警察は、事件に関与した疑いでインドネシア人の女とベトナムのパスポートを持つ女の2人を拘束し、17日、新たに北朝鮮国籍のリ・ジョンチョル容疑者(46)を拘束しました。
男はクアラルンプール郊外のマンションにいるところを警察に拘束され、近所の人の話によりますと、1年ほど前、家族4人で移り住んできたということです。
警察は18日、男を空港近くの警察署に連れて行き、事件への関与について事情を聴くなど、調べを進めています。
今回の事件について、韓国の情報機関は、北朝鮮の工作員が毒物を使って殺害したとの見方を示していて、逮捕されたリ容疑者が、北朝鮮の情報機関と何らかの関わりを持っていたのかが今後の大きな焦点となります。
地元メディアは、この男について、すでに拘束されている2人の女に犯行を指示したと見られている4人の男のうちの1人で、警察は残る3人の男の行方を追っていると伝えています。
4人の男 拘束の女2人と行動か
今回の事件について、マレーシアの地元紙は事件発生の直前まで、4人の男が拘束された2人の女と一緒に行動し、犯行を指示していたと見られると監視カメラの映像などを基に伝えています。
このうち、18日付のマレーシアの地元紙ハリアンメトロは、4人の男のうち、黒い帽子をかぶった男は、ベトナムのパスポートを持つ女と事件の直前まで行動をともにしていたと伝えています。そして、この女が滞在していたホテルの監視カメラの映像だとして、受付で、女が黒い帽子をかぶった男と一緒に写っている写真を掲載しています。
男は事件の前に女が滞在していた5か所のホテルの代金をすべて支払っていて、事件の主犯格と見られるとしています。
一方、事件が起きた空港ビルの中にあるレストランの監視カメラの画像には、事件の45分前、いすに座って笑っているインドネシア人のシティ・アイシャ容疑者の姿が捉えられています。そして、4人の男と2人の女は、このレストランの店内で落ち合い、黒い帽子をかぶった男が女らに液体を渡したと説明しています。
また、4人の男のうち、青っぽい色のポロシャツを着た男が、シティ容疑者をこのレストランに連れてきたとしています。
記事では、4人の男は、このレストランで2人の女がキム・ジョンナム氏に対して犯行に及ぶ様子を店内で監視したあと、現場から姿を消したと伝えています。
いたずらのビデオ撮影 過去に複数回
インドネシア人のシティ・アイシャ容疑者について、インドネシア国家警察のティト長官は17日、記者団に対し、マレーシア当局からの情報として、「シティ容疑者は男性に目隠しをして、液体を吹きかけるいたずらビデオを撮影しようとしていたと供述している」と述べました。
そのうえで、「こうした撮影は、これまでにも3回か4回行っていて、1回当たり数ドルの報酬を受け取っていたと話している」と明らかにしました。
また、ティト長官は今回の事件について、「外国の工作員によって行われたと見られる暗殺行為の一環だとは本人は思っていなかった」と述べ、シティ容疑者が工作員に利用されたとの見方を示しました。
マカオ警察 キム氏の家族を保護か
キム・ジョンナム氏は殺害された際、マレーシアの空港からマカオに向かおうとしていたと伝えられています。
韓国の情報機関によりますと、マカオにはキム・ジョンナム氏の夫人と、息子でフランスなどに留学していたキム・ハンソル氏、それに娘が生活しているとしています。
また、キム・ジョンナム氏と親交のあった関係者などによりますと、もう1人の夫人とされる女性もマカオで暮らしているということです。
香港の新聞、「サウスチャイナ・モーニングポスト」は「マカオで暮らすキム・ジョンナム氏の家族が、マカオ警察の保護下に置かれた」と、18日までに伝えました。
マカオにある夫人らの住まいと見られる2つのマンションの周辺では、事件のあと、警察官が巡回して警戒に当たっています。
マカオの警察はメディアの問い合わせに対し、「個別の案件には答えられない」とする一方、「事態の推移を注視しており、住民の安全を守るため、最善を尽くす」とコメントしています。