領空侵犯のおそれがある
国籍不明機に対する、
自衛隊機のスクランブル=
緊急発進が、
今年度は
先月下旬までの
10か月間で
1000回を
超え、
冷戦時代の
年間の
数を
上回ってすでに
過去最多になっていることが、
防衛省関係者への
取材でわかりました。
特に
中国機への
対応が
多く、
防衛省は
警戒と
監視を
続けています。
防衛省関係者によりますと、
航空自衛隊の
戦闘機が
行った
緊急発進は、
今年度は
先月下旬までの
10か月間で
1000回を
超え、
その後も
増え
続けているということです。
年間の緊急発進の数は、旧ソビエト機が活発だった東西冷戦時代の昭和59年度に確認された944回が過去最多でしたが、今年度は2か月を残す中で、すでにこれを上回りました。
国や地域別では、中国機に対する緊急発進が急増していて、去年12月までの9か月間で全体の73%を占めています。
次いで多かったのはロシア機に対するもので、全体の26%でした。
中国機をめぐっては、1度に飛来してくる機体の数も増加傾向にあり、自衛隊の戦闘機が1度に10機以上緊急発進したケースもあったということです。
防衛省は中国の海洋進出の強まりが背景にあるとして、行動の目的を分析するとともに警戒と監視を続けています。
中国軍機の動向は
中国の軍用機は東シナ海を中心に活動が活発になっていて、これまでになかった動きも見せています。
去年9月には、沖縄本島と宮古島の間の上空で、中国の爆撃機などとともに、戦闘機と見られる2機が、東シナ海から太平洋に出たのが初めて確認されました。
中国の戦闘機はその後、去年11月と12月にも、同じように太平洋に出たのが相次いで確認されています。
このうち、去年12月の飛行をめぐっては、中国国防省の報道官が「自衛隊機2機が近距離で妨害したうえ妨害弾を発射した」などと発表し、日本政府が「事実と明らかに異なることを一方的に発表したことは極めて遺憾だ。日中関係の関係改善を損なうものだ」などとして抗議する事態に発展しました。
さらに先月には、中国の爆撃機など8機が九州の対馬海峡の上空を通過して、東シナ海と日本海との間を往復したのが確認されています。
中国は、南西諸島から台湾、フィリピンにかけてのラインを「第1列島線」と呼び、国防上の重要な境界線と位置づけていて、中国海軍の空母も去年12月に東シナ海から太平洋に出たことが初めて確認されています。
連絡メカニズム 運用開始のめど立たず
日本と中国の両政府の間では、海上や空での偶発的な衝突を避けるため、連絡メカニズムの運用に向けて協議が続けられ、緊急時に電話で連絡を取り合うホットラインの設置などが決まっていますが、運用開始のめどはまだ立っていません。
日中の連絡メカニズムは、9年前に協議が始まり、日本政府が2012年に尖閣諸島を国有化したあとおよそ2年半中断されましたが、おととし再開され、協議が続けられています。
これまでに、防衛当局の幹部どうしが電話で連絡を取り合えるホットラインを設置することや、双方の航空機や艦艇が無線で交信できる共通チャンネルを設定することなどが決まっています。
しかし、具体的な手順や条件などをめぐって調整が続いていて、運用開始のめどはまだ立っていません。
日中両政府は早い時期の運用開始を目指すことを確認していますが、航空自衛隊と中国空軍の間では、多国間で共有する行動基準もなく、不測の事態をどのように防ぐかが課題になっています。
専門家 連絡メカニズムの早期運用を
緊急発進が過去最多となったことについて、航空自衛隊の戦闘機パイロットなどを経て司令官を務めた永岩俊道元空将は「ソ連が崩壊したあと、ロシア機の活動が冷戦期より少なくなった一方で、中国の空軍力が非常に高くなり活動範囲が太平洋にまで広がっていることが反映されている」と話しています。
中国機に対応する現場の状況については、「上空でコミュニケーションがしっかり成立しているとは言いがたく、相手の動きを予測するのが難しいので、意図しない衝突に至るおそれがある」と指摘しました。
そのうえで、今後の対策として「戦闘機どうしの衝突は最前線の衝突にとどまらず、最悪の場合、国家間の戦争になるおそれもある。互いが冷静に管理して強引な行動にならないようトップレベルで議論することが大切だ」と述べ、偶発的な衝突を防ぐための連絡メカニズムを、早期に運用させることが必要だと指摘しました。