第1管区海上保安本部と警察は、行方不明者につながる手がかりを見つけようと、21日から改めて半島先端部の沿岸で集中的な捜索を行っています。
23日は沿岸付近の波が高く、潜水士らによる捜索は行えていませんが、天候が回復すれば陸上と海上の二手に分かれて手がかりを探すことにしています。
22日までの2日間の捜索では合わせて16の骨のようなものが見つかっていて、今後、DNA鑑定が進められる見通しです。
このうち、昼前には地元の70代の女性ら2人が献花に訪れ、花を手向けたあと静かに手を合わせていました。 女性は「事故のことがつらく、忘れられないです。行方不明者が早く見つかってほしいです」と涙ぐみながら話していました。 斜里町によりますと、これまでに1900以上の献花があったということで「一刻も早く行方不明の方々が見つかることを願っています」とか「皆さんが一日でも早く大切な人の元へ帰れますように」といったメッセージも添えられています。 町役場では土日・平日を問わず献花を受け付けていて、事故から半年となる今も毎日のように花束のほか菓子や飲み物を供えに訪れる人がいるということです。
また、海上保安本部は、運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長から任意で事情を聴くなどして業務上過失致死の疑いで捜査していますが、事故原因が特定されない中で捜査は長期化が予想されています。
札幌弁護士会に所属する山田廣弁護士は、沈没事故のあと乗客の家族からの賠償請求などを支援するため、弁護士有志が立ち上げた被害者弁護団の団長を務めています。 今月12日、NHKの取材に応じた山田弁護士は「損害賠償を求めるに当たり、国家賠償の訴えを提起すれば、安全運航に関する社会的な議論の高まりや新たな法的な施策も期待される」と述べて、運航会社だけでなく、監督する立場の国や船体を検査した日本小型船舶検査機構への責任追及も検討していることを明らかにしました。 そのうえで「ご家族の意見を聞きながら検討を進めていきたい」と述べました。 また、家族の間には、運航会社の桂田精一社長に改めて謝罪を求める声が多いということです。 これについて、山田弁護士は「事故直後に開かれた記者会見での謝罪には誠意が感じられなかった。事故を起こした責任と真摯(しんし)に向き合い、心を込めて謝罪をしてもらいたい」と話していました。
37年前の日航ジャンボ機墜落事故で当時9歳の息子を亡くした美谷島邦子さん(75)もその1人で、観光船の沈没事故のあと国から依頼を受け、被害者家族を支えるアドバイザーを務めています。 国が家族向けに開いている行方不明者の捜索状況などに関する説明会に参加しているほか、乗客の家族とオンラインで個別に面談し、主に心のケアに当たっています。 美谷島さんによりますと、家族の中には事故のあと体を壊したり、心身共に疲れ果ててしまったりした人もいるということです。 美谷島さんは「被害者家族の皆さんは事故原因や責任問題、賠償のことで頭がいっぱいですが、いちばんあるのは亡くされた家族への尽きることのない思いなのだと感じます。『私たちも同じだったよ』と言葉をかけてあげることしかできませんが、一歩一歩、生きてほしいと願っています」と話しています。 そのうえで「船でも飛行機でもバスでも同じですが、万一の事故に備えて会社が被害者支援計画を作っておくべきです」と述べて、事業者側も被害者支援について日ごろから準備し、利用者に向けて発信していくべきだという考えを示しました。
斜里町役場の献花台には花を手向けに訪れる人も
乗客の家族の代理人「運航会社だけでなく国の責任追及も検討」
別の事故で家族を亡くした遺族らが被害者家族の心のケア