これで製品を摂取した後に死亡したことが分かった人は5人となり、会社は29日午後、記者会見を開くことにしています。
※記事後半に「回収対象」となっている製品の一覧表をまとめています。
小林製薬の「紅麹」の成分が含まれた健康食品をめぐっては、摂取したあとに腎臓の病気を発症するなどして29日午前時点で5人が死亡、のべ93人が入院したことがわかっています。
最初の死亡事例が公表されたのは今月26日で、亡くなった人は「紅麹コレステヘルプ」を2021年4月からおよそ3年間購入していました。会社や国によりますと、急性腎不全でことし亡くなったということです。
あとの4人については、遺族から会社に対し亡くなる前に「紅麹コレステヘルプ」を摂取していたと連絡があり、いずれも腎臓の病気が疑われる報告があったということです。
摂取の時期や詳しい病状は分かっていないケースもあり、会社は「原因となった疑いがある」として調査を進めています。
また厚生労働省への会社の報告によりますと27日までの時点で入院した人はのべ93人、医療機関を受診した人はのべ379人、会社が受けた相談件数はおよそ1万2000件となっています。
「紅麹」の成分を含む「紅麹コレステヘルプ」など3種類の製品については大阪市が有害な物質が含まれている疑いがあるとして、食品衛生法に基づき、回収を命じる行政処分を出しています。
想定していない成分含まれたか 分析急ぐ
小林製薬によりますと、これまでに、腎臓の病気を発症した人が摂取した「紅麹コレステヘルプ」の製造時期を調査する中で、想定していない成分が去年4月から12月にかけて製造した紅麹の原料に含まれている可能性があることが分かっているということです。
この成分はカビから作られるものに似ているということで、会社は成分の分析を急ぐとともに、発生したいきさつや人体への影響などを調べることにしています。
会社は29日午後に大阪市内で記者会見を開くことにしていて原因の究明や製品の回収がどこまで進んだかなどについて説明するものとみられます
坂本農林水産大臣「製品の迅速な回収に全力を」
坂本農林水産大臣は、29日の閣議の後の会見で、「健康被害の拡大防止が最優先であり、小林製薬には製品の迅速な回収に全力を挙げてもらいたい」と述べ、回収命令の対象となった製品の迅速な回収を会社側に求めました。また、坂本大臣は「消費者の不安が広がっていることから正しい情報の提供に努める」と述べ、消費者の不安の解消に向けて正確な情報発信に取り組んでいく考えを示しました。
武見厚生労働大臣「4350個が回収」
武見厚生労働大臣は、衆議院厚生労働委員会で大阪市が回収命令の対象としている3つの製品の回収状況について、「市によると28日午後4時時点で、『紅麹コレステヘルプ』は4350個が回収され、『ナイシヘルプ+コレステロール』と、『ナットウキナーゼさらさら粒GOLD』についてはゼロだ」と述べました。
厚生労働省によりますと、▽「紅麹コレステヘルプ」は2021年から今月までおよそ100万個が販売されていて、回収率はおよそ0.4%だということです。
また、閣議のあと記者団に対し「ほかの省庁との共同作業を円滑に行うため、厚生労働省内に『省庁間連携室』を設けるとともに、タスクフォースを設置をした。さらに、国民や事業者からの問い合わせに対応するコールセンターを設置する準備を進めている」と明らかにしました。その上で「小林製薬から状況の説明を受け、国立医薬品食品衛生研究所の協力を得ながら、現在、検証を行っているところで、早期の原因究明に取り組んでいく」と述べました。
“台湾でも腎臓の病気を発症”報道
台湾でも、小林製薬の紅麹原料を使ったサプリメントを摂取して腎臓の病気を発症した女性がいると報じられるなど、この問題に高い関心が寄せられています。
台湾の複数のメディアが28日伝えたところによりますと、病気を発症したとされるのは、南部の高雄に住む70代の女性です。
この女性は、台湾のメーカーが小林製薬の紅麹原料を使って製造したサプリメントを3、4年前から摂取していましたが、去年3月に急性腎不全と診断されたということです。
台湾メディアは、女性の夫の話をもとに報じていますが、現地の衛生当局は、このサプリメントが病気につながったかどうかはまだ分かっていないとしています。
衛生当局によりますと、域内にも小林製薬の紅麹原料を輸入された記録が見つかったということで、現地の30を超える業者がこれらを使った製品の自主回収などの対応に追われています。
