フランシスコ教皇とは
・82歳。アルゼンチン出身で2013年に教皇に選出される。
・リベラルで、貧しい人に積極的に寄り添おうとする姿勢は世界中の信者から支持を得ている。
・ツイッターのフォロワーは1800万人超。
・若い頃、宣教師として日本への派遣を希望したが、病気のため実現せず、念願がかなっての訪日だった。
2日目 長崎 爆心地から核兵器廃絶のメッセージ
24日、長崎市の爆心地公園でスピーチを行う。
「この場所は私たち人間がどれだけひどい苦痛と悲しみをもたらすかを深く認識させる」と述べて、核兵器の非人道性を強く非難した。
「核兵器や大量破壊兵器を持つことは平和や安定につながらずむしろさまたげになる」と述べて、核兵器のない世界の実現に向けて一致団結して取り組むことを呼びかける。
「焼き場に立つ少年」の写真家の家族にあいさつ
スピーチのあと、原爆が落とされたあとの長崎で「焼き場に立つ少年」の写真を撮影した、アメリカ軍の従軍カメラマン、ジョー・オダネル氏の息子と会話。
平成29年の年末、フランシスコ教皇がこの写真に「戦争がもたらすもの」というメッセージを添えて、教会関係者に配布するよう指示したことで注目された。
長崎での日程終えツイッター更新
「数百万人の子どもや家族が非人道的な状況下で生きている世界において、浪費されたお金や、破壊的な武器の製造や保有、取り引きを通じて生まれた財産が天に叫んでいます」と投稿し、核兵器の廃絶に向けたメッセージを発信。
2日目夜 広島でもスピーチ
24日夜、長崎に続いて広島の平和公園でスピーチを行う。
「戦争のために原子力を使うことは犯罪以外の何ものでもない」と述べて核兵器の使用は倫理に反すると強調した。
スピーチの中で、被爆地を訪れることがみずからの使命と感じてきたことを明かす。
原爆慰霊碑の前で「平和の巡礼者」と記帳する。
3日目午前 東日本大震災の被災者との交流会
都内で東日本大震災の被災者との交流会に参加する。福島第一原子力発電所の事故に触れて「私たちには、未来の世代に対して大きな責任があることに気付かなければいけません」と呼びかけ。
3日目 若者の悩みを聞く集いに参加 いじめについて答える
都内で若者たちの悩みを聞く集いに参加する。
いじめについて「学校や大人だけではこの悲劇を防ぐのは十分ではありません。皆さんで『絶対だめ』といわなければなりません」と呼びかける。
3日目 天皇陛下と皇居で会見
3日目の25日、天皇陛下と会見。
天皇陛下が「日本の人たちに心を込めて寄り添っていただいていることに感謝します」と述べられた。
フランシスコ教皇は「私が9歳の時、両親が、長崎、広島の原爆のニュースを聞き、涙を流していたことが強く心に刻まれています。長崎、広島において私は自分の気持ちを込めてメッセージを発出しました」と述べる。
3日目午後 東京ドームでミサ 5万人参加
東京ドームで5万人が集まる大規模なミサ。
「日本は経済的には高度に発展していますが、社会で孤立している人が少なくないことに気付きました。これを乗り越えるためには異なる宗教を信じる人も含め、すべての人と協力と対話を重ねることが大切です」と発言した。
ツイッター更新「心を1つに」
ミサのあと午後6時、ツイッターを更新。
東日本大震災などからの復興を念頭に「災害からの復旧と再建を進める中では、多くの人たちが手を携え、心を1つにしなければならない。そうすることによって、被災した人たちは助けを受けることができ、自分たちは忘れられていないと思うことができるのです」と投稿。
安倍総理大臣や各国大使館の代表と懇親会
「広島と長崎に投下された原爆によってもたらされた破壊が二度と繰り返されないよう阻止するために必要なあらゆる仲介を推し進めてください」と訴える。
4日目 上智大学で講話
自身の出身母体である修道会の「イエズス会」が設立した上智大学で学生に講話を行う。
学生に「どんなに複雑な状況であっても自分たちの行動が公正かつ人間的であり、正直で責任を持つことを心がけ弱者を擁護するような人になってください。ことばと行動が偽りや欺まんであることが少なくない今の時代において特に必要とされる誠実な人になってください」と諭す。
このあと帰国の途につく。
専門家はこう見た
ローマ教皇の外交の歴史に詳しい名古屋市立大学の松本佐保教授は、フランシスコ教皇が被爆地で行ったスピーチについて、「核の問題について、単に抽象的なことばではなく、国際情勢を意識した発言だった」と分析する。
この時期の被爆地訪問は「被爆者も高齢化する中、このタイミングを逃すと被爆された方に会えなくなってしまう。広島と長崎のメッセージをこの機会にアピールするねらいがあったのでは」と述べる。
原爆投下から74年がたつなか、「軍拡はテロ行為だ」と強い表現を使って断言することで、核の悲惨さを改めて世界に発信し、なおも世界で進む軍拡競争に歯止めをかけたいねらいがあったと分析。
一方で、教皇みずからが各国に批准をよびかけている核兵器禁止条約に、日本が参加していないことについて、「いらだちを感じているのではないかとも感じる。今回の訪問でその流れを少しでも変えることができたらいいという願いもあったのではないか」として、非核化において、日本にリーダーシップを取ってほしいという願いがうかがえるとしている。