今回で3回目となる冬のユースオリンピックは、今月9日からスイスのローザンヌなどを会場に行われ、79の国と地域から1800人余りの選手が8つの競技合わせて81種目に出場しました。
大会は22日、すべての競技が終了しローザンヌ市内の特設会場で閉会式が行われました。
式の中で、バッハ会長は大会は成功したと述べたあと「大会を盛り上げた選手や、ここに集まった皆さんをたたえます」と選手や観客たちに声をかけていました。
そして、オリンピックの旗がローザンヌ市長から4年後に冬のユースオリンピックが開催される韓国のカンヌン市の副市長に引き継がれ、最後に会場の外にある聖火が消され、14日間の大会は幕を閉じました。
大会を振り返り、金メダルを獲得したアイスホッケー女子のキャプテン、鎌田美南選手は「初出場で初優勝を飾ることができてとてもうれしい。メダルを取った実感もわいてきた」と話しました。
そして、「大会では今後の課題も大きく見えた。これから頑張って、オリンピックに出場したい」と気を引き締めていました。
また日本選手団の主将で、カーリングミックス団体の銀メダル獲得に貢献した田畑百葉選手は「長いようで短かったが自分にとって内容の濃いだった」と話しました。
そのうえで、大会に出場した意義について「メダルを獲得できた以上に、仲間や人間性の大切さを知ることができてよかった。ほかの国や競技が違う選手と交流を深めることができた」と話しました。
大会最終日に女子ビッグエアで金メダルを獲得した浅沼妃莉選手は「自分のやりたいことをやりきって金メダルがとれた最高の気分だ。また、ユースオリンピックでさまざまな選手たちとも交流が出来ていい経験になった。次は北京オリンピックでメダル獲得が出来るようにトレーニングにはげみたい」と笑顔で話していました。
ローザンヌで見えた“持続可能”への改革
IOCの本部がある、まさにおひざ元のあるローザンヌなどで開かれた今回のユースオリンピックは、時代の変化にあわせた大会運営の必要性を訴えるIOCの理念を形にした大会となりました。
バッハ会長は、大会を総括する会見の中で「IOCが求める持続可能性の高い大会運営のための改革案を実施した質の高い大会だ」と評価しました。
この発言の背景には、多額の開催費用などを理由に招致活動の冷え込みが指摘されているオリンピック・パラリンピックをめぐる現状があります。
“費用削減”を具現化
IOCはこれまでに「アジェンダ2020」などで、費用削減のための提言を掲げ、大会の継続性を担保しようとしてきました。
提言では、既存施設を積極的に活用することや、競技の一部を開催国でなくても実施できるようにして開催地の負担を抑える必要性があるとしています。その提言を具現化したのが今回のローザンヌ大会となりました。
既存施設の活用
ほぼすべての競技が既存の施設で実施されたほか、スピードスケートは最近の国際大会では見ることが無くなった天然の氷のリンクで行われました。
日本円で3億円を超える新たなリンクの建設費用を抑制し、大会後の維持管理に必要な費用もかからないことなどを、競技会場の責任者はメリットとしてあげています。
選手受け入れは「ウェーブ方式」
さらに、選手の受け入れに関しては大会を前半と後半に分ける「ウェーブ」という考え方を導入しました。
参加する1800人あまりの選手を前半と後半で入れ替えることで、新たに整備する選手村の部屋を900人分に抑えました。
この選手村は、大会後地元のローザンヌ大学の学生寮として利用されます。
選手や大会関係者の輸送費用に関しても、専用のバスなどは用いず、スイス国内の発達した公共交通機関を活用することで、大幅に削減することに成功しました。
持続可能な大会 東京は?
今回のユースオリンピックを通して示されたIOCの危機感と、コスト抑制のために実施されたさまざまな施策は、今後の大会運営の参考となるものでした。
もちろん、大会規模が大きく異なることから一概に比較できませんが、IOCや大会関係者からは、この夏の東京で世界最高のスポーツの祭典を持続可能な大会とするために、どのような取り組みがなされるのか、すでに厳しい目が注がれています。
(ローザンヌユース五輪取材班 記者 国武希美・川本聖)