こうしたことから台湾でもこの問題に高い関心が寄せられています。
=これまでの経緯 時系列=
=紅麹とは?機能性表示食品とは?=
紅麹とは
「紅麹(べにこうじ)」は米などの穀類に紅麹菌を繁殖させてつくられたもので、古くから食品の着色料などとして使われてきました。
紅麹の「ロバスタチン」という成分にはコレステロールを低下させる作用があるとされ、紅麹由来の健康食品などが多く販売されています。
一方、紅麹菌の中には「シトリニン」というカビ毒をつくるものもあり、腎臓の病気を引き起こすおそれがあるとされています。
国の食品安全委員会によりますと、ヨーロッパでは紅麹由来の健康食品による健康被害が報告されていて、EU=ヨーロッパ連合は健康食品に含まれる「シトリニン」の基準値を設定しているということです。
小林製薬によりますと、今回の報告を受けて成分を分析したところ、「シトリニン」は検出されなかったということです。
一方で「シトリニン」とは別の未知の成分の存在を示す分析結果が得られたということで「意図しない成分が含まれている可能性が判明した」としています。
内科専門医「紅麹そのものが悪者というわけでは決してない」
「紅麹」について、名古屋大学特任教授で総合内科専門医の柴田玲医師は「紅麹は紅麹菌というカビの一種で米など穀物類を発酵させてつくられ、中国や台湾などでは薬膳や漢方薬として使用している。また、医薬品としてコレステロールを下げるために使う薬の成分と同じ成分が紅麹の中には含まれている。健康食品として使っているのに加えて、例えば着色料などたくさんの分野で出荷されている」と話しています。
もしも、対象となった商品を口にした場合はどうすればいいのかについては「まずはおしっこの出が悪くなったとか、すごく手足がむくむなとか、そういった症状があれば医療機関に相談してほしい」と話しています。
一方で消費者には冷静な対応を呼びかけていて、柴田医師は「紅麹そのものが悪者というわけでは決してない。該当する食品や製品とは別の物で紅麹を摂取している方が極端に不安に思う必要はないので、このあたりは十分理解して欲しいと思う」と話しています。
「機能性表示食品」とは
「機能性表示食品」は、パッケージに、健康の維持や増進に役立つという食品の機能を表示したものです。
販売前に、事業者が食品の安全性や機能性の科学的な根拠などを、国が定めるルールにのっとり消費者庁に届け出て公表する必要がありますが、許可制ではなく、国の審査も行われないため、事業者の責任で適正に販売することになっています。
効果や安全性を国が審査する「特定保健用食品」や、すでに科学的な根拠が確認された栄養成分を一定の基準量を含めば国が定めた表現によって機能性を表示できる「栄養機能食品」とは異なる制度となってます。
=「回収命令」を受けた小林製薬の3製品=
大阪市は、有害な物質が含まれている疑いがあるとして27日に「紅麹」の成分を含む「紅麹コレステヘルプ」「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」「ナイシヘルプ+コレステロール」の3種類の製品について、食品衛生法に基づき、回収を命じる行政処分を出しました。
回収の対象となるのは、あわせておよそ100万個で、市は回収が完了した時点で改めて製品の廃棄命令を出す方針です。
これ以外にも、全国では紅麹原料を使った製品を自主回収する動きが相次いでいます。
=自主回収となった「紅麹原料」使用製品=
厚生労働省は、小林製薬が製造した紅麹原料を使った製品のうち、事業者が届け出た自主回収の対象となっている製品の情報をまとめてホームページで公表しています。
厚生労働省は、食品衛生法違反のおそれがあるとして、自主回収となった食品について新たな健康被害の発生を防ぐため事業者に対し、「食品衛生申請等システム」での報告を義務づけて公表しています。
厚生労働省によりますと、今回の問題を受けて、小林製薬の紅麹原料を使った製品を、各社が自主回収する動きが相次いでいて、28日午前10時半の時点で、54件の自主回収の届け出があったということです。
各社が届け出た情報によりますとこれらの製品では、今のところ健康被害は確認されていないということです。
厚生労働省は、これらの製品が手元にある場合は購入した店舗やメーカーに連絡するほか、ホームペ-ジのリストに掲載された保健所でも、体調不良などについての相談を受け付けているということです。