政府 さらなる自由貿易圏の拡大を
農産品と工業品の物品関税に関する日米の新たな貿易協定は、1日午前0時に発効しました。協定で、日本はTPP=環太平洋パートナーシップ協定の水準を超えない範囲で農産品の市場開放に応じ、牛肉は、38.5%だった関税が1日から26.6%になり、最終的には9%まで引き下げられます。
一方、工業品の最大の焦点だった自動車分野では、協定の履行中、アメリカが日本車への追加関税を発動しないことを首脳間で確認したほか、日本が求めている関税の撤廃については継続協議となり、両政府は、4か月以内に次の交渉分野をめぐって協議を行う方針です。
茂木外務大臣は「日米貿易協定の発効により、TPP協定や日本とEUのEPA=経済連携協定と合わせ、世界経済のおよそ6割をカバーする自由な経済圏が日本を中心に誕生する。その意義は極めて大きい」と述べました。
政府は、自由貿易圏のさらなる拡大に向け、インドを含む16か国によるRCEP=東アジア地域包括的経済連携の早期妥結や、WTO=世界貿易機関の改革などにも主導的に取り組む方針です。
国内 値下げ期待も農業生産額は減少へ
日米貿易協定が発効したことでアメリカ産の農産品の関税が引き下げられ、消費者にとっては価格の値下がりが期待される一方、国内の農業生産額は減少すると見込まれています。
協定の発効によって、アメリカから輸入される主な農産品のうち、牛肉は38.5%だった関税がTPPと同じ水準の26.6%になり、最終的に2033年度には9%まで下がります。
豚肉は、価格の安い肉にかかる1キロ当たり最大482円だった関税が125円に、価格の高い豚肉の関税は4.3%から1.9%に下がり、その後も段階的に引き下げられます。
オレンジは、国内のみかんの出荷が多い12月から3月までの期間、32%だった関税が25.6%に下がり、2025年度に撤廃されます。
ワインは一般的な750ミリリットル入りのボトルにかかる最大およそ94円の関税が、段階的に引き下げられ2025年度に撤廃されます。
こうした関税の引き下げは、価格の値下がりにつながり、消費者にとってはメリットが期待できます。
一方、こうした安い農産品の輸入が増える影響で、国内の農業生産額は最大1100億円減少すると試算されています。
このため、政府は国内の畜産農家に対する施設整備の補助や輸出増加が期待される和牛生産の奨励金を拡充するなどして、支援を行う方針です。
また政府は、日米貿易協定は日本のGDP=国内総生産を4兆円余り、率にして0.8%押し上げると試算していますが、これは継続協議とされた自動車などの関税撤廃を前提にしています。
次の交渉分野をめぐり今後4か月以内にアメリカと協議する方針ですが、協定を経済成長につなげられるかは、自動車などの関税撤廃を具体的に決めることができるかが焦点となります。
経団連会長「意義は大きい」
日米貿易協定が発効したことについて、経団連の中西会長は、「日米間の貿易を強力かつ安定的で互恵的な形で拡大することを目指したこの協定を歓迎する。世界経済の先行きの不透明感が増す中で、TPP11や日EUの経済連携協定と合わせて、世界のGDPのおよそ6割をカバーする自由で開かれた市場が誕生することの意義は大きい」としています。
そのうえで中西会長は、「強固な日米関係を基盤に、インド・太平洋地域でのインフラ整備やエネルギー開発などで両国の協力を推進するとともに、RCEP=東アジア地域包括的経済連携の早期実現などに向けて、引き続きリーダーシップを発揮してもらいたい」としています。
経済同友会「予断持たず準備を」
日米貿易協定が発効したことについて、経済同友会の櫻田代表幹事は、報道各社のインタビューで「農産品については、TPPの水準以下で合意できたうえ、自動車についても、協定を誠実に履行している間は追加関税措置は発動しないと約束されたことは大変大きな成果だと思う」と述べました。
そのうえで「自動車分野以外については、これから協議が始まるが、いつどうやるかは何も決まっていない。分野としては、金融、通信、サービスが対象となる可能性があるので、日本としてしっかりリーダーシップを取るよう予断を持たず準備してもらいたい」と述べました。