アメリカの
中央銀行に当たる
FRB=
連邦準備制度理事会は、
景気の
減速を
防ぐため、
およそ10
年半ぶりの
利下げを
決めましたが、パウエル
議長は、さらなる
利下げには
慎重な
姿勢を
示しました。
これに対して
トランプ大統領は「
がっかりした」と
述べ、
早速圧力を
強めていて、
FRBは
難しい対応を
迫られ
そうです。
FRBは、31
日まで
開いた
金融政策を
決める会合で、
中国との
貿易摩擦の
長期化で
景気が
減速するのを
防ぐため、2008
年12
月以来、
およそ10
年半ぶりの
利下げを
決定しました。
FRBのパウエル議長は会合のあとの記者会見で、今後の金融政策については「今回の措置は長期にわたる利下げの始まりではない」と述べ、さらなる利下げには慎重な姿勢を示しました。
これに対してトランプ大統領は、ツイッターに「いつものようにがっかりした。私が聞きたかったのは長期の利下げの始まりだということばだ」と投稿し、今回の利下げだけでは不十分だとして、早速圧力を強めています。
また、ニューヨーク株式市場でも、パウエル議長がさらなる利下げには慎重だという受け止めが広がって、ダウ平均株価は一時、470ドルを超える大幅な下落となり、利下げを催促する展開となっています。
パウエル議長への政治圧力や市場の期待はやまないおそれもあり、FRBは次回、来月の会合に向けて難しい対応を迫られそうです。
各国中央銀行の“緩和競争”懸念
基軸通貨のドルを発行するアメリカのFRBの決定は、世界経済に強い影響力を与えます。
特に今回、懸念されているのが、FRBの方針を受けて世界各国の中央銀行が利下げを競い合う金融の“緩和競争”の広がりです。
すでにFRBが去年12月に景気拡大に伴って段階的に進めてきた利上げを打ち止めにして、金融の引き締め姿勢を転換してからは、利下げに踏み出す中央銀行が相次いでいます。
7月だけでも韓国、ロシア、南アフリカ、トルコ、インドネシア、31日にはブラジルまで利下げを決めたほか、ヨーロッパ中央銀行も今のマイナス金利をさらに引き下げる可能性を示唆しています。
各国ともに自国の経済を下支えする政策としていますが、FRBの利下げによってドルが値下がりした場合、反対に自国の通貨が値上がりし、輸出には不利になるという懸念があるとみられます。
FRBに圧力をかけてきたトランプ大統領は、中国やヨーロッパなどが金融政策を使って通貨安を誘導して輸出を増やしていることに対抗するべきだと主張していて、貿易摩擦をより激しくさせるおそれもあります。
そして仮に世界で行き過ぎた金融緩和が進めば、さまざまなリスクが高まります。
金融緩和によって大量の資金が市場にあふれ、お金を借りすぎてしまう個人や企業が出てくるおそれや、余ったお金が不動産などに集まって価格が異常に上昇して、景気が過熱するバブルが起きる可能性もあります。
また、景気がそれほど悪くないのに金融を緩和し続けると、いざ本当に深刻な経済危機が起きた時に、中央銀行として利下げなどの政策対応の余地が限られてしまうという懸念もあります。