人で行うことのできる成人になった若者からの消費者トラブルの相談は、未成年者に比べて多く契約金額も大きくなる傾向にあり、国民生活センターは20歳を境に消費者トラブルに巻き込まれるリスクが高まると指摘し、注意を呼びかけています。
国民生活センターによりますと、昨年度、全国の消費生活センターに寄せられた消費者トラブルの相談件数は、18歳と19歳は平均でおよそ5700件ですが、20歳から22歳は平均でおよそ8900件と20歳を境に増えています。
さらに、契約金額は、18歳が男女ともに平均およそ16万円なのに対して、20歳から22歳では平均で男性がおよそ39万円、女性がおよそ27万円と、10万円以上高くなっているということです。
また、20歳から22歳では、未成年者ではあまり見られなかった相談が目立つようになり、男性では「マルチ商法」、女性では「エステ」についての相談が急増しているということです。
相談事例では、契約に関する知識の乏しさにつけ込んだり、断りにくい状況を作ったりして契約をさせているケースのほか、20歳になったとたんに勧誘を受けるなど、成人になったタイミングを狙っていると見られる事例もあるということです。
国民生活センターは、20歳を境に消費者トラブルに巻き込まれるリスクが高まると指摘し、注意を呼びかけています。
消費者教育に取り組む高校では
茨城県神栖市の神栖高校では、身近な消費生活上のトラブルを研究し、近くの小学校で出前講座を行うなどの消費者教育に積極的に取り組んでいます。
神栖高校の家庭クラブでは、1年生と2年生のおよそ10人が、スマートフォンをめぐるトラブルなど身近なトラブルの原因や対策を考える寸劇を作り、小学校などで披露しています。
台本作りから解説まで生徒たちが話し合いながら自分たちで作っているほか、市の消費生活センターの職員からアドバイスをもらったり、意見を交わしたりして消費者問題への理解を深めているいうことです。
2年生の女子生徒は「クラブに参加した当初は消費者問題にあまり興味がなく、自分には関係ないと思っていましたが、活動するうちに、実はすごい身近なことで一歩間違えばトラブルに巻き込まれることもあると思うようになった」と話していました。
家庭クラブを担当する神栖高校の村上睦美教諭は、生徒たちは出前講座で教える立場になることでより積極的に学ぶようになり、身近な問題に対する意識が高まっていると手応えを感じています。
一方で、クラブ活動以外では消費者問題を取り上げる家庭科の授業は、1年に2、3時間ほどに限られているということです。
村上教諭は「家庭科の授業ではいろいろなことをやらないといけないので、どうしても消費者問題を扱う時間は少なくなってしまう。トラブルの内容もどんどん変わっていくので、その対応力をどうやって身につけさせるのかが課題だ」と話していました。