このためIOCは、ジャマイカを失格処分とし、金メダルをはく奪することを決めました。当時のメンバーには、陸上短距離の王者、ウサイン・ボルト選手も含まれています。
ボルト選手は、北京、ロンドン、去年のリオデジャネイロとオリンピックで史上初めて3大会連続で、100メートル、200メートル、400メートルリレーの3種目で、金メダルを獲得したとして話題を集めました。ジャマイカに対する処分が確定すれば、北京大会の400メートルリレーで銅メダルを獲得した日本は、銀メダルに繰り上がります。
このほか、IOCは、北京大会の陸上女子三段跳びと走り幅跳びの2種目で銀メダルを獲得したロシアのタチアナ・レベデワ選手についてドーピングの再検査で陽性反応を示したとして、銀メダルをはく奪すると発表しました。
ネスタ・カーター選手とは
今回、ドーピングの再検査に対して陽性反応を示したジャマイカのネスタ・カーター選手は、31歳です。身長は1メートル70センチと小柄ですが、筋肉質な体格をいかした力強い走りが持ち味で、オリンピック初出場となった北京大会の男子400メートルリレーでは予選で第3走者、決勝では第1走者を務めました。
また、2012年のロンドン大会でもリレーのメンバーとして金メダルを獲得しましたが、去年のリオデジャネイロ大会の前に地元メディアなどでドーピングの疑いが報じられて以降、競技の場に姿を見せなくなっていました。
NHKでは、去年9月、カーター選手が所属するジャマイカの首都キングストンの陸上クラブを訪れ、取材を試みました。カーター選手は足の治療を行っている様子で、取材に対して大きなけがではないことを説明しましたが、ドーピング疑惑について質問したとたんに口を閉ざし、カメラを手でさえぎって足早に立ち去りました。
400メートルリレー 日本は銅
北京オリンピック、陸上男子400メートルリレーの決勝には、金メダルを剥奪されたジャマイカのほか、日本やカナダなど8チームが出場しました。
ジャマイカは、今回ドーピングの再検査で陽性反応を示したネスタ・カーター選手が第1走者を務め、第2走者はマイケル・フレイター選手、第3走者は、ウサイン・ボルト選手、第4走者は、アサファ・パウエル選手と世界トップレベルの選手をそろえました。
第1走者のカーター選手が好スタートを見せこの大会で、100メートルと200メートルで金メダルを獲得していた第3走者のボルト選手が圧倒する走りで、他のチームを一気に引き離すなどして当時の世界新記録となる37秒10をマークし、金メダルを獲得しました。
このレースで日本は、塚原直貴選手、末續慎吾選手、高平慎士選手、朝原宣治選手の4人が出場し、日本の持ち味である速やかなバトンパスで、ジャマイカ、トリニダード・トバゴに続いて3位に入り、男子のトラック種目では初めてのメダルとなる銅メダルを獲得しました。
日本陸連「連絡待ちたい」
これについて日本陸上競技連盟は「まだ連絡はない。IOCが剥奪を判断したが、直ちに日本チームが繰り上がるかどうかなんとも言えない。IOCからJOC=日本オリンピック委員会に連絡が入り、その後、日本陸連にも連絡が入ると思うので待ちたい」と話していました。
リレー銅 朝原「いまさらという気持ち」
この種目で銅メダルを獲得した日本のアンカーを務めた朝原宣治さんは、「北京オリンピックで結果を出した瞬間に私たちは感動したので、それから8年以上もたって『銀メダルになるかも』と言われても気持ちはパッとしない。『いまさら』という気持ちだ。選手がこういう気持ちになることが二度とないよう、ドーピング検査をしっかりやってほしいし、特に2020年の東京大会がクリーンな大会になるように、関係者は努めてほしい」と話していました。