ガザ地区の情勢をめぐり、国連のグテーレス事務総長は6日、就任後初めて国連憲章99条が定める事務総長の権限を使って、安保理に対し停戦を求めるよう要請しました。
これを受けてUAE=アラブ首長国連邦が人道目的の即時停戦を求める決議案を提出し、8日、緊急会合が開かれました。
この中でグテーレス事務総長は「ガザの人たちは奈落の底をのぞいている。国際社会はこの試練を終わらせるため、あらゆる手段を講じなければならない。世界、そして歴史が見守っている。いまこそ行動のときだ」と述べ、即時停戦の必要性を訴えました。
そして8日午後、日本時間の9日午前6時前から決議案の採決が行われ、15か国のうち日本やフランスなど13か国が賛成、イギリスが棄権しましたが、常任理事国のアメリカが拒否権を行使し、決議案は否決されました。
ガザ地区の情勢をめぐって一貫してイスラエルを擁護してきたアメリカは、ことし10月にも決議案の採決にあたって拒否権を行使しています。
アメリカのウッド国連次席大使は、無条件の停戦はイスラム組織ハマスを利するものだとして「イスラエルとパレスチナの恒久的な平和を支持するが、次の争いの種をまくだけで持続しない停戦を求める決議案は支持しない」と述べました。
現状に強い危機感を抱いたグテーレス事務総長みずから停戦の実現を呼びかけ、およそ100か国が決議案の共同提案国となりましたが、アメリカが再び拒否権を行使したことで、イスラエルだけでなくアメリカに対する国際的な批判が高まるものとみられます。
パレスチナ国連大使「安保理にとって最悪の日だ」
決議案が否決されたことについてパレスチナのマンスール国連大使は「これは歴史の転換点だ。遺憾を通り越して、悲惨としかいえない。安保理は、地域と国際社会の平和と安全を脅かすこの重大な危機を前に、責任を果たせなかった」と非難しました。
そして「安保理にとってきょうは最悪の日だ」と繰り返し強調し、「われわれはこの結果を受け入れない。忌まわしい残虐行為を止めるため、あらゆる手段に訴え続ける」と述べ、停戦の実現に向けて国際社会に訴え続けていく考えを示しました。
ロシア国連次席大使「アメリカは死刑宣告を下した」
アメリカが拒否権を行使したことについてロシアのポリャンスキー国連次席大使は「きょうは中東史上、暗黒の日のひとつとなったと言っても過言ではない。アメリカは紛争地での停戦の呼びかけをまたもや阻止し、何千人もの民間人や彼らを助けようとしている国連職員に対して、文字通り死刑宣告を下した」と強く非難しました。
日本 石兼国連大使「採択されず遺憾に思う」
アメリカの拒否権によって決議案が否決されたことについて、日本の石兼国連大使は「パレスチナ人であれイスラエル人であれ、民間人の命が失われるのは悲劇であり、われわれは決議案に賛成した。日本はグテーレス事務総長による国連憲章99条の発動を大変重く受け止めている。決議案が採択されなかったことを遺憾に思う」と述べました。
一方で、アメリカを非難するロシアへの失望も表明し「責任の押し付け合いに甘んじるのではなく、安保理が協力できる共通点を見出すため、絶え間ない努力が必要だ」と述べ、安保理として一致した対応ができるよう、今後も各国と協力していく考えを示しました。