捜査関係者によりますと、東海北陸厚生局麻薬取締部に逮捕されたのは長野県内の16歳の少年で、合成麻薬のLSDを隠し持っていたとして、麻薬取締法違反などの疑いが持たれています。
LSDは強い幻覚作用がある麻薬の一種ですが、10月に逮捕されたこの少年は、発信元の特定を難しくする特殊なソフト「Tor」を使って、通常の検索サイトではたどり着けない秘匿性の高いサイト「ダークウェブ」を通じて入手したとみられるということです。
調べに対し少年は「興味半分でやった」などと供述していたということです。
「ダークウェブ」は、書き込んだ人物を特定しにくく、犯罪の温床になっているとみられていて、捜査当局は、こうしたサイトを経由した違法薬物の流通に警戒を強めています。
サイバー空間に広がる闇市場
ネット空間は氷山に例えることができます。
まず、GoogleやYahoo!などで検索して閲覧できる空間です。誰でも自由にアクセスでき、「サーフェイスウェブ」と呼ばれています。
私たちがアクセスしているのは、ほとんどがこの「サーフェイスウェブ」ですが、実は、これらはネット空間のごく一部、海面に突き出した氷山の一角にすぎません。
大部分を占めているのが、限られた人しかアクセスできない空間です。氷山に例えると海面の下の部分にあたり、「インターネットの深層」という意味で「ディープウェブ」と呼ばれます。
個人のメールや企業のデータベース、フェイスブックやツイッターの非公開ページなどがこれに当たります。
そして、今回の事件でも使われた「ダークウェブ」。
「ディープウェブ」のさらに下にあり、氷山でいうと底の部分で、深海に最も近い場所に位置します。通常の検索サイトではたどり着けず、専用のソフトがないとアクセスできません。
発信元が特定されにくく、「ダークウェブ」上では、
▽覚醒剤やLSDなどの違法薬物
▽偽造パスポート
▽不正に入手されたクレジットカード情報
などが取り引きされていて、犯罪の温床にもなっています。
平成28年には、津市の21歳の男が、ダークウェブ上の掲示板に銀行口座の売買を持ちかける書き込みをしたとして逮捕されたほか、高い殺傷力がある爆発物を製造したり、3Dプリンターで拳銃を作ったりしたとして、ことし実刑判決を受けた名古屋市の元大学生も、ダークウェブで爆発物や薬品などの情報を入手していたとみられています。
サイバー空間にこうした「闇市場」が広がり、犯罪の敷居が低くなっていると考えられています。
専門家「ダークウェブの中に潜っている」
犯罪の手口や防犯に関する調査研究を行うシンクタンクの清永奈穂所長は「ダークウェブは、知識がないとアクセスするのが難しいと言われてきたが、ある程度の知識があれば一般の若者でもアクセスしやすくなっているのではないか。多種多様な非合法の薬物が安易に手に入る市場が広がっていると言える」と指摘しています。
そのうえで「誰でもアクセスできる『サーフェイスウェブ』での取締りが強化され、違法なものを入手したいと考える者たちが、さらに『ダークウェブ』の中に潜っている現状がある。子どもたちは、興味本位でダークウェブ上の違法サイトにアクセスしてはいけないことを認識する必要がある」と話しています。