文部科学省は、学校での用具の安全対策としてゴールは固定するよう複数回、全国の学校などに通知していましたが、大川市教育委員会によりますと、事故の際、ゴールは固定されておらず、安全点検も事故の2か月前から行われていなかったということです。
晴翔さんの両親は、学校側はゴールの固定や事前の点検を怠っていたほか、事故後に市が調査を行う際に遺族の意向を確認しないなど適切に対応しなかったなどとして、大川市に対して4300万円余りの賠償を求める訴えを福岡地方裁判所柳川支部に起こしました。
この事故をめぐっては、警察が授業を担当していた教師や校長など6人を業務上過失致死の疑いで書類送検しています。
父親「二度と事故を起こさないで」
晴翔さんの両親は、月命日に合わせて裁判を起こしました。
父親の梅崎貴文さん(40)は弁護士とともに会見を開き、
「息子は明るく優しい子で、とにかく学校へ行くのが大好きでした。もうすぐ3年がたとうとしていますが、いまだにことばで表せないほどの感情です」と話しました。
裁判を起こした理由については、
「同じような事故で二度と子どもたちが犠牲になることがないように、息子の事故に本気で向き合ってほしいと思ったからです」と説明しました。
事故のあと大川市が行った調査については、
「遺族の意見を確認してくれず、調査委員会は開かれたものの形式的なものにすぎないと感じ、報告書も納得のいくものではありませんでした。このままではまた同じような事故が起きるのではないかと、不安を拭うことができませんでした」と話しました。
最後に「私たち家族は誰かを恨んでいるわけではありません。本当に、二度と事故を起こさないように、子どもたちに目を向け、社会をよりよいものにしてほしいと息子と一緒に願っています」と訴えました。
教育長「コメントできないが再発防止徹底を」
大川市教育委員会の記伊哲也教育長は「訴状を見ていないので現時点ではコメントできませんが、尊い命を失った事故を風化させないためにも事故の再発防止を徹底していきたい」と話しています。
ゴールが倒れる事故 全国で相次ぐ
学校でハンドボールやサッカーのゴールが倒れる事故は、全国で相次いでいます。
名古屋大学の内田良准教授の調査によりますと、学校で起きたサッカーやハンドボールのゴールによる重大な事故は、平成14年以降の16年間で少なくとも19件に上り、3人が死亡し16人がけがをしたということです。
ほとんどがゴールの枠にぶら下がって倒れたケースで、中には強い風にあおられて倒れたケースもあったということです。