警察は、自宅を1人で出たあと何らかのトラブルに巻き込まれたおそれもあるとみて行方を捜索。防犯カメラの映像などを分析したところ、容疑者が生徒を連れ回していた疑いがあることがわかり、警察は9月27日、未成年者誘拐の疑いで逮捕しました。
このとき容疑者の自宅に女子生徒の姿はありませんでした。
女子生徒の行方について容疑者は「生徒には自殺願望があり、9月23日、言われた場所に、車で連れて行って降ろした」などと供述。この供述に基づいて警察と消防が相模原市の山あいや近くを流れる川などで捜索を行ったところ、9月29日、生徒の遺体が見つかったということです。
現場の状況などから自殺したとみられています。
「突然の最愛の娘の死に、悲しみに暮れており、今は何も考えられません。犯人に対する怒りもありますが、上手く言葉にすることができません。今は気持ちの整理で精いっぱいです。報道機関の皆様には、このような心情をご理解いただき、静かに娘の死を悼む時間を過ごせますよう、ご配慮を賜りたいと思います」(全文)
【SNS絡む事件相次ぐ】 去年3月には、静岡県浜松市内の中学3年の女子生徒が、福岡市の人物とSNSと知り合って、その後、自殺する事件がありました。 また今月、札幌市内で22歳の女子大学生の遺体を遺棄したとして53歳の容疑者が逮捕された事件でも、2人はSNSで知り合ったとみられています。 捜査関係者によりますと、容疑者は女子大学生がSNSで「死にたい」という趣旨の投稿をしているのを見て、「いいね」のボタンを押して接触を図ったなどと供述しているということです。 【去年は1800人がSNS通じ事件に】 警察庁によりますと、2021年、1年間にSNSを通じて犯罪の被害にあった18歳未満の児童や生徒の数は全国で1812人に上りました。 (2021年=1812人、2020年=1819人、2019年=2082人、2018年=1811人、2017年=1813人) 内訳は高校生と中学生が1655人と全体の91%を占める一方、小学生も83人と、この10年間で7倍以上に増え、最近は被害の低年齢化が進んでいます。 また、犯罪の種類については、青少年保護育成条例違反、児童ポルノ、児童買春の3つが全体の9割以上を占めますが、性的暴行や略取・誘拐など凶悪な犯罪の被害にあうケースも少なくありません。 このうち、「略取誘拐」の被害にあった児童は去年は86人と、2017年からの5年で最も多くなっています。 (2017年=21人、2018年=42人、2019年=46人、2020年=75人、2021年=86人) 【子どもの書き込み見て誘う手口】 警察によりますと、ツイッターなどのSNS上では、10代の少女の「家出したい」といった書き込みに対し、大人が「家に泊めてあげる」などと誘い、誘拐などの事件となるケースが相次いでいるということです。 警察は、「家出」や「自殺」に関する書き込みをしているアカウントなどに対して「見ず知らずの相手と会うことは性犯罪や誘拐、殺人などの重大な事件に巻き込まれるおそれのある大変危険な行為です」などと投稿して、注意を呼びかけています。
都道府県が実施している電話相談などにつながる「こころの健康相談統一ダイヤル」 0570-064-556 自殺の防止などに取り組む一般社団法人「日本いのちの電話連盟」が行う「いのちの電話」 0120-783-556もしくは0570-783-556 文部科学省が子ども向けに行う「24時間子供SOSダイヤル」 0120-0-78310 「自殺対策支援センターライフリンク」の「生きづらびっと」 LINEで@yorisoiーchat 「東京メンタルヘルス・スクエア」の「こころのほっとチャット」 LINEやツイッターで@kokorohotchat 「BONDプロジェクト」 LINEで@bondproject
東京のNPO法人「OVA」は、「死にたい」などと自殺に関連することばを検索した人に紹介される相談窓口の1つです。 NPOによりますと、10代の女性は家族関係に悩んで自殺願望を抱くようになり、ツイッターで「死にたい」と投稿したところ、大人とみられる人物から「集団自殺をしないか」と誘われたということです。 そして、何回か連絡を取り合うようになって日にちを決めて、実際に会う約束を交わしました。 その後、女性はインターネットで「自殺」などと検索したときに、「OVA」の相談サイトを見つけ、およそ半年にわたってメールやLINEで、やり取りを続けました。 相談の中で、家族関係に悩んでいることやツイッターで知り合った人物から自殺に誘われたことを打ち明けていくうちに自殺願望は和らぎ、女性は実際に会うことを思いとどまったということです。 また、別の10代の女子大学生は友人関係の悩みを打ち明けられる人が周りにおらず、「OVA」に相談したということです。 団体は、学生の悩みなどの相談に応じるスクールカンセラーを紹介し、女子大学生は専門的な知識のある人になら安心して悩みを相談できると考え、通うようになったということです。 「OVA」の相談員を務める臨床心理士の清水幸恵さんは、「SNSは、同じような悩みを持つ人と出会える場の一方、死にたい気持ちを持った人とつながり、集団自殺を持ちかけられるといった危険なリスクがある。つらい気持ちを安心して話せる場所をインターネット上や現実社会でもっと増やしていく必要があると思う」と話していました。
NPOによりますと、昨年度の相談のおよそ4分の1は10代からで、家庭での居場所がないとか、学校での人間関係がうまくいかず、孤独や不安を感じているといった声が寄せられているということです。 また最近は、インターネット上の交流の場でのトラブルをきっかけとした相談も増えてきていて、スマーフォンを持つ小学生からの相談もあるということです。 メールやLINEなど相談方法が多様化する中、NPOでは相談員の対応スキルをどう向上させていくかが課題だと感じています。 1500人余りからの相談に対し、39人の職員がメールやLINEなどで対応にあたりました。 多くの職員は、これまで対面や電話で相談を受けた経験はありますが、メールやSNSなどで対応した経験は少なく、研修を通じてノウハウを学んでいるということです。 NPO法人「OVA」の伊藤次郎代表は、「座間の事件以降、有害な書き込みをパトロールしたり、相談窓口に誘導したりするネットやSNSの対策はかなり進んできている。ただ、自殺に関連することばをつぶやいたり、調べたりする人の数は減っていない。子どもたちが相談しやすい、SNSやチャット、メールといった窓口を強化するとともに、それに対応できる相談員の育成も進めきたい」と話しています。
杉原教授は今回の事件について、「座間市でSNSで知り合うなどした9人が次々と殺害された事件をはじめ、SNSをきっかけにして命が失われる事件がまたしても起きてしまい、大変心を痛めている」と話しました。 そのうえで、「若い人たちにとっては、SNSがコミュニケーションの基本的なツールになっていて、抱えている孤独な思いを最初にさらけ出す場所がSNSとなっている。その一方、悪意のある人物がSNSの投稿を閲覧したり、接触しようとしたりすることに、若い人の意識が向いていないケースが多い。今回の事件では、SNSにひそむ危険性が改めて明らかになった」と話しています。 SNSをきっかけとした事件への対策については、「国や自治体は相談窓口をSNS上に設ける取り組みに力を入れ始めているが、期間限定となっているところも多い。常設のSNS上の相談窓口を増やすとともに、学校や地域社会とも連携したサポート体制を構築することが急がれる」と指摘しています。
女子中学生の両親がコメント
容疑者が暮らすアパートの男性「全く面識ない」
きっかけはSNS 去年は1800人が事件に
相談窓口
「あなたのいばしょ」https://talkme.jp
“集団自殺しないかと誘われた”といった相談も
NPO法人“相談員の対応スキル向上も課題”
専門家「SNSにひそむ危険性が改めて明らかに」