南極氷床なんきょくひょうしょうの下したで進すすむ融解ゆうかい、海面上昇かいめんじょうしょうは予想以上よそういじょうに加速かそくか　英研究所えいけんきゅうじょ

南極大陸なんきょくたいりくで氷床ひょうしょうの融解ゆうかいが進すすむなか、氷床こおりゆかの下したに暖あたたかい海水かいすいが少すこしずつ流ながれ込こんでいる現象げんしょうが新あらたに見みつかり、海面かいめんが予想以上よそういじょうの速はやさで上昇じょうしょうする可能性かのうせいが指摘してきされている。

英南極研究所えいなんきょくけんきゅうじょ（ＢＡＳ）のチームが、２５日発行にちはっこうの地球科学ちきゅうかがくの専門誌せんもんし「ネイチャー・ジオサイエンス」に報告ほうこくした。

チームによると、氷床こおりゆかが海うみへ押おし出だされて棚氷たなごおりとなる境界きょうかいの「接地線せっちせん」から、比較的暖ひかくてきだんかい海水かいすいが氷床こおりゆかの下したに向むかって入はいり込こんでいる。これによって氷こおりに空洞くうどうができ、より多おおくの海水かいすいが流ながれ込こみ、さらに空洞くうどうが大おおきくなるというサイクルが続つづいている。

海水温かいすいおんがわずかに上あがるだけでも、解とける氷こおりの量りょうは大おおきく影響えいきょうされるという。

ＢＡＳの研究者けんきゅうしゃによると、このサイクルに歯止はどめがかからず、融解量ゆうかいりょうが突然変化とつぜんへんかして後戻あともどりできなくなる「転換点てんかんてん」に至いたる事態じたいも想定そうていされる。

転換点てんかんてんを越こしえると大陸たいりくの氷こおりが海うみへ流ながれ出だす速度そくどが急きゅうに上あがる。海面上昇かいめんじょうしょうを予測よそくする現行げんこうのモデルにはこの要因よういんが含ふくまれていないため、実際じっさいの上昇じょうしょうは大おおきく速はやまる可能性かのうせいがある。

チームによれば、海面上昇かいめんじょうしょうへの影響えいきょうはすぐには実感じっかんできないが、１０年ねん、１００年単位ねんたんいで世界せかいの海岸線かいがんせんに脅威きょういを及およぼすことが予想よそうされる。

研究けんきゅうチームは転換点てんかんてんの時期じきや、予想よそうされる海面かいめんの上昇幅じょうしょうはばを示しめしていない。ただし、南極大陸なんきょくたいりくの氷床ひょうしょうではすでに毎年平均まいとしへいきん１５００億おくトンの氷こおりが融解ゆうかいしていて、すべて解とければ世界せかいの海面かいめんは約やく５８メートル上昇じょうしょうする計算けいさんだ。

南極大陸なんきょくたいりくではこれまで、「終末しゅうまつの氷河ひょうが」とも呼よばれるスウェイツ氷河ひょうがなど、主おもに西部せいぶでの融解ゆうかいが研究けんきゅうされてきた。だがチームによると、今回こんかいの研究けんきゅうでは大陸東部たいりくとうぶにある氷河ひょうがの一部いちぶも危機ききにさらされていることが明あきらかになったという。