カン・ギョンファ(康京和)外相は「最後まで日本の態度の変化を求めている状況だ」と述べ、日本が韓国への輸出管理の強化を見直すよう求める従来の立場を示しました。
これに対し、菅官房長官は「輸出管理の見直しは軍事転用の可能性がある貨物や技術の貿易を適切に管理すべく、国際ルールにのっとった必要な運用の見直しだ」と述べました。
政府は、協定の失効を避けるため水面下の外交当局間の協議などを通じて打開策がないか模索するとともに、韓国側に対して破棄の決定を見直すよう繰り返し強く求めています。
GSOMIAをめぐっては、日米韓3か国の安全保障上の連携を重視するアメリカも、韓国に対して協定の維持を強く求めていて、政府としては、韓国側が破棄の決定の延期や凍結といった対応の変化を見せないか最後まで見極める方針です。
GSOMIAとは
「GSOMIA」=軍事情報包括保護協定は、弾道ミサイルの発射に向けた動きなど、秘匿性の高い軍事情報を2国間で交換できるよう情報を適切に保護するための仕組みなどについて定めたものです。
秘密にすべき情報を保護するため、情報を取り扱うことができる人を限定することや、許可なく第3国へ提供しないことなどが盛り込まれています。
日韓で結ばれたGSOMIAは日本と韓国のどちらかが破棄を通告しないかぎり、1年ごとに自動的に延長される取り決めになっていますが、破棄する場合は、90日前に外交ルートを通じて通告しなければならず、毎年8月24日が期限となっています。
韓国は、期限の2日前のことし8月22日に、破棄を決定し、翌日、日本に通告しました。日米韓3か国は、それぞれ互いに、この協定を結んでいたため、軍事情報を共有することができていましたが、今後は、日米、米韓の協定のみになるため、防衛省内には「日本と韓国との間ではスムーズな情報共有ができなくなる」という懸念の声もあります。
一方、3か国の間には、GSOMIAとは別に、北朝鮮による弾道ミサイルや核実験などの情報に限って、アメリカを介して情報を交換する「TISA」と呼ばれる覚書があり、今後は、この覚書に基づいて、情報を共有することになります。
政府は「GSOMIAが破棄されても、日本独自の情報収集や、アメリカとの情報協力によって万全の態勢を取っている」として、日本の安全保障に直ちに影響はないとしていますが、「日米韓の足並みの乱れは、北朝鮮のみならず中国・ロシアも利する」といった指摘もあります。
韓国以外の国とも締結
日本は、韓国以外の国とも軍事情報包括保護協定=GSOMIAを締結しています。
日本がGSOMIAを締結している国はアメリカ(2007年8月)とインド(2015年12月)です。
また、GSOMIAとは別に、情報保護協定=GSOIAと呼ばれる、軍事だけでなくテロなどを含めた安全保障に関する幅広い情報を共有・保護を行う協定を、フランス、オーストラリア、イギリス、イタリアの4か国のほか、NATO=北大西洋条約機構との間でそれぞれ締結しています。
GSOMIA破棄決定後 各国の動きは
3年前に韓国との間で締結した軍事情報包括保護協定=「GSOMIA」をめぐり、韓国は、日本が輸出管理の優遇対象国から韓国を除外したことなどを理由に、自動更新の期限の2日前、8月22日に破棄を決定しました。
これに対し日本政府は「地域の安全保障環境を完全に見誤った対応で、極めて遺憾だ」と抗議したほか、アメリカはポンペイオ国務長官が「韓国政府の決定に失望している」と述べるなど、地域の安全保障に悪影響を及ぼしかねないとして異例の強い調子で批判しました。
こうした中、北朝鮮は韓国が破棄を決定してから4回にわたって弾道ミサイルの発射を繰り返し、このうち10月2日にはSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルを発射しました。
日韓両政府は「11月下旬まで協定は有効だ」として、SLBMが発射された際に韓国のチョン・ギョンドゥ国防相がGSOMIAに基づき日本に軍事情報の共有を要請したことを明らかにするなど、両政府とも「適切に連携している」としています。
こうした中、河野防衛大臣は「仮に破棄されたとしても、日本の安全保障に直ちに何か影響があるということはないが、それ以上に誤ったシグナルを周辺国に送ってしまうというのは、日米韓の連携が必要だというこの時期にデメリットだ」と指摘していました。
GSOMIAが効力を失うのを前に、韓国政府は日本政府が韓国を輸出管理の優遇対象国から除外する決定を撤回すれば終了の決定を再検討する考えを示したのに対し、日本政府は、日本の輸出管理の見直しは適切に制度を実施する上で必要な見直しだと強調したうえで、「協定の終了決定とは全く次元の異なる問題だ」としています。
今月中旬には、タイで開かれた国際会議の場で日米韓3か国の防衛相会談を行うなど、3か国の閣僚が相次いで会談しました。
このなかで、アメリカのエスパー国防長官は「GSOMIAを元に戻す必要がある」と述べ、韓国はGSOMIA破棄の決定を見直すべきだとの考えを改めて示しましたが、韓国側はこれまでの主張を変えず、目立った変化は見られていませんでした。