しかしコースにアップダウンが多いことなどから好記録が出にくいとして国内のトップレベルの選手が参加を見送るケースが増え、先月の大会は東京オリンピックのマラソン女子日本代表の残り1枠をめぐって争われる対象レースの1つだったにもかかわらず、国内からの招待選手の参加はわずか1人にとどまっていました。
こうした中で関係者によりますと、主催者側は、有力選手の参加が増えず大会への注目度が上がらない中で代表選考レースとして維持するのは難しいとして、7億円余りかけて行う例年どおりの規模のレースはできないと判断し、ことしの大会の開催を見送る方針を固めたということです。
ただ一般ランナーを含め例年2万人近くが参加する県内最大のマラソン大会でもあることから、主催者側は来年以降、市民マラソンとして実施する方向で検討を進めています。
「さいたま国際マラソン」とは
「さいたま国際マラソン」は、財政難などを理由に2014年に終了した「横浜国際女子マラソン」を引き継ぐ形で2015年からスタートしました。
さいたま市や埼玉県、それに日本陸上競技連盟など5つの主催者が、総事業費およそ7億円を持ち寄る形で、先月まで5回開催されてきました。
トップレベルの選手が一定以上参加するなどの基準を満たす、陸上の国際競技団体の世界陸連も公認する大会で、オリンピックや世界選手権のマラソン女子日本代表の選考レースの1つとして行われてきました。
また、一般ランナーも参加できるマラソン大会としては埼玉県内では最大規模で、先月の大会では1万7000人余りが走りました。
しかし関係者によりますと、ふだんから交通量の多い主要国道などが長時間にわたり規制されるため警備費用などの運営コストがかさむ一方で、首都圏からのアクセスがいいこともあり、大会の前後で宿泊する人も少ないことから、地元では「地域への経済波及効果は限定的だ」などと、指摘する声も出ていました。
高い難易度 有力選手たちが敬遠
さいたま国際マラソンはさいたま市中央区の「さいたまスーパーアリーナ」を発着点とし、さいたま市と越谷市をめぐるコースですが、2015年の第1回大会から、細かいアップダウンが続くなど、大会関係者の中では難易度の高さが指摘されていました。
このため運営側は、レース終盤にあった上り坂をほぼ平たんな道に変更するなど、毎年のようにコースの見直しを行ってきました。
こうした中で、2017年と2018年のレースは東京オリンピックのマラソンの代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の女子の出場権を争うレースとなりました。
日本陸連はコースの難しさを考慮し、「さいたま国際マラソン」の基準となる記録を「大阪国際女子マラソン」や「名古屋ウィメンズマラソン」と比べ1分遅くしましたが、有力選手の参加見送りが相次いだこともあり、出場した日本人選手は1人も基準に届かず、2年続けて「さいたま国際マラソン」から出場権を獲得する選手はいませんでした。
また、去年12月の大会は東京オリンピックの女子代表の残りの1枠をかけたMGCファイナルチャレンジの初戦でしたが、トップレベルの日本人の招待選手の参加はわずか1人にとどまりました。
一方で、1月26日に行われるMGCファイナルチャレンジ2戦目の「大阪国際女子マラソン」は10人の日本人の招待選手が参加予定で、「さいたま国際マラソン」が有力選手たちから敬遠されていたことがうかがえます。