ことし8月、尼崎市にある三菱電機の事業所に配属された新入社員の20代の男性が、上司からのいじめを訴える趣旨のメモを残して自殺し、警察は先月、新入社員の教育担当だった30代の男性上司を自殺を教唆した疑いで書類送検しています。
18日は都内で遺族の代理人弁護士が会見を開き、男性が亡くなる直前に書き残したという直筆のメモを公表しました。
メモには、上司から「飛び降りるのにちょうどいい窓あるで」、「自殺しろ」などと言われたと記されていて、代理人弁護士は、男性が自殺したのは上司からのパワハラが原因だったとして、今後、労災を申請するほか、会社側に再発防止を求めていく考えを明らかにしました。
また遺族のコメントを読み上げ、「私たち家族は息子の死を現実に受け止めることができず、いまだ苦しい思いをしています。息子の死ときちんと向き合っていただき、どうか私たちのような悲しいできごとが2度と起こらないようにしてほしいとせつに望みます」と訴えました。
代理人弁護士は「会社側から遺族に対して謝罪や詳細な説明がない。社内では過去にも同様の事案が起きているため、今度こそ再発防止に向けて取り組んでほしい」と話しています。
三菱電機をめぐっては、おととし兵庫県内で新入社員の男性が自殺し、いじめや嫌がらせが原因だったとして両親が損害賠償を求めて会社を提訴したほか、おととし自殺した子会社の社員の男性については、ことし10月、過労による自殺だったとして労災が認められています。
遺族がコメント「胸が張り裂けそう」
遺族が出したコメントでは、亡くなった男性の人柄について「息子は手を抜いたり逃げたりすることなくコツコツと努力ができる子でした」、「亡くなる前、今年のお盆休みに実家に帰省し、『初めての賞与が入ったから家族にご飯をごちそうしたい』と言って焼き肉に連れて行ってくれたのです。みんなでご飯を食べたあと、息子が私たちに言いました。『大学に行かせてくれてありがとう』と。家族だけでなく友人たちなど周りに気遣いができる優しい息子でした」と記しています。
一方、上司からの発言などに関する記録については、「入社して数か月、それも配属後2か月に満たない新人に『殺すからな』や『自殺しろ』などという言葉を投げかけるとはどのような教育指導をされていたのでしょう。専門的なことは私たちにはわかりません。
ですが、息子の仕事に関するノートやたくさんのメモを見るといろんな思いが浮かび胸が張り裂けそうです」としています。
また、過去にも会社でいじめや嫌がらせがあったとして、会社側の対応について「これまでの対応を見る限り反省の色はみられず、保身に全力を注いでいるように感じます。今後も同じような事例が起きそうで心配でなりません。息子もこういったことが二度と起きないことを望んでいると思います」とコメントしています。
三菱電機「重く受け止め真摯に対応」
三菱電機は、新入社員の男性が自殺したことについて、「亡くなられた方のご冥福を深くお祈り申し上げるとともにご遺族の皆さまに心からお悔やみ申し上げます。前途ある新入社員が尊い命を落とす事態が起きましたことを非常に重く受け止め、本件について真摯(しんし)に対応してまいります。現在、当局が捜査中であり、詳細な回答は差し控えさせていただきます。捜査には全面的に協力してまいります」というコメントを出しました